スペイン・バルセロナでスタートアップイベント「4YFN」開催
2019年3月20日
スペインのバルセロナで2月25日~27日、欧州最大級のスタートアップイベント「4YFN」が開催された。ほぼ同じ時期に開かれる世界最大級のモバイル・通信事業関連の展示会「モバイル・ワールド・コングレス(以下MWC)」に併催するかたちをとり、今年で6回目を迎えた。ジェトロは日本のスタートアップ企業20社からなるジャパン・パビリオンを初出展した。
通信事業関連展示会との併催でシナジー効果も
4YFN は「フォー・イヤーズ・フロム・ナウ(4 Years From Now)」の頭文字をとったもので、「今後4年間の成長が期待できるスタートアップ」という意味が込められている。今回の4YFNには760社の出展者(うちスタートアップ600社)と約1,000人の投資家、2万3,000人以上の来場者が集い、ロボット関連、モノのインターネット(IoT)製品、仮想現実(VR)などの分野で新製品が発表された。MWCの併設イベントであるため、初日にMWCを訪問した来場者が2日目や3日目に4YFNに足を運ぶケースも多く、最終日に来場者が減らないことも特徴だ。
会場では開発段階の技術から完成品までが展示され、半径1メートル以内の電気製品をカバーするワイヤレス充電器、非通知電話を探知可能なアプリ、各種IoT製品をハッキングから守るアンチウイルスソフトウエア、スマートフォンと接続してラップトップに早変わりするディスプレーなど、生活スタイルの多様化につながる新製品が紹介され、来場者を楽しませていた。
スペイン政府に加えて、地元カタルーニャ州、バスク州といった州政府もパビリオンを構えたほか、バルセロナのスタートアップの支援や関連事業者のネットワーク構築を支援するNPOのバルセロナ・テック・シティーや石油大手レプソルのイノベーション支援基金フンダシオン・レプソルも傘下のスタートアップを集めブースを設置した。外国・地域のパビリオンとしては、英国、ギリシャ、コロンビア、フランス、韓国、台湾などがあった。
効率的なメディア露出が可能なイベント「ショーストッパーズ」
4YFNの開幕前日には、800人以上のプレス関係者を集めたメディアイベント「ショーストッパーズ(Showstoppers)」が開催された。日本から13社のスタートアップが参加し、「3時間で30社近くのメディアに取材されて大満足」との声が出展者から上がった。
「ショーストッパーズ」でのPR効果もあり、今回の4YFNにおけるジャパン・パビリオンの取り組みがスペイン国営テレビを含む30以上の報道やウェブメディア記事に取り上げられた。
ピッチセッションを活用し、効率的にフィードバックを獲得
ジャパン・パビリオンに出展した20社の中から、9社のスタートアップが4YFN 会場内で開催されたピッチ(注1)セッションに出場した。定員200人のホールはほぼ満席で、立ち見まで出る盛況だった。ピッチを行った日本のスタートアップから、「世界中から来るたくさんの企業関係者に自社製品のデモを見てもらい、反応を確認することができた。おかげで、今後の取引につながる可能性のある企業とも出会えた」とのコメントが寄せられるなど、反応は上々だった。
注目されるスペインのエコシステム
EU主要国の中で比較的高い経済成長を維持し、世界銀行による「ビジネスのしやすさ」ランキングで上位30カ国に入るスペインでは、こうしたイベント開催だけでなく、政府、州政府、地方自治体、大企業がスタートアップ支援のためのイニシアチブを既に展開しており、コワーキングスペース(注2)やメンター(注3)制度、初期費用をカバーするための助成金制度などを提供している。
世界のエコシステム(注4)の中に占めるスペインのウェイトはまだ少なく、日本発スタートアップとのつながりも薄いのが現状だが、4YFN以外にも毎年10月にマドリードでサウス・サミットというスタートアップ向けイベントが開催される。日本発スタートアップがこうした機会を積極的に活用し、スペインをスプリングボードとして欧州進出を果たすことを期待したい。
- 注1:
- 投資家などを対象とした短時間でのプレゼンテーション
- 注2:
- オフィス機能やミーティング機能がある共用施設
- 注3:
- 経験や知見がある専門家からの指導
- 注4:
- スタートアップやその他の支援機関、大企業などで構成される起業や事業推進環境
- 執筆者紹介
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ジェトロ・マドリード事務所
高 文寧(がお うぇにん) - 2016年、ジェトロ入構。ものづくり産業部・ものづくり産業課(2016年4月~2018年8月)を経て現職