2020年米大統領選挙の重要項目に対し民主党、共和党支持者に認識の違い

2019年10月7日

2020年大統領選挙を前に民主党支持者と共和党支持者では、大統領選で重点事項となるテーマに対する見方が大きく異なる場合が多い。気候変動、ヘルスケア、銃規制などに関して最近の世論調査結果から読み取れる両党支持者の意識の違いや、ドナルド・トランプ大統領への評価についてまとめた。

民主党各候補者の詳細については、2019年10月7日付ビジネス短信参照

気候変動に積極的対応を求める民主党支持者

キニピアク大学の世論調査によれば、米国の気候変動の対応について「十分対応している」と回答した人の割合は20%、「もっと対応すべき」は67%という結果であった(表1参照)。支持政党別に見ると、民主党支持者は、「もっと対応すべき」が91%と圧倒的に多いが、共和党支持者では、「十分対応している」が42%、「もっと対応すべき」が32%と見解が分かれている。気候変動の対応を急ぐべきとする全体の割合は、56%であったが、民主党支持者の84%に対して、共和党支持者は18%と意識の違いが大きかった(表2参照)。

表1:米国は気候変動に十分対応しているか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
十分対応している 20 22 17 3 42
対応しすぎている 8 10 7 2 18
もっと対応すべき 67 64 70 91 32

出所:キニピアク大学

表2:気候変動への対応は急を要するか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
緊急である 56 52 61 84 18
緊急ではない 42 47 38 14 81
わからない 2 2 2 2 1

出所:キニピアク大学

共和党支持者はオバマケア撤廃を支持

英国経済紙エコノミストと調査会社ユーガブが共同で実施した世論調査によれば、公的医療保険への加入を義務付けるオバマケアの今後の方向性について、「拡大すべき」と全体で回答した割合は35%、「撤廃すべき」は36%と拮抗(きっこう)している。民主党支持者では、「拡大すべき」が65%とオバマケアへの支持が高いが、共和党支持者では、「撤廃すべき」が75%を占め、違いが鮮明であった(表3参照)。

ウォレン、サンダース両氏が掲げる国民皆保険制度(メディケア・フォー・オール2019)について、全体の45%が「賛成」、37%が「反対」としているが、民主党支持者の71%は「賛成」で、共和党支持者の67%は「反対」と対照的である(表4参照)

表3:オバマケアの方向性は(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
拡大すべき 35 33 37 65 8
現状維持 10 11 9 14 8
撤廃すべき 36 39 33 7 75
わからない 19 17 20 13 9

出所:エコノミスト、ユーガブ

表4:メディケア・フォー・オールに賛成するか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
賛成 45 45 46 71 22
反対 37 40 34 17 67
わからない 18 16 20 12 11

出所:エコノミスト、ユーガブ

銃購入者の身元検査は両党支持者とも支持

モンマス大学の世論調査によれば、銃購入者の身元検査を実施することについて、「支持する」と回答したのは全体の83%、「支持しない」は13%であった。民主党支持者は「支持する」が94%で、共和党支持者は72%と両党支持者とも支持する傾向は高かった(表5参照)。ライフルなどの銃器の販売を将来的に禁止することについては、全体では「支持する」が56%、「支持しない」が38%であった。民主党支持者は「支持する」が86%と禁止を支持する傾向が高かったが、共和党支持者は「支持しない」が59%と過半数を占めた(表6参照)。

表5:銃購入者の身元検査を支持するか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
支持する 83 79 88 94 72
支持しない 13 19 8 4 24
わからない 3 2 4 1 5

出所:モンマス大学

表6:ライフルなどの銃器の販売を将来的に禁止することを支持するか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
支持する 56 45 66 86 35
支持しない 38 48 27 12 59
わからない 6 7 6 2 7

出所:モンマス大学

民主党支持者は移民の影響を肯定的に捉える

エコノミストとユーガブの世論調査で、移民が米国に及ぼす影響について聞いたところ、全体で「良い影響」と回答したのが43%、「悪い影響」は19%であったが、支持政党別にみると民主党支持者は6割が「良い影響」と回答し、肯定的に捉えているが、共和党支持者は「良い影響」が29%、「悪い影響」が30%と意見が分かれた(表7参照)。

不法移民の問題の深刻さについて聞いたところ、全体では6割が「深刻である」と回答した。民主党支持者は、「深刻である」が38%、「それほど深刻ではない」が40%と統一されてないが、共和党支持者の88%が「深刻である」とより深刻と認識している(表8参照)。

表7:移民が国におよぼす影響をどう思うか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
良い影響 43 45 42 60 29
悪い影響 19 20 19 12 30
変化はない 23 22 24 21 26
わからない 14 13 15 8 15

出所:エコノミスト、ユーガブ

表8:不法移民の問題は深刻か(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
深刻である 60 62 58 38 88
それほど深刻ではない 25 23 26 40 7
深刻ではない 8 8 9 15 2
わからない 7 7 7 6 4

出所:エコノミスト、ユーガブ

共和党支持者の過半数は中絶の合法化に反対

ピュー・リサーチ・センターの世論調査では、中絶を合法とするか違法とするかについては、全体で「合法とすべき」が61%と過半数を占めた。民主党支持者は「合法とすべき」が82%であったが、共和党支持者は「違法とすべき」が62%であった(表9参照)。最高裁がロー・アンド・ウェイド裁判の判決(注1)を覆すことを支持するかという問いに対しては、全体で7割が「支持しない」と回答した。民主党支持者は、87%が「支持しない」と回答したが、共和党支持者では「支持しない」が50%と半数にとどまり、保守的な傾向を示した(表10参照)。

表9:中絶を合法とすべきか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
合法とすべき 61 61 60 82 36
違法とすべき 38 38 38 17 62

出所:ピュー・リサーチ・センター

表10:最高裁がロー・アンド・ウェイド裁判の判決を覆すことを支持するか(単位:%)
回答内容 全体 性別 支持政党別
男性 女性 民主党 共和党
支持する 28 29 26 11 48
支持しない 70 69 70 87 50

出所:ピュー・リサーチ・センター

ブルッキングス研究所の分析では、国内が民主党と共和党に分断されているというよりも、民主党支持者の教育程度や給与水準は共和党支持者より高い傾向にあり、両党支持者の生活環境の隔たりを指摘している。これは、民主党支持者が金融やデジタル関連の職種での就業率が高く、共和党支持者が農業や製造業関連の職種での就業率が高いという傾向に起因するという。

トランプ大統領弾劾の恐れも

キニピアク大学の世論調査では、トランプ氏が共和党の大統領候補となった場合、同氏に投票するかという問いに対しては、54%が「投票しない」と回答し、トランプ大統領の仕事ぶりについて、「認めない」が55%と過半数を占めた。2019年1月以降の評価の推移を見ると、「認める」が38~41%と横ばい状態が続く(図参照)。

図:トランプ大統領の仕事ぶりはどうか
「認める」は38~42%、「認めない」は53~57%を推移し横ばいが続いている

出所:キニピアク大学

共和党では、トランプ氏以外に3人の大統領候補者がいるが、共和党支持者のトランプ氏の人気が圧倒的な状況(注2)から、アリゾナ州など5州では予備選挙を行わないことを発表した。

しかし、トランプ大統領とウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領との電話会議の内容が9月に発覚し、その内容が大統領の職権乱用とみなされ、9月24日、民主党は弾劾尋問を開始すると発表した(注3)。キニピアク大学の9月末の世論調査で弾劾尋問を行うことについて聞いたところ、「賛成」が52%と過半数を占めた。トランプ氏への信任では、弾劾よりも2020年の大統領選挙で国民の選択に委ねるべき、との声もあり、今後の動向から目が離せない。


注1:
1973年、それまで米国で違法とされていた妊娠中絶を女性の権利と認め,人工妊娠中絶を不当に規制する州法を違憲とする、連邦最高裁判所の判決が下された裁判。
注2:
トランプ氏以外の共和党候補者は、マーク・サンフォード元サウスカロライナ州知事、ビル・ウェルド元マサチューセッツ州知事、ジョー・ウォルシュ元イリノイ州選出連邦下院議員の3人。キニピアク大学が9月に実施した世論調査では、共和党の予備選挙で誰に投票するかという問いに対して、8割がトランプ氏に投票すると回答した。
注3:
トランプ氏は、ウクライナのゼレンスキー大統領との電話会談の際、ウクライナ支援への見返りに、ウクライナのガス会社の幹部を務めていたジョー・バイデン氏の息子に関する調査を要請した、との疑惑が生じた。
各種調査の調査時期と対象者数
キニピアク大学調査(9月) 9月19~23日、有権者1,337人、うち民主党支持者561人、共和党支持者568人対象
キニピアク大学調査(表1、表2) 8 月21~26日、有権者1,422人、うち民主党支持者648人対象
エコノミスト、ユーガブ調査(表3、表4) 9月14~17日、成人1,500人対象
モンマス大学調査(表5、表6) 8月16~20日、成人800人対象
エコノミスト、ユーガブ調査(表7、表8) 9月1~3日、成人1,500人対象
ピュー・リサーチ・センター調査(表9、表10) 7月22日~8月4日、成人4,175人対象
キニピアク大学調査(9月末) 9月27~29日、有権者1,115人対象
執筆者紹介
海外調査部米州課 課長代理
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。米国の移民政策に関する調査・情報提供を行っている。