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東南アジアのミレニアル・Z世代女性に日本の魅力を発信

2019年7月17日

東南アジアで欧米大手化粧品ブランドなどのデジタルマーケティングを展開するclozette(クローゼット)が、日本の魅力を発信するための事業を開始した。同社は18~35歳の若年女性を主要ターゲットに、パッケージ型の広告宣伝を得意としている。化粧品、ファッションといったモノのマーケティングだけでなく、旅行プランやイベントの提案などコト消費のマーケティングも可能で、日本への観光客誘致でも活用できそうだ。日本の企業、地方自治体の強い味方となるだろう。同社のロジャー・ユアン社長、渡邊真之助取締役にインタビューした。


クローゼットのユアン社長(左)と渡邊真之助取締役(ジェトロ撮影)
質問:
ユアン社長がスタートアップとしてclozetteを立ち上げた経緯は。
答え:
(ユアン社長):1980年代のインターネット黎明(れいめい)期からITに関わっている。1990年代はソフトバンク・グループのZiff Davis(米国)、ZDNet(同)やCNET Networks(同)といったオンラインコンテンツ、ネットメディア企業で働き、2000年代には2つのIT系スタートアップを設立した。そうした経験を生かし、2010年にシンガポールでクローゼットを立ち上げた。ミレニアル世代(24~35歳、注1)、Z世代(24歳未満、注2)に働きかける、新しいデジタルメディアだ。
質問:
クローゼットの事業内容は。
答え:
(ユアン社長):シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピンなど東南アジア各国で、若年女性向けにマーケティング事業を展開している。ミレニアル世代やZ世代は、テレビや雑誌といった従来のメディアは見ない傾向にある。スマートフォンを利用し、フェイスブックやインスタグラム、ユーチューブなどSNSを通じて情報収集する。当社はSNSや自社サイトを広告媒体として、ファッションや美容、旅行、航空サービスなど、消費者向けのさまざまなブランドについて、広告宣伝を行っている。
これらの世代に注目するのは、その人口ボリュームにある。2020年に、30歳以下の人口は東南アジアの全人口の約半分を占めると推計されており、今後の東南アジアの消費市場を牽引することが期待される。
質問:
クローゼットのマーケティング手法の特徴は?
答え:
(ユアン社長):コンテンツとインフルエンサーを組み合わせた手法に特徴がある。マーケティングでは、ブランドのストーリーを伝えることが大事だ。商品やプロモーション内容に応じて、写真、動画、記事などの媒体を選ぶようにしている。例えば、ファッションなら写真で伝わるかもしれないが、化粧品は写真だけでなく、記事にして商品の特徴なども説明した方が効果的なケースがある。動画にしても、1分の短いものがいいのか、5分のやや長めの方がいいのか、商品・サービスのイメージによって変えていく必要がある。
質問:
クローゼットのビジネスモデルを詳しく教えてほしい。
答え:
(ユアン社長):消費者にただコンテンツを閲覧してもらうだけでなく、購買までつなげることがわが社のビジネスだ。例えば、クローゼットでは、リップスティックの入った箱を開封して特徴を紹介する開封動画(Unboxing)の人気が高い。動画では、インフルエンサーが新製品について、どのように使えばいいか、色味はどうかなど特長を説明する。動画ページには、商品が購入できる電子商取引(EC)サイトなどへのリンクが張られている。基本的にはB2Bビジネスであり、顧客と効果測定のためのKPI(重要業績評価指標)を設定した後、マーケティングを行う。KPIは、コンテンツに反応を示したエンゲージメント率(フェイスブックの「いいね!」の数など)や、目標誘導サイトへのリンクをクリックした数(送客数)など、顧客と相談して設定する。
質問:
他のデジタルマーケティング会社と比べたクローゼットの強みは。
答え:
(渡邊取締役):当社は独自で3,500人以上のインフルエンサー・ネットワークを築いている。ただ、数字ばかり強調されがちだが、大切なのは人数ではない。マーケティングの目的、ブランドに応じてさまざまなインフルエンサーを組み合わせ、柔軟に提案できることが当社の本当の強みだ。商品PRに起用する人物は、いつも同じだとは限らない。フォロワー数の多い1人の強力なインフルエンサーが良い時もあれば、複数の身近なインフルエンサーに発信してもらった方が良い場合もある。例えば、商品の認知度を上げる場合は著名なインフルエンサーを起用し、より購買につなげるためには消費者に身近な存在の、日本でいう読者モデルのようなインフルエンサーを起用することも考えられる。
質問:
日本でのビジネスの展望は?
答え:
(ユアン社長): 4月に、クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)から最大1,350万シンガポール・ドル(約10億8,000万円、Sドル、1Sドル=約80円)の出資を得ることが決定した。出資金を基に当社の日本法人立ち上げや、クールジャパン情報発信サイトの構築を進める。6月には自社サイト内にクールジャパンに特化したページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます を開設した。
(渡邊取締役):日本企業や地方自治体と連携し、インバウンドとアウトバンド両方のマーケティングに取り組んでいきたい。よくある失敗事例として、地方自治体のA県が、単独の観光客誘致PRイベントをシンガポールで行うとする。しかし、シンガポールの消費者からすると、A県だけに魅力を感じ旅行することは少ない。周辺のB県やC県の観光地を含めた旅行プランを提案する必要がある。1日目は空路で到着した東京周辺で過ごし、2日目は新幹線に乗ってA県、3日目は沿線のB県と、旅行ルートを示さなければならない。当社の強みは、そうした消費者目線の提案ができることにある。当社社員の平均年齢は28歳で、日本企業がターゲットとする消費者層と同世代だ。ターゲット層の行動をよく理解しているからこそ、東南アジアの若年女性消費者の心をつかむためのマーケティングを提案できると考えている。
質問:
東南アジアのミレニアル世代、Z世代の女性の心をつかむコツは?
答え:
(ユアン社長):日本への観光客誘致の場合、何かユニークなイベントが開催されているとプロモーションしやすい。現地でしか体験できないイベントがよい。所得向上に伴って日本の文化にも高い関心が寄せられており、寺院や神社なども人気だ。また、東南アジアは国によって旅行客のニーズが異なる。例えば、インドネシア向けであれば、ムスリムが好む旅行プランが必要で、祈りのスポットやハラル対応レストランの紹介などのニーズに応えることだ。
(渡邊取締役):まずは商品・サービスや観光地の認知度を上げることが肝要だと思う。日本で売れるモノが海外で売れるという話はよく聞くが、逆に日本で知られていないモノであっても、マーケティング次第で東南アジアの消費者に認知され、人気を博すケースがある。そこが、マーケティングの面白いところで、今立ち上げているクールジャパンサイトを通じて実現したいことだ。東南アジアの消費を牽引していくミレニアル女性にオールジャパンでの日本の魅力を発信し、日本ブームを起こしたい。

注1:
ネットやデジタル機器の変革を目の当たりにしてきたデジタルネーティブの先駆けとなる世代。
注2:
進歩したネット環境やデジタル機器が当たり前の環境で育った世代。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部アジア大洋州課
山口 あづ希(やまぐち あづき)
2015年、ジェトロ入構。農林水産・食品部農林水産・食品課(2015~2018年)、ジェトロ・ビエンチャン事務所(2018~2019年)を経て現職

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