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2019年の成長率は2%台との見方が大勢(香港)
米中貿易摩擦の影響、徐々に鮮明に

2019年2月13日

香港政府によると、2018年通年の香港の実質GDP成長率は、米中貿易摩擦や世界経済の減速などの景気下振れリスクが顕著になったことから、2017年の成長率(3.8%)を下回る3.2%となる見通しだ。IMFによる2019年の成長率予測値は2.9%で、同様に2%台の成長を見込む金融機関が大半を占めている。

香港政府、2018年成長率は減速と予測

2018年の実質GDP成長率は、第1四半期(1~3月)に4%台を達成したものの、第2四半期(4~6月)は3.5%、第3四半期(7~9月)は2.9%と減速傾向が顕著となった。

香港政府は、1~9月の成長率(3.7%)と、次の1~6の外部環境の下振れリスクを踏まえ、2018年11月に通年の成長率予測値について、従来予測(2018年8月)の3~4%の下限に近い3.2%に修正していた(表「主要経済指標」参照)。

  1. EUとアジア諸国の成長の鈍化に伴う世界経済の減速
  2. 米中貿易摩擦
  3. 米国を中心とした先進国の金融引き締め
  4. 英国のEU離脱
  5. イタリアの財政状況
  6. 地政学的リスクの高まり

そして、香港政府は「香港市民の消費者心理は、良好な雇用情勢と所得状況によって支えられているものの、外部環境の不確定性と資産市場の下落基調が悪影響を与える可能性がある」「香港の内需は下振れ圧力にさらされる可能性がある」と分析していた。また、香港政府は、複数の統計調査の結果、この数カ月の地場企業のビジネス環境に対する姿勢に慎重なムードが広がっていると指摘していた。

表:主要経済指標(△はマイナス値)
項目 2017年
(実績)
2018年
(見通し)
2019年
(見通し)
(1)実質GDP成長率(%) 3.8 3.2 2.9
階層レベル2の項目 民間最終消費支出 5.5 n.a. n.a.
階層レベル2の項目 政府最終消費支出 3.4 n.a. n.a.
階層レベル2の項目 国内総固定資本形成 3.5 n.a. n.a.
階層レベル2の項目 財貨の輸出 5.9 n.a. n.a.
階層レベル2の項目 財貨の輸入 7.0 n.a. n.a.
階層レベル2の項目 サービスの輸出 3.2 n.a. n.a.
階層レベル2の項目 サービスの輸入 1.9 n.a. n.a.
(2)消費者物価指数上昇率(%) 1.5 2.4 2.1
(3)賃金上昇率(%) 3.5 3.2 n.a.
(4)失業率(%) 3.1 2.6 2.6
(5)国際収支:経常収支(億香港ドル) 1,149 n.a. n.a.
(5)国際収支:貿易収支(億香港ドル) △ 1,867 n.a. n.a.
(6)その他重要指標:対外債務(億香港ドル) 122,205 n.a. n.a.
(7)為替レート (1ドル=現地通貨) 7.79 7.80 7.80
注:
(3)の2018年は11月時点の数値。(7)の2018・2019年は金融政策上の目標数値。
出所:
(1)(2)の2018年、(1)、(2)、(4)~(7)の2017年は香港政府特別行政区統計処。(1)(2)の2019年、(4)の2018・2019年はIMF。(3)は香港人力支援管理学会(HKIHRM)調査。

各金融機関も成長率予測を下方修正

昨今の外部環境を踏まえ、香港の金融機関も1月に相次いで、2018年のGDP成長率の予測値を下方修正した。例えば、HSBCやスタンダード・チャータード銀行は、従来の予測値(3.8%)からそれぞれ3.5%、3.4%に引き下げた。香港大学も3.4%と成長率を予測している。

HSBCは「金利上昇傾向が継続することで、個人消費や投資などの意欲がそがれ、住宅市場と株式市場に悪影響を与える」「米中貿易摩擦の改善の糸口が見当たらない中、貿易面で中国本土との緊密な関係を保つ香港は、金融や物流面でも打撃を受ける」と指摘した。スタンダード・チャータード銀行は「現時点で米中貿易摩擦は香港の貿易に大きな影響を与えていないが、貿易摩擦が今後加熱した場合は香港の中小企業の経営にマイナスの影響をもたらす」との見方を示している。

米中貿易戦争の影響、徐々に顕在化へ

香港貿易発展局が四半期ごとに発表している香港輸出企業の景況感を表す香港貿易発展局輸出指数(以下、輸出指数)(注)をみると、第4四半期は、第2四半期と比較して18.9ポイント下落し、35.2(ネガティブ)となった(2018年12月発表、図参照)。

図:香港貿易発展局輸出指数(2014~2018年)
香港貿易発展局輸出指数をみると、2018年第2四半期では2017年第2四半期以来3四半期ぶりに50を上回り、ポジティブの54.1となった。2018年第4四半期は第2四半期と比較して18.9ポイント下落し、ネガティブの35.2となった。

出所:香港貿易発展局よりジェトロ作成

品目別にみても、香港輸出の7割近くを占める電子製品の輸出指数は、第2四半期と比較して19.3ポイント下落して35.9となったほか、玩具も28.9ポイント下落し、24.3だった。このほか、機械、時計、宝飾品、アパレルはそれぞれ36.6、34.0、30.5、30.3といずれも 30台に下落した。主要輸出市場別の輸出指数をみても、中国本土は2015年以来3年ぶりの低水準となる44.7、米国は41.5と微増したものの主要市場の中では最低だった。

香港貿易発展局が実施した米中貿易摩擦の影響に関する調査結果(2018年12月)によれば、回答した香港企業の49.2%が「2019年の輸出による売り上げは減少する」と先行きに懸念を示すとともに、過半数の香港企業(54.4%)が「貿易摩擦が香港の貿易に悪影響を与える」とみていることが明らかになった。米中貿易摩擦によって香港経済がマイナスの影響を受ける分野として、香港政府の陳茂波・財政長官は2018年7月、(1)香港を経由した中国の対米輸出、(2)中国に進出した香港系企業による対米輸出(香港を経由しない中国から米国への直接輸出)、(3)その他の米中貿易に関連する経済活動(米中以外の第三国から香港経由での中国への原材料・中間材輸出など)を挙げていた。貿易摩擦は確実に市場のムードを悪化させており、その影響は今後も徐々に顕在化してくるとみられる。

2019年の経済見通しは各機関とも消極的

国際機関や金融機関などの予測値をみても、2019年の香港経済は強い下振れ圧力が継続するとの見方が多い。IMFとHSBC、香港大学は、2019年の香港の成長率をそれぞれ2.9%、3.0%、2.8%と予測した(ともに2019年1月時点)。HSBCは「貿易摩擦や金利上昇の影響は2018年下半期から現れつつあるものの、潤沢な外貨準備高が今後の香港経済を下支えする」との見方を示している。この他、スタンダード・チャータード銀行は、2019年の成長率を従来の予測値(3.0%)から2.7%に下方修正し、中国銀行(香港)も2.3%と、過去10年の香港の平均成長率(2.7%)を下回ると予測した(2019年1月時点)。


注:
香港貿易発展局(HKTDC)は、香港の輸出企業の景況感を表す指数として「香港貿易発展局輸出指数」を四半期ごとに公表している。輸出指数が50を超えると、半分以上の回答企業が「ポジティブ」、49を下回ると半分以上の回答企業が「ネガティブ」な見通しを持っている。
執筆者紹介
ジェトロ・香港事務所
カン カレン
2016年香港大学文学部日本研究学科卒業。2016年9月より現職。

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