日本産酒類のアピールは「差別化」がポイント(香港)
香港ワイン&スピリッツフェアに日本ブースを出展
2018年12月12日
ジェトロは、2018年11月8~10日に開催されたアジア最大級の酒類専門見本市「香港インターナショナルワイン&スピリッツフェア(International Wine & Spirits Fair)2018」に、ジャパンパビリオンを出展した。ジャパンパビリオンには、日本酒を中心に、焼酎、泡盛、ワインなど、日本産酒類のメーカーや商社ら27社・団体が出展した。本見本市には輸入業者、卸売業者、レストラン、バー、ホテルのバイヤーら延べ2万人近くが来場した。
「差別化」や「現地ニーズにあった商品提案」が人気のポイント
香港では、2008年にアルコール度数30度以下の酒類に係る物品税が撤廃されたことで、近年酒類市場が拡大した。香港向けの日本産酒類の輸出額は2013年以降5年連続で増加しており、2017年の日本から香港への酒類輸出額は約48億円(前年比11.7%増)であった。酒類別にみると、日本酒が6.4%増の28億円、リキュールが16.8%の8億5,000万円、ビールが15.1%増の3億7,000万円、ワインが前年比9.8倍の3億円だった。
香港は日本からのアクセスが良く、アルコールの輸入関税も原則かからないことから(注)、多くの酒類業者が参入しており、競争が激しい市場でもある。そのため、香港市場に新規参入する上では「『香港初』など話題性のある新商品か」「現地のニーズに合った商品提案ができるか」など、既存商品と差別化することがポイントとなる。
ジャパンパビリオンで引き合いの多かった商品は、10年熟成の大吟醸古酒や、国際的な酒類コンペティションで入賞した純米大吟醸、低アルコールながらさわやかな甘みとかんきつ系の果物のような酸味をもった日本酒、たるで6年以上熟成させた琥珀(こはく)色の麦焼酎を使用したリキュール、契約農家が育てた「完熟南高梅」と「和三盆」を使用し熟成させた梅酒、などであった。
バイヤーの声を出展の参考に
既に多くの日本産酒類が流通する香港市場では、バイヤーの目が肥えており、「この商品の特徴は何か」「他の商品とどう違うのか」という質問に即答できなければ、バイヤーの心をつかむのは難しい。そのため、スパークリング日本酒、生酒、古酒などの特徴ある日本酒が特に好評であった。生酒の原酒の出展者は「2年前にも同じ商品でこの見本市に出品したが、反応が全然違う。2年前と比べ、日本酒の専門知識を持ったバイヤーが増えており、生酒に関心を示すバイヤーも確実に増えた」とコメントした。また、食前酒として飲みやすさを追求しアルコール度数を8度と低く抑えた日本酒や、貯蔵し熟成した古酒などもバイヤーの関心を引き付けていた。一方で、他国でもライバルが多いワインには、関心の薄いバイヤーもいた。また、輸入代理店との契約の有無も重要なポイントであり、「Importer Wanted」の表示を見ながら、何度も出展者に確認していたバイヤーの姿もあった。さらに、日本酒を注ぐための特徴のあるワイングラスを探しているレストランシェフもいた。
日本産ウイスキーも人気が高く、日本メーカー2社が出展した。見本市の「ウイスキーエリア」にブースを出展し、バイヤーの関心を集めた。バイヤーからは「価格がリーズナブルで市場に入りやすい」「香りや味わいがそれぞれ違って面白い」などのコメントがあった。
毎日開催のセミナーで日本産酒類をPR
日本産酒類をより効果的に、香港や各地から参加するバイヤーなどにPRするため、ジェトロは酒類に係るセミナーを会期中、毎日開催した。初日は「新たな日本酒のトレンド」を、2日目は「リキュール・低アルコール飲料・甘酒の魅力」を、3日目は「日本の蒸留酒(焼酎・泡盛・ウイスキー)を使ったカクテルデモンストレーション」をテーマに、現地在住の専門家による講演や試飲会を行い、多数の来場を得た。
- 注:
- アルコール度数30度を超える場合は、物品税が100%課税される。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・香港事務所市場開拓部長(農林水産・食品担当)
前田 久紀(まえだ ひさのり) - 在米国ナッシュビル日本国総領事館領事(経済及び日系企業支援担当)、農林水産省政策統括官付農産企画課米穀貿易企画室企画官(日本産米の輸出プロモーション担当)などを経て、農林水産省より2018年6月にジェトロに出向、同月より現職。
- 執筆者紹介
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ジェトロ農林水産・食品部 加工食品・酒類支援課
杉野 浩史(すぎの ひろし) - 2013年、ジェトロ入構。対日投資部対日投資課(2013年~2015年)、ジェトロ大分(2015年~2018年)を経て、2018年より現職。