就労ビザ、取得要件など最新情報の確認を(マレーシア)

2018年8月24日

就労ビザに関する要件や手続きは細かな変更などが頻繁に行われることが多いため、常に最新の情報を確認することが重要だ。ジェトロが8月6日にクアラルンプールで開催したセミナーで、講師のクオンタム・コンサルティング・サービスの竹ノ山千津子マネジングダイレクターが、就労ビザ取得の手続きや近年の傾向を解説した。


セミナーの様子(ジェトロ撮影)

就労ビザは4種類、業種により異なる申請先

就労を目的としてマレーシアに滞在する場合、短期でも就労ビザを取得する必要がある。就労ビザの種類は大きく分けて(1)雇用パス(EP)、(2)プロフェッショナル・ビジット・パス(PVP)、(3)レジデンス・パス、(4)就労許可の4種類である。

一般的な査証は、長期滞在・就労のためのEPと、短期就労(機械設置や研修など)のためのPVPの2つ。EPの取得に当たっては、業種によって申請先が異なる(表1参照)。(1)製造業、プリンシパル・ハブ・インセンティブ取得会社、国際調達センター(IPC)、駐在員事務所の場合は、マレーシア投資開発庁(MIDA)から外国人就労ポストの認可を取得した上で、MIDA内にある入国管理局の窓口へ申請する。(2)販社、サービス会社などの場合は、入国管理局の外国人サービス部門(ESD)にオンラインで申請する。(3)情報通信技術(ICT)会社の場合は、マレーシアデジタルエコノミー公社(MDEC)にオンラインで申請し、外国人就労ポストの認可を取得した上で、MDEC内にある入国管理局の窓口へ申請する。(2)と(3)の場合、ビザ申請の前に会社登録を行う必要がある。PVPの申請先は業種などにかかわらず、ESDへの申請となる。

表1:雇用パス(EP)の申請先
業種 申請先
  • 製造業
  • プリンシパル・ハブ・インセンティブ取得会社(地域統括拠点)
  • 国際調達センター(IPC)など
  • 駐在員事務所
(1)マレーシア投資開発庁(MIDA)
(2)MIDA内の入国管理局窓口
  • 販売会社、サービス会社など
入国管理局の外国人サービス部門(ESD)
  • ICT企業〔マルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)ステータス取得企業含む〕
(1)マレーシアデジタルエコノミー公社(MDEC)
(2)MDEC内の入国管理局窓口
出所:
講師資料

MIDAのEPはキーポスト、タイムポストの有効期限に注意

MIDAでは、製造ライセンスやその他インセンティブの申請時に、併せて外国人就労枠の申請が可能となっている。就労枠の種類にはキーポストとタイムポストがあり、キーポストは永久的に外国人を配属できるポスト、タイムポストは一定期間外国人を配属できるポストとなっている。会社はMIDAより就労枠の認可を受けた後、その枠を使いEPを申請することができる。この場合のEPの申請は、MIDA内に所在する入国管理局への窓口申請となる。

就労枠の認可要件については、MIDAの認可書をよく確認する必要がある。通常の就労枠については認可後1年以内に使用する必要があり(2018年8月現在)、期限内に使用されなかった枠は失効してしまうので注意が必要だ。また、一度使用した枠でも、ポストが空いた状態が1年以上続くと枠自体が失効してしまう場合もある。現状、増資や拡張など投資を行っても、一度失効した就労枠を再度取得するのは難しい。未使用の就労枠があり、近くEPの申請を予定している会社は、就労枠が有効かどうか確認する必要がある。

新規設立の会社で、工場の建設期間中など事業開始前に就労枠の申請・取得を行う場合には、就労枠の認可が早すぎるケースがある。駐在員候補者が決定し、実際にEPを申請するタイミングから、就労枠の認可が1年以上前にならないよう留意すべきだ。

ESDを通じたEP/PVPの申請手続き

EPやPVPの申請において、ESDのオンライン申請をする場合の手続きは、(1)会社登録およびプロジェクション(EP/PVPの申請見込み人数)の申請、(2)会社登録の認可を受けた後、入国管理局において署名をして登録を完了、(3)プロジェクションの認可、(4)EP/PVPの申請という手順になる。

会社登録の際には、事業に関係する各所轄官庁からの許認可書やライセンス・証書の提出が必須となる。例えば、販売会社やサービス会社の場合は、マレーシア国内取引・協同組合・消費者省(MDTCC)の認可書、製造業の場合はMIDAの製造ライセンス、ICT会社の場合はMDECの登録認可書、建設業の場合は建設業開発庁(CIDB)の登録証などだ。

前述の書類に加えて、所在地の自治体が発行するビジネスライセンス、電話料金の明細書などさまざまな書類をそろえて提出する必要がある。申請書類の提出から会社登録の完了までの所要期間は通常約2~3カ月だが、各所轄官庁からの認可取得に時間を要するケースもある。

MDTCCに認可申請をする場合は、「マレーシア流通取引・サービスへの外国資本参入に関するガイドライン」で定められている最低払込資本金などの要件を満たす必要があり、事前に増資手続きなどを完了する必要がある。2018年は総選挙の影響で、MDTCCの認可申請に対する審査会が5月から開かれず認可に遅れが出ていたが、8月9日に総選挙後初めて審査会が開催された。

会社登録申請に併せてプロジェクションの申請も行う。プロジェクション申請には、申請者のパスポートコピーや履歴書、給与額と役職名などを記入した申請書が必要であるため、派遣する対象者が決定していることが前提となる。

毎年が基本のプロジェクション申請

プロジェクション申請は、基本的に毎年行う。年内に使用されなかったプロジェクション数は、いったんリセットされ0になる。翌年分はあらためて申請しなければならない。2019年分は2018年10月1日から申請可能となる。年内にプロジェクション数が足りなくなった場合、その都度追加申請が可能だ。プロジェクション数には、新規申請に加えて、既存の就労ビザの更新申請分を含める必要がある。なお、EPとPVPは別々にプロジェクション申請を行う。

会社登録およびプロジェクションの認可後、EP/PVPの申請を行う。申請する役職名については、原則システム上に登録されているリストの中から合致するもの(近いもの)を選ぶが、適当な役職名がシステム上にない場合は、別途役職名の申請をする必要がある。近年、入国管理局が役職名から「ローカル社員でも従事可能で、駐在員が必要な役職ではない」と判断し、申請を却下するケースもあり、「セールス・アシスタント・マネジャー」などの役職名は却下される場合もある。現在EPを取得できている役職名でも、後任が新規申請する際には、必ずしも同じ役職名で認可されるとは限らないため、対策が必要だろう。

EPの認可年数は短縮傾向

EPには、雇用契約期間や給与水準によってカテゴリーが3種類ある(表2参照)。日本人の場合、通常カテゴリーのⅠまたはⅡに該当する。

表2:外国人の雇用パスの発給要件(2017年9月1日から)
カテゴリー 最低月額給与 雇用期間 家族帯同の可否 メイド雇用の可否
1万リンギ以上 5年まで
5,000~9,999リンギ 2年まで
3,000~4,999リンギ 最長12カ月 不可 不可
注:
「雇用期間」は雇用パス取得予定者の雇用契約期間。雇用パスの認可期間とは異なる。
出所:
マレーシア入国管理局(ESD)

カテゴリーのほか、EP申請者の学歴に応じて関連分野での一定期間の職務経験が求められている(表3参照)。年齢制限はないが、実質的には25~26歳が、申請可能な最少年齢だと考えられる。

表3:雇用パスの発給資格(2017年9月1日から)
最終学歴 必要職務経験年数
大学卒業 3年以上
高校卒業 5年以上
職業訓練校卒業 7年以上
出所:
マレーシア入国管理局(ESD)

最近の傾向として、カテゴリーⅠの申請者で5年のEP申請をしても1~2年の認可となることが多くなっている。また、カテゴリーⅡの新規申請の場合、ほとんどのケースで1年の認可となっている。更新申請時には、個人所得税納付に関する書類の提出が重要となる。きちんと納税をしていれば、更新時には通常2年の認可が下りる。ESDは、EP取得者が実際に就労し、納税したかどうかの確認を強化しているとみられる。

PVPは業種にかかわらずESDで申請

PVPは前述のとおり、業種などにかかわらずESDで申請するが、会社登録には2~3カ月を要するため、MIDAやMDECを通してEPを申請している会社で、将来的にPVPを取得する予定がある会社は、ESDへの会社登録だけでも先に済ませておいたほうがよい。

PVPについては3カ月、6カ月、12カ月の3パターンで申請が可能である。PVP申請においては、スケジュール、職務内容、申請者が携わるプロジェクトに関する契約書などが重要な提出書類となる。12カ月の申請をする場合は、12カ月分のスケジュールの提出が必要である。またプロジェクト関連の書類も、その期間中有効であることが分かるものでなければならない。PVPは有効期間内であればマルチエントリーが可能なため、断続的に渡航する場合は12カ月で取得しておくと安心だ。プロジェクトが12カ月を超えて続く場合は、いったん帰国し、新規申請をする。2回目の申請時には、関係書類などを初回よりも豊富にそろえ、なぜPVP申請が必要なのかという理由を申請レターに明記する必要がある。

PVP取得者であっても、滞在期間に応じて納税義務が発生する場合がある。プロジェクト終了時には、PVPの取り消し(キャンセル)および税務当局への税務関係資料の提出または申告を行う。PVPのキャンセルと税務申告を行わずに帰国した日本人が、マレーシアに再度渡航した際に罰金を科された上、納税を求められた事例もある。なお、EPの場合も、同様に就労ビザのキャンセルおよび税務申告が必要だ。

パスポート更新後はビザの転記を忘れずに

留意すべき近年の変更として、パスポート更新時の就労ビザ転記が必須となった点が挙げられる。就労ビザの有効期限内にパスポートを更新する場合、新しいパスポートにも就労ビザの転記を行う必要がある。日本でパスポートを更新した場合には、入国後速やかに転記手続きを行わなければならない。同手続きには1週間程度かかる。転記がない場合はマレーシアから出国できない。

執筆者紹介
ジェトロ・クアラルンプール事務所
田中 麻理(たなか まり)
2010年、ジェトロ入構。海外市場開拓部海外市場開拓課/生活文化産業部生活文化産業企画課/生活文化・サービス産業部生活文化産業企画課(当時)(2010~2014年)、ジェトロ・ダッカ事務所(実務研修生)(2014~2015年)、海外調査部アジア大洋州課(2015~2017年)を経て、2017年9月より現職。