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印中首脳が非公式会談、課題と関係性を共有

2018年6月6日

インドのモディ首相は4月27日、28日の2日間、中国の武漢市を訪問し、習近平国家主席と非公式会談を実施した。アジアの2大国トップが特定のアジェンダを持たず、インフォーマルに意見交換をするというまれな機会に注目が集まった。インドと中国は、国境問題、貿易不均衡などの課題を抱えつつも、政治の安定や経済発展のために互いを必要としている。2019年の総選挙を控えるタイミングである現在、国境問題などに起因する政治的混乱や中国からの投資受け入れによる経済成長への後押しなどの理由から、モディ首相は中国との関係を重要視していくとみられる。

国境問題やパキスタン関係など両国間の議題はさまざま

今回の非公式会合を行う前から、両国間の高官の往来は以前に比べ増加している。2017年の中国外相らなどの訪印に続き、2018年4月には元駐中国大使の外務次官ビジェイ・ケスハフ・ゴケール氏、国家安全保障顧問のアジット・ドバル氏、スシュマ・スワラージ外相やニルマラ・シタラマン防衛相が訪中している。

2018年5月7日付「インディア・トゥデイ」誌は、昨今の印中関係を取り上げた特集の中で、両国間が抱える問題点を5つ挙げている。1点目は国境問題である。2017年6月、中印とブータンが国境を接するドクラム高原で、両国の部隊が73日間にらみ合った事件は記憶に新しい。2点目は貿易不均衡、つまりインドが中国に対して抱える貿易赤字の状況だ。インド経済モニタリングセンター(CMIE)のデータによると、2017年度のインドから中国への輸出額は133億4,670万ドルであるのに対し、インドの中国からの輸入額は、762億6,620万ドルであり、貿易赤字は約630億ドルに上る。3点目はチベットをめぐる情勢である。インドがチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の亡命を認めてから2019年で60年を迎えるが、中国を刺激することを望まないインドは記念式典への政府閣僚の出席を1人にとどめ、中国に配慮を示した。4点目はテロリズムである。インドは、パキスタンのイスラム過激組織ジャイシュ・エ・ムハンマドのリーダー、マスード・アズハール氏の国際的テロリストへの指定を国連に要請しているが、パキスタン支援の姿勢をみせている中国は、これを拒否している。5点目はパキスタンとの関係で、中国が推進している「一帯一路」を構成する中国・パキスタン経済回廊(CPEC)に、パキスタンとの国境問題を抱えるインドが反対の立場を取っていることである。 CPECは、パキスタンが実効支配するカシミール地域のギルギット・バルティスタン州を通過する計画だが、インドは同地の領有権を主張している。今回の非公式会合に先立つ4月25日に上海協力機構(SCO)の大臣会合が北京で開催された際、パキスタン、ロシアなど他のSCO参加国はCPECを認める姿勢を示した中、インドから参加したスワラージ外相はこれに反対姿勢を示したことも印象的だ。

インドへの中国投資拡大には期待

中国はインドにとって最大の輸入相手国である一方、直接投資国としての存在感はこれまで大きくなかった。しかし、近年は中国からの投資案件が増加している。現地の報道によると、特に活発な動きをみせているのがスマートフォンメーカーで、シャオミ、オッポ、ワンプラス、ジオニー、ヴィーヴォ、ファーウェイなどがインドに製造拠点を設けている。一方、2014年に習国家主席が今後5年間でインドに200億ドルを投資すると表明したものの、実際はその4分の1にも達していないという報道もあり、中国からの投資拡大にはさらなる期待が掛かっている。

課題を抱えながら互いを必要とする印中

今回の非公式会談の結果、両国はアフガニスタンでの経済プロジェクトの共同実施や健康増進、災害対策事業での協力などを決定した。また会談後、印中軍間での特別国境会議も開催された。

現地の報道は今回の会談について、「アジアの2大大国の関係性が強化されたことが最も大きな成果」と評価している。また、インドのシンクタンクである政策研究センターのブラフマ・チェラニー教授は「中国にとってインドと良好な関係を築くことは、米国のように貿易関係で対抗的な姿勢をインドにとらせない、まさにウィンウィンの状況をつくり出す」としている。また同氏は、ウィンストン・チャーチルの「融和策信奉者というものは、ワニに餌を与え、彼を食べるのを最後に回してもらおうとする人のようなものだ」という言葉を引き合いに出し、モディ首相の中国に対する姿勢を「インドの平和を買うために、ヒマラヤの巨大ワニに餌を与えようとしている」と表現している。

執筆者紹介
ジェトロ・ニューデリー事務所
古屋 礼子(ふるや れいこ)
2009年、ジェトロ入構。在外企業支援課、ジェトロ・ニューデリー事務所実務研修(2012~2013年)、海外調査部アジア大洋州課を経て、2015年7月からジェトロ・ニューデリー事務所勤務。

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