日本企業とウィンウィン関係の構築を目指す遼寧省(中国)
遼寧省の最新ビジネス情報セミナーを開催(1)

2018年5月31日

ジェトロは2018年5月9日、東京で「遼寧省の最新ビジネス情報セミナー」を開催した。同セミナーでは、遼寧省の唐一軍省長、中華人民共和国在日大使館の景春海参事官、日本の在瀋陽総領事館の石塚英樹総領事が来賓あいさつを行い、遼寧省商務庁の宋彦麟庁長やジェトロ海外調査部中国北アジア課の箱﨑大課長、オリックスの伏谷清取締役兼専務執行役が登壇し、遼寧省の概況や投資環境などについて紹介した。1回目は、遼寧省商務庁の宋庁長の講演内容。

日中平和友好条約締結40周年を迎え、日中関係はますます改善している。4月に8年ぶりに日中ハイレベル経済対話が実現し、また、李克強首相が日中韓首脳会議参加のため日本を訪れ、日中関係は新たな時期に入った。今回の唐省長が代表団を率いて訪日したのも、両者間でより多層的な対話や幅広い領域で日中交流を行い、ウィンウィンの関係を構築していくことを目的としている。

遼寧省は中国東北地域の南部に位置し、東北地域で唯一の沿海省である。また、「一帯一路」戦略における中国北部の重要なゲートであるだけでなく、環渤海経済圏の重要な地域でもある。遼寧省は発展した工業部門、産業基盤、優れた科学技術力を有し、特に設備製造に関しては国内有数の集積地である。日本企業とは先進テクノロジー、環境保護、研究開発などの分野で交流がある。遼寧省は14の市を有し、日本人にとってなじみ深い瀋陽や大連以外に、錦州や葫蘆島などの観光都市もあり、皆さんの来訪を楽しみにしている。

遼寧省は古くから日本と経済交流を続けており、双方の努力の下、一定の成果を上げている。省内における日本企業による投資は7,616件、累計投資額は237億9,000万ドルを超える。また、日本は遼寧省にとって最大の貿易相手国でもあり、2017年の対日輸出入総額は前年比15%増の151億ドルとなった。2018年第1四半期も9社の新規投資があり、貿易額も40億ドルを超える。


セミナーに登壇した遼寧省商務庁の宋彦麟庁長(ジェトロ撮影)

具体的な連携を提案

遼寧省は全面的な開放を発展の戦略目標にしている。高水準の開放で質の高い発展を遂げ、全面的開放で経済を振興し、瀋陽経済区や遼寧沿海経済ベルトの発展を加速させ、遼寧省を日中協力の最前線の地とすべく、今後さらに全面的な開放を加速させていく。日本とウィンウィンの関係を構築し、ともに発展を遂げるために3つの協力案を提示したい。

第1に、瀋撫新区建設の推進である。瀋撫新区は瀋陽市と撫順市の間に立地し、171平方キロを有する。産業のハイエンド化、スマート化、レベルアップを発展の方向としている。複数の国家級のモデル区、東北地区の旧工業地帯の改革イノベーションをリードする地域を目指している。また、同区ではオリックスグループとともに国際知的財産交流センターを設立し、「一帯一路東北アジア商工企業フォーラム」を実施する予定である。東北アジア地域で政府、企業、学者などが一堂に会して対話できる環境を提供し、日本の中小企業と遼寧省企業が交流を深めていけるよう協力していく。

第2に、大連北東アジア国際海運センターと瀋陽北東アジア創出センター建設に参画し、推進していくことである。瀋陽市と大連市は遼寧省の重要都市であるだけでなく、対外開放において立地面でのメリットも有している。大連北東アジア国際海運センターは中国北部における対外開放の重要なゲートとなり、また、瀋陽北東アジア創出センターでは産業のレベルアップを行い、先進的な産業集団を作ることを目的としている。この2つのセンターを建設するにあたり、日本企業から資金面だけでなく、技術、管理などのノウハウを生かした深い協力を目指す。

第3に、中国(遼寧)自由貿易試験区(以下、自貿区)の推進である。自貿区は2017年4月1日に設立が批准され、瀋陽、大連、営口エリアから構成される。すでに2万5,000社の企業が登記し、登録資本金は3,700億元(約6兆2,900億円、1元=約17円)を超える。このうち、外資企業数は331社、登録資本金は69億4,000万ドルに達している。物品貿易の自由化、サービス、投資、金融、政府調達、知財保護などの領域で改革を行い、ハイレベル産業の集積地を目指していく。また、容易に貿易や投資ができ、金融サービスが完備され、法治環境が整備されたハイレベルな自貿区を目指す。日本企業にはぜひ視察、投資に来ていただきたい。

新政策でも外資誘致を後押し

中国政府は新たに東北振興政策を提唱し、東北の旧工業地区の全面振興などの重大政策を発表している。遼寧省は「全面開放で全面振興を促す新局面の構築を加速させるための意見」で40の政策を新たに発表した。特に外資企業の参入制限の緩和、現代サービス業の対外開放の加速、外資企業に対する財政支援、イノベーションの支援などに関して一連の政策が発表された。資金的な援助も行っており、例えば、世界500強企業が遼寧省に新たに資本金1,000万ドル以上の先進的製造業を行う法人を設立したり、5000万ドルを超える新規プロジェクトを実施したり、3,000万ドルの増資プロジェクトを実施した場合などで、最大1,000万元の奨励金を出す優遇策がある。また、貿易の専門基金を設立し、貿易業務の拡大を支援していく。これら一連の政策には遼寧省が貿易や外資利用を重視している姿勢が表れている。日本の地方自治体や商工関係者とともに新たに協力のパイプを構築し、新たな協力形態を創出したい。遼寧省への日本からの投資を心より歓迎する。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課
方 越(ほう えつ)
2006年4月、ジェトロ入構。展示事業部海外見本市課、金沢貿易情報センターを経て2013年6月から現職。