第1四半期の貿易赤字は2期連続で拡大(米国)

2018年8月7日

第1四半期(1~3月)の貿易は、輸出が前期比2.2%増の6,192億ドル、輸入は2.8%増の7,749億ドルで、貿易赤字額は前期より78億ドル多い1,556億ドルとなった。輸出入とも全ての主要財で前期比プラスとなった。対中国赤字は7期連続で増加、対日赤字も輸出が減少し、輸入が増加したことで拡大した。

貿易赤字はほぼ10年ぶりの高水準

商務省が6月20日に発表した第1四半期の貿易統計(国際収支ベース、季節調整済み)によると、輸出(財・サービス)は前期比2.2%増の6,192億ドル、輸入は2.8%増の7,749億ドルとなった(表1、図参照)。その結果、貿易赤字額は前期より78億ドル多い1,556億ドルと、2008年第3四半期以来の高い水準となった。財、サービスの内訳に関しては、財は伸び率で輸入が輸出を上回り2,205億ドルの赤字、サービスは伸び率で輸出が輸入を上回り649億ドルの黒字となった。

表1:財・サービス貿易収支推移(国際収支ベース、季節調整済み)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
区分 2017年 2018年
3Q 4Q 1Q 1月 2月 3月
金額 前期比 (貿易収支は差額) 金額 前期比 (貿易収支は差額) 金額 前期比 (貿易収支は差額) 金額 前期比 (貿易収支は差額) 金額 前期比 (貿易収支は差額) 金額 前期比 (貿易収支は差額)
輸出 589,107 1.6 605,916 2.9 619,243 2.2 202,506 △ 1.2 206,077 1.8 210,660 2.2
階層レベル2の項目 387,814 1.4 401,939 3.6 411,416 2.4 133,758 △ 2.2 136,705 2.2 140,953 3.1
階層レベル2の項目 サービス 201,293 2.0 203,977 1.3 207,828 1.9 68,748 0.8 69,373 0.9 69,707 0.5
輸入 721,899 0.8 753,742 4.4 774,870 2.8 255,387 △ 0.6 261,613 2.4 257,870 △ 1.4
階層レベル2の項目 584,637 0.4 614,317 5.1 631,934 2.9 208,277 △ 0.9 213,416 2.5 210,240 △ 1.5
階層レベル2の項目 サービス 137,261 2.4 139,426 1.6 142,936 2.5 47,110 0.7 48,197 2.3 47,630 △ 1.2
貿易収支 △ 132,791 3,909 △ 147,826 △ 15,035 △ 155,626 △ 7,800 △ 52,881 △ 992 △ 55,536 △ 2,655 △ 47,210 8,326
階層レベル2の項目 △ 196,823 3,125 △ 212,378 △ 15,555 △ 220,518 △ 8,140 △ 74,519 △ 1,200 △ 76,712 △ 2,193 △ 69,287 7,425
階層レベル2の項目 サービス 64,032 784 64,551 519.0 64,892 341 21,639 209 21,175 △ 464 22,078 903
出所:
商務省データを基に作成
図:財・サービス貿易収支推移(国際収支ベース)
貿易赤字は、2008年第3四半期に最高値1,894億ドルを記録しましたが、その後、リーマンショックの影響により2009年第2四半期に814億ドルまで減少しました。その後、貿易赤字は再び拡大を続けています。2018年第1四半期は、輸出額は6,192億ドル、輸入額は7,749億ドル、貿易赤字は1,556億ドルとなり、貿易赤字額は2008年第3四半期以来の高い水準となりました。
出所:
商務省データを基に作成

財貿易は輸出入ともに主要財全てでプラス

財貿易をみると、輸出が前期比2.4%増の4,114億ドル、輸入が2,9%増の6,319億ドルとなった。輸出入ともに、全ての主要財が前期比でプラスとなった(表2参照)。

輸出を主要財別にみると、自動車・同部品など、消費財、食料品・飲料の順で伸びに寄与した。個別財では、宝飾品(前期比18.4%増)、乗用車(8.3%増)、穀物類(14.6%増)、民間航空機・エンジン・部品(2.4%増)、エネルギー関連製品(1.5%増)、金属・非金属製品(3.3%増)などが押し上げた。

なお、2015年末の輸出解禁以降、米国の原油輸出量の上昇傾向は続いている。中でも中国向けの伸びが顕著で、1~3月の合計輸出量は前年同期比で2倍以上の3,216万バレルと、四半期ベースで過去最大となった。輸出量は首位のカナダ向けとほぼ同量に達した。現行では中国側の原油輸入は非課税となっているが、3月22日にトランプ政権が発動した通商法301条に基づく追加関税への対抗措置として、中国が発表した追加関税の対象予定品目(実施時期などは未定)に含まれていることから、追加措置が発動されれば、米国の原油輸出への影響は大きいとみられている。

輸入を主要財別にみると、工業用原材料、消費財、自動車・同部品などの順で伸びに寄与した。個別財では、原油(12.4%増)の増加額は輸入全体の増加額の24.7%を占めた。次いで、医薬品(16.7%増)、コンピュータ(8.5%増)、金属・非金属製品(4.2%増)、自動車部品・周辺機器(カナダ以外、3.8%増)、乗用車(カナダ以外、2.6%増)などが押し上げた。原油増は、米国産の原油単価(WTIスポット)が1バレル当たり62.89ドル(1~3月平均)と前期比で7.52ドル上昇したことが影響した(エネルギー情報局)。価格上昇には産油国間の協調減産や米国の対イラン経済制裁再開など中東情勢のリスクの高まりが影響したとみられている。

表2:2018年第1四半期の主要財別貿易(国際収支ベース、季節調整済み)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値、―は該当なし)
区分 主要財 金額 前期比 寄与度 寄与度が最大の個別財
輸出 合計 411,416 2.4
食料品・飲料 33,338 3.9 0.31 穀物類
工業用原材料 125,403 0.9 0.28 エネルギー関連製品(原油を含む)
(うち原油) 8,486 1.1 0.02
資本財 138,209 0.6 0.22 民間航空機・エンジン・部品
自動車・同部品など 42,207 6.2 0.61 乗用車
消費財 51,598 3.6 0.45 宝飾品
その他 20,660 10.7 0.50
輸入 合計 631,934 2.9
食料品・飲料 37,014 4.1 0.24 野菜・果実・種子類
工業用原材料 142,001 6.2 1.35 エネルギー関連製品(原油を含む)
(うち原油) 39,422 12.4 0.71
資本財 170,589 0.8 0.23 コンピュータ
自動車・同部品など 92,885 2.5 0.37 部品・周辺機器(カナダ以外)
消費財 164,007 4.1 1.04 医薬品
その他 25,439 △ 8.1 △ 0.37
出所:
商務省データを基に作成

対中赤字は7期連続で増加

財貿易を主要国・地域別にみると、輸出ではEU(前期比5.3%増)、カナダ(4.8%増)、メキシコ(4.7%増)、アジアNIES(7.8%増)、輸入では中国(3.9%増)、EU(3.3%増)、メキシコ(4.0%増)、日本(3.0%増)の順でそれぞれ押し上げた(表3参照)。

主要国・地域別の貿易収支をみると、対中赤字は伸びで輸入が輸出を上回り、前期比51億ドル増の1,042億ドルと、7期連続で前期比増だった。

対日赤字は輸出が減少し、輸入が増加したことから、前期比11億ドル増の180億ドルとなった。EUに対する赤字は、伸び率で輸出が輸入を上回り9,500万ドル減の429億ドル、また北米自由貿易協定(NAFTA)圏に対する赤字は、伸び率で輸出が輸入を上回り31億ドル減となった。

表3:2018年第1四半期 国・地域別の財貿易(国際収支ベース、季節調整後)(単位:100万ドル、%)(△はマイナス値)
国・地域 輸出 輸入 貿易収支
金額 前期比 金額 前期比 金額 前期との差
世界計 411,416 2.4 631,934 2.9 △ 220,518 △ 8,140
カナダ 76,437 4.8 78,986 0.2 △ 2,548 3,414
メキシコ 66,013 4.7 86,019 4.0 △ 20,006 △ 324
中国 33,645 0.0 137,795 3.9 △ 104,150 △ 5,133
日本 17,816 △ 0.1 35,827 3.0 △ 18,011 △ 1,059
EU 77,747 5.3 120,602 3.3 △ 42,855 95
アジアNIES 39,195 7.8 36,270 △ 1.5 2,925 3,384
インド 7,824 19.2 13,025 1.4 △ 5,201 1,081
サウジアラビア 3,625 3.2 4,524 7.8 △ 899 △ 216
ブラジル 9,780 △ 3.9 7,142 0.2 2,639 △ 412
その他 79,334 △ 5.6 111,744 3.9 △ 32,412 △ 8,970
出所:
商務省データを基に作成

変更履歴
文章中に誤りがありましたので、次のように訂正いたしました。(2018年10月11日)
第2段落
(誤)財、サービスの内訳に関しては、財は伸び率で輸入が輸出を上回り81億ドルの赤字、サービスは伸び率で輸出が輸入を上回り3億ドルの黒字となった。
(正)財、サービスの内訳に関しては、財は伸び率で輸入が輸出を上回り2,205億ドルの赤字、サービスは伸び率で輸出が輸入を上回り649億ドルの黒字となった。
第9段落
(誤)EUに対する赤字は、伸び率で輸出が輸入を上回り95億ドル減の429億ドル
(正)EUに対する赤字は、伸び率で輸出が輸入を上回り9,500万ドル減の429億ドル
執筆者紹介
ジェトロ・ニューヨーク事務所 リサーチャー
大原 典子(おおはら のりこ)
民間企業勤務を経て2013年よりジェトロ・ニューヨーク勤務。自動車産業を柱に米国の産業調査を担当。