AfricaCom:アフリカ最大のICT関連イベント開催(南アフリカ共和国)
アフリカの最新ICTビジネスの現場から

2018年12月26日

南アフリカ共和国(以下、南ア)のケープタウンで11月13日~15日にかけて、ICT(情報通信技術)関連の企業展示ブースや講演セッションから成るアフリカ最大のイベント「AfricaCom」が開催された。

アフリカ各国政府がICTを含むインフラ整備を強化する方針を打ち出す中、アフリカでは主に電子商取引、電子マネー、農業ICT、セキュリティー対策が非常に重要な分野として注目される。今回のイベントでも、各分野に関わる企業展示やパネルディスカッションが行われた。年々大きな盛り上がりをみせるイベントでの現地取材を通して、アフリカで急伸するICTビジネスの現状を報告する。

中国企業やNECなど400社が出展

会場となったケープタウン国際会議場は港に面した国際的なコンベンション施設で、近くには世界的に有名なV&Aウォーターフロントがある。会場を一回りすると1時間ほどかかる規模で、約 1万4,000人の来場者、約450人のスピーカー、出展企業数は約400社と発表された。会場内には多くのブースが並び、(1)企業展示ブース、(2)政府機関ブース、(3)スピーカーブースと大別されていた。

企業ブースでは、 アフリカ大手通信企業(コンゴ共和国のコンゴテレコム、南アのマンホールフォーアフリカなど)だけでなく、中国の通信機器メーカーや通信企業[華為技術(ファーウェイ)、チャイナモバイルインターナショナル、チャイナテレコムなど]、中東の衛星通信企業(サウジアラビアのアラブサット、アラブ首長国連邦のアル・ヤーサテライトコミュニケーションズカンパニーなど)や、ロシアの衛星通信企業(ロシアサテライトコミュニケーションズカンパニーなど)といった外資系企業も出展し、最新のICT関連技術をPRしていた。なかでも中国企業の出展が多く、華為技術は航空業界で独自に拡大させるクラウドコンピューティングやIoT、ビッグデータを活用したICTビジネスについて大々的に紹介していた。日本からの唯一の参加企業だった日本電気(NEC)は、現地での通信事業者向けネットワーク構築事業や、セキュリティーを中心とした政府・自治体向けITシステム構築事業、マネージドサービス事業(セキュリティーオペレーションセンターに高いスキルのアナリストが常駐し、サイバーインテリジェンスを活用した24時間態勢のNEC独自のリモート監視サービス)などを紹介した。

NECブースの日本人担当者は「力を入れているのは犯罪抑止を目的としたセキュリティーの分野で、日本で開発した技術をアフリカで展開している。地場に根付いたビジネスを展開するには現地企業の買収が重要」とビジネスの現状を述べた。また、「さらに日本企業が参入すると、他の日本製品とパッケージで売り込める」と今後の期待を語った。


NECの展示ブース(ジェトロ撮影)

ファーウェイの展示ブース(ジェトロ撮影)

政府機関ブースには、アフリカ各国政府だけでなく、イスラエル経済産業省もブースを展開し、自国のICT関連企業の紹介をしていたことが興味深かった。


イスラエル経済産業省のブース(ジェトロ撮影)

スピーカーブースでは、パネルディスカッションや講演形式でスピーカーが登壇し、各分野からの視点でICTの現状、課題、今後の方針を報告していた。シヤボンガ・ツウェレ南アフリカ通信・郵便相が出席したパネルディスカッションでは、携帯電話用周波数(4G)の拡張が確認され、ラマポーザ大統領主催の投資フォーラムが成功したことによる多数の投資案件で、各種インフラが整備されることが議題に上がった。5Gの周波数割り当ては来年開催される世界無線通信会議(WRC)の結果を待って行われる予定で、インフラ整備だけでなく、データセンター、イノベーションセンターの構築も促進し、活用面からも推進していく予定。

パネルディスカッションでは「金融分野において、全国民にどのように口座を開設させて取り引きを増やしていくかが経済発展には必要不可欠。アフリカではモバイルマネーが普及しつつあるが、政府にはその統一プラットフォームの構築をしてほしい。それによりアフリカ全土におけるモバイルマネーの相互運用性をどのように確保していくかルール作りをしていくことができる」との指摘があった。

NECの久木田信哉主席技監も登壇し、NECにおける生体認証の取り組みや統合プラットフォーム、それらを活用したスマートシティーへの貢献について紹介した。

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

このイベントでは、参加していた携帯電話会社の多くが既に携帯電話用周波数5Gの導入に向けて取り組んでいる印象を受けた。アフリカではインフラ整備に対する投資が活発にアピールされているが、他方でデジタル教育による人材育成やICTの利活用についてもきちんと目を向けており、インフラ整備が成功した後にはそれらを活用した事業・サービスが多く出現することが見込まれる。日本としてもインフラ整備段階から関与するとともに、同時並行で利活用についても売り込んでいくことが重要と考える。

執筆者紹介
ジェトロ・ヨハネスブルク事務所
川崎 大佑(かわさき だいすけ)
2018年、ジェトロ入構、現職。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中東アフリカ課
伊藤 千春(いとう ちはる)
2018年、ジェトロ入構、現職。