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好調なケニア産切り花、輸出に追い風吹くか
ニューヨーク便就航など機に拡大へ意欲的

2018年12月11日

ケニアの切り花など園芸作物は、紅茶やコーヒーと並んで主要な輸出品目の1つだ。ケニア航空のニューヨーク直行便就航などを機に、さらなる輸出拡大を目指す。輸出先の多様化や直接取引の拡大にも意欲的だ。ケニア切り花業界の課題と展望を探る。

バラ輸出が好調

ケニア航空が2018年10月28日、米国ニューヨークへの直行便を就航した。ケニア政府の狙いは、米国人観光客の呼び込みはもちろん、対米輸出の拡大だ。期待される品目の1つが、切り花だ。

近年ケニアでは、切り花、とりわけバラの輸出が好調だ。2018年1月~8月までの輸出額は前年同期比11.3%増の3億2,774万米ドルを記録した。主力輸出商品であるコーヒーや茶の生産量が、天候不順が引き金となり伸び悩んだ2017年も、施設園芸農業を主力とする切り花の生産は順調に拡大し、輸出量は過去最高の約15万トンを記録した。

図:ケニアの切り花などの輸出量・金額の推移
ケニアの主要輸出品目である切り花、茶、コーヒーの輸出量・金額の2010~2017年の推移。茶が量・金額とも最大で増加傾向にあるが、切り花も順調に量・金額が増加している。
出所:
グローバル・トレード・アトラス

輸出先の多様化と直接取引拡大へ

ケニア産切り花の最大の輸出先は、世界最大規模の花き卸売市場「アールスメール花市場(Royal FloraHolland)」を有するオランダだ。ケニアが輸出するバラの51.9%がオランダ向けだ(2017年、金額ベース)。オランダ航空(エールフランス‐オランダ航空)はケニア航空の株式18%を保有しており、ナイロビ-アムステルダム間に週42便が運航している。

一方で、オランダ市場への過度な依存にも変化が見られる。バラの生産と販売を手掛けるナイロビ近郊の「Red Lands Roses」の経営者アドリック・スピンドレー氏は、「(オランダの市場を介さない)直接取引に力を入れている」と話す。直営店で販売するごくわずかな量を除き、24ヘクタールの農場で生産するほぼすべてのバラが輸出用だ。「長さや花の大きさ、色、種類の多さで差別化している。より高値で売りたいわれわれにとって、価格交渉ができない市場での競売より、直接取引が魅力的だ」という。ポテンシャルの高い輸出先としてスピンドレー氏は、英国、ロシア、中国、日本、米国を挙げる。特に米国との間にはアフリカ成長機会法(AGOA)があり、ケニア産バラにかかる米国の輸入関税は2025年まで0%だ。ニューヨークへの直行便を利用すれば、積み替えにかかる時間のロスや、切り花にとっては致命的な温度変化のリスクを最低限に減らすこともできる。

広大なバラ農園とピンクのバラ(ジェトロ撮影)

冬季がビジネスチャンス

しかし、ケニア花協議会(KFC)のクレモン・トゥレジCEO(最高経営責任者)は、ニューヨーク直行便の運航開始を「楽観視はしていない」と話す。「旅客便に載せられる貨物量はわずか5トン。加えてケニア航空は、冬季の観光客が少ないため、3月まで減便することを決めた。冬季は切り花輸出のピークだ」。ケニアは海に面する東部を除き、国土の大部分は標高1,000~2,000mの高原に属する。ナクル郡やキスム郡の気温は年間を通じて10~25度で、湿度も比較的安定しており、バラの栽培に最適だ。米国や欧州、日本でバラの需要が最も高まるのは自給が困難な冬季、特にクリスマスシーズンの12月やバレンタインの2月。年間を通じて生産可能なケニアにとって冬季が輸出の一大チャンスだ。「輸出総額のうち、米国向けはわずか1%にすぎない。対米輸出を拡大するのに冬季に便数を減らされては困る」

バラ産業が盛んなコロンビアやエクアドルとの競争も無視できない。トゥレジ氏は「質や量、種類は競合国と大差がない」としつつ、「ケニアの梱包(こんぽう)はコロンビアやエクアドル産に見劣りする」と指摘する。ケニア政府は2017年、環境への配慮からプラスチック袋の生産、使用、輸入などを全面的に禁止する政策を打ち出した。ケニア国内の梱包材製造業者の多くが経営破綻に追い込まれ、業界は壊滅状態だ。また、コスト高も課題だという。種や苗は国内調達が可能でも、肥料をカナダ、ノルウェー、ベルギー、ドイツ、イスラエル、中国などからの輸入に頼っている。冷蔵状態を保つための施設投資や電気代も無視できない。トゥレジ氏によると、輸入資材の関税優遇やケニア政府による産業育成、援助はないという。

さらなる成長を目指す

ケニアの切り花産業は年間10万人の雇用を創出する。中規模企業(16~60ヘクタール)が最も多く全体の65%を占め、25%が大規模企業(60ヘクタール以上)、10%が小規模(1~15ヘクタール)という構成だ。また、施設園芸農業には高い技術や資金力が求められるため、欧州からの投資も少なくない。KFCに加入する約130社のうち60%が外資系企業だ。ケニアのバラ輸出額のうち日本向けはわずか1%にすぎないが、日本にとっては輸入バラの47.8%がケニア産だ(2017年、金額ベース)。KFCによれば、2017年のバラ輸出が創出する国内への経済効果は約8億2,300万ドルで、ケニアのGDPの約1.1%にあたる。切り花産業は伝統的な輸出産品のコーヒーや茶に並ぶ輸出産業に成長している。

トゥレジ氏は、「切り花をケニアの主要産業に成長させるため、市場での競売に加え、直接取引の拡大を進めていく。コスト高や物流の改善、他産地との差別化、ブランドイメージの確立がカギだ」と語る。ケニアの切り花業界は、日本を含む輸出先の多様化に向けて、ネットワーク強化に意気込む。


KFCのクレモン・トゥレジCEO(ジェトロ撮影)
執筆者紹介
ジェトロ・ナイロビ事務所
久保 唯香(くぼ ゆいか)
2014年4月、ジェトロ入構。進出企業支援課、ビジネス展開支援課、ジェトロ福井を経て現職。

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