日本からの輸出に関する制度

菓子の輸入規制、輸入手続き

カナダの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2019年7月

東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、カナダ政府は2011年4~6月にかけて日本からの輸入食品・飼料の定期検査を行うとともに、安全性を証明する書類の提出を求めていましたが、2011年6月13日以降はこうした上乗せ規制は撤廃されており、輸入禁止(停止)は行われていません。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2019年7月

日本から菓子を輸入するためには、輸出者側で必要な書類などは特にありません。ただし、2019年1月15日のカナダ食品安全規則の施行に伴い、2020年7月15日以降は、輸入者の年間売上額が10万カナダドルを超え、従業員が5人以上いる場合には、輸入者が予防管理計画を英語もしくはフランス語で保管することが求められるため、輸出者側にその情報を求めることが予想されます。詳細は、食品関連の規制の「1.食品規格」を参照してください。

関連リンク

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2019年7月

日本から菓子を輸出する場合は、植物検疫証明書なしで輸出できます。ただし、病害虫(キバチの一種、キクイムシ類、マツノマダラカミキリなど)が梱包材に付着して侵入してくることを防止するため、カナダ食品検査庁では輸入貨物の木材梱包材(クレート、木箱、ダンネージ(荷敷き)、パレット、ケーブルドラム、スプール/リールなど)に、「植物検疫措置に関する国際基準No.15(ISPM No.15)」(以下、国際基準No.15)に沿った消毒処理を要求しています(厚さ6mm以下の木材や、プライウッドやパーティクルボード、OSB(雑木破砕接着合板)、ベニヤ板などは対象外)。

カナダの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2019年7月

菓子はカナダ食品安全規則において規格が定められています。

菓子の原材料に小麦粉が使用されている場合、カナダの要件を満たした「Enriched Flour(強化小麦粉)」の使用が求められるため注意が必要です。

カナダの食品輸入者は、食品の衛生および安全性を確保することを目的とし、カナダ食品安全規則第4章(Part4)で定められる予防管理(Preventive Controls)に従った衛生管理などを行う必要があります。

さらに、同規則第4章第6節(Part 4 Division 6)により食品製造工程上の危害要因を分析し、重要な管理点を継続的にモニタリングすることで食品事故の発生を未然に防ぐことを主な目的とした予防管理計画(Preventive Control Plan)を作成、書面で保管することが求められています。書面の作成にあたり、製造元の事業者とカナダの輸入者の間で取り交わされる言語に制限はありませんが、最終的な予防管理計画書は英語もしくはフランス語で保管されなければなりません。

また、同規則第5章(Part5)では、トレーサビリティについて定められており、輸入者は商品名、ロット記号、製造者などの名称および住所を記録保管するとともに、商品にこれらの情報をラベル表示することが求められています。さらに、商品の流通履歴の記録保管を行うため、商品の販売者および購入者名、住所、販売/購入日時の記録を保管しなければなりません。

これらの予防管理、予防管理計画、トレーサビリティの要件を満たすことを条件に輸入者には食品検査庁から輸入ライセンスが供与されます。

新規則は2019年1月15日に施行しましたが、輸入者の事業規模に応じて、次のとおりそれぞれの要件の開始に猶予期間が設けられています。

  1. 予防管理
    • 2020年7月15日~(年間売上総額が10万カナダドルを超え従業員が5人以上の場合)
    • 2021年7月16日~(年間売上総額が10万カナダドル以下か従業員が5人未満の場合)
  2. 食品安全予防管理計画(文書)の保持
    • 2020年7月15日~(年間売上総額が10万カナダドルを超え従業員が5人以上の場合)
    • 2021年7月16日~(年間売上総額が10万カナダドルを超え従業員が5人未満の場合)
    • 不要(年間売上総額が10万カナダドル以下の場合)
  3. トレーサビリティのための記録保管
    • 2020年7月15日~

予防管理、予防管理計画、トレーサビリティの要件

予防管理

カナダ食品安全規則のもと、食品輸入者を含め、カナダで州をまたいで食品生産・加工を行う企業の多くは、アルコール飲料や食品添加物などの一部の食品を除き、食品安全に対する予防管理を施すことが求められます。予防管理は食品への危害要因を安全な水準まで除去もしくは減少させることを目的とした国際的に認知された手法で、CODEX(コーデックス委員会)の原則に基づいています。

カナダ食品安全規則第4章(規定47~84)では予防管理について定めており、菓子を含め、該当する食品は次の要件を満たす必要があります。

危害要因の特定、分析および管理措置(規定47~84)
食品に汚染危険性のある生物的、化学的、物理的危害の特定と管理を行う。
施設の状態
規則に準じた方法で施設を維持・操業する。
公衆衛生、害虫予防および食品以外の物質の取り扱い
施設や機材の清潔状態を保ち、害虫予防や洗剤などによる食品汚染を予防する。
輸送設備および機材
輸送設備および機材が食品を汚染しないよう設計、清掃、消毒する。
危積み卸しおよび貯蔵
食品を汚染しない方法で積み卸し、貯蔵を行う。
従業員の能力
従業員が安全な食品の取り扱いの知識を有する。
衛生状態
適切な衣類を着用し、健康状態に留意して食品を取り扱う。
調査、伝達、クレームおよびリコール対処方法
食品の安全に関わる問題が起きた場合に調査を行う。ヒトの健康にリスクがある場合は、カナダ食品検査庁(Canadian Food Inspection Agency:CFIA)へ通知する。クレームの取り扱い手順、リコール手順を文書化する。リコールテストを行う。
予防管理計画

輸入者の年間売上総額が10万カナダドル以下の場合を除き、それぞれの事業者は食品安全管理が行われていることを「予防管理計画(PCP)」として文書化する必要があります。 予防管理計画の開発にあたって、日本側事業者へはカナダの輸入者が課せられる要件に対し、英語もしくはフランス語による各種の書面の提出が求められることになります。

1. 輸入者の予防管理計画
  1. 危害要因の特定と関連する管理措置
    カナダ食品安全規則では、輸入食品に対してもカナダ国内で加工・生産される食品と同等の危害要因分析および予防管理が必要となります。輸入者は外国の食品施設に対して直接の食品安全管理措置を取れる状態にないことを前提としているため、外国供給業者が危害要因を特定し、関連する管理措置を施しているかを見極めることが重要になります。

    危害要因の特定
    食品を輸入するにあたって、食品を汚染しうる生物的・化学的・物理的な危害要因をすべて特定し、記述する必要があります。食品由来および加工工程由来の危害要因をすべて洗い出し、予防管理計画の危害要因の特定よび分析の章に次の2点を記載する必要があります。
    ・輸入見込み食品の食品由来および加工工程由来の危害要因
    ・上述の危害要因が輸入見込み商品に対して設定した危害要因として適格であるという輸入者の保証
    予防管理計画上で危害要因の特定について示す方法
    次に提示するA~Cのいずれかを用いて、輸入者が危害要因の特定を適切に行っていることを示す必要があります。
    1. 輸入者もしくは第三者による外国供給業者に対する現場監査の実施。この場合、予防管理計画には特定された危害要因がすべて記載されている必要があります。
    2. 国際的な第三者認証を取得している供給業者からの商品供給。この場合、輸入者は、外国供給業者に対して、監査が危害要因の特定と分析を含み、認証機関との良好な関係を維持していることを示す根拠資料の提出を求める必要があります。
    3. 食品安全システムの同等性認証取得国内の供給業者からの商品供給。この場合、輸入食品の原産国が同等性認証取得国の商品で、輸入食品供給業者が当該国の所轄官庁と良好な関係を維持していることを示す文書が必要になります。
    *2019年8月時点で同等性認証を交わしているのは米国のみです。
    管理措置
    予防管理計画には、すべての危害要因を管理できる措置が施されていることを示す根拠資料を盛り込む必要があります。
    予防管理計画上で効果的な管理措置を示す方法
    危害要因の特定と同様、次のA~Cのいずれかを用いて効果的な管理措置が行われていることを示す必要があります。
    1. 輸入者もしくは第三者による外国供給業者に対する現場監査の実施。この場合、次の6点を予防管理計画に盛り込む必要があります。
      1. 管理措置に係る作業
      2. 作業がどのように行われるか
      3. 作業頻度
      4. 作業の担当者
      5. 日々の作業工程での管理措置に係る作業が行われていることを示す記録
      6. その他管理措置が効果的に施されていることを示す書類
    2. 国際的な第三者認証を取得している供給業者からの商品の供給。この場合、監査が食品安全管理措置に関する評価を含み、認証機関と良好な関係を維持していることを示す証拠の提出を求める必要があります。
    3. 食品安全システムの同等性認証取得国内の供給業者からの商品供給。この場合、輸入食品の原産国が同等性認証取得国からの商品で、輸入食品供給業者が当該国の所轄機関と良好な関係を維持していることを示す文書が必要になります。
    *2019年8月時点で同等性認証を交わしているのは米国のみです。
    管理措置の有効性の検証
    前述のA~Cに加え、輸入者は管理措置の有効性を検証する必要があるため、次の手段を講じることが推奨されています。
    1. 供給業者ごとの定期的なサンプリング検査(検査頻度は商品の安全性や供給業者のこれまでのコンプライアンス準拠状況による)。
    2. ロットごとの分析証明書の入手。分析証明書には次の記載が可能。
    ・ サンプリング方法、検査を行うための分析方法
    ・ サンプリング検査および分析実施日、商品ID(商品名およびロット番号)、分析者氏名
    ・ ロットが検査され、分析記録が出荷物と合致し検査後変化が起きないよう適切な状態で保存されたということの検証
  2. 外国供給業者管理と手順

    輸入者は、カナダ食品安全規則のもと、それぞれの外国供給業者が規則の第47~81章で示される予防管理、もしくは、それに相当する効果的な食品安全リスクの管理を行っており、第89章89(1)(c)(i) ~(vii)で示される要件に合致した食品安全システム(例えば、CODEXの原則に基づく食品安全システム)を運用していることを予防管理計画の中で保証する必要があります。

    輸入管理計画には、外国供給業者が次のステップを踏んで運用を行っていることを示す必要があります。

    • 危害要因の特定と分析
    • 管理措置の実施
    • 必須管理点の特定
    • 検証
    必須管理点(CCP)が実施されているかの検証
    危害要因の特定と同様、次のA~Cのいずれかを用いて、外国供給業者が必須管理点を実施していることを示す必要があります。
    1. 輸入者もしくは第三者による外国供給業者に対する現場監査の実施。この場合、次の4点を予防管理計画に盛り込む必要があります。
      1. 外国供給業者の予防管理実施について特定・記録すること。
      2. 必須管理点を特定・記録し、それぞれの許容限界(Critical Limit)について記載すること。
      3. それぞれの必須管理点について許容限界内に収まるようにモニタリング方法について記録すること。
      4. 許容限界を超えた場合の是正措置について記録すること。
    2. 国際的な第三者認証を取得している供給業者からの商品の供給。この場合、監査が供給業者の必須管理点の特定、許容限界についての記載、それぞれの必須管理点についてのモニタリング方法の記録、許容限界を超えた場合の是正措置に関する評価を含んでいるという根拠資料を含めた第三認証プログラムの情報、および認証機関との良好な関係を維持していることを示す根拠資料の提出を求める必要があります。
    3. 食品安全システムの同等性認証取得国内の供給業者からの商品供給。この場合、輸入食品供給業者の原産国が同等性認証取得国からの商品で、供給業者が当該国の所轄機関と良好な関係を維持していることを示す文書が必要になります。 *2019年8月時点でカナダと同等性認証を交わしているのは米国のみです。
    予防管理計画の有効性の検証手順
    輸入食品が一貫して安全で規格にのっとったものであることを確実にするため、輸入者が検証する各種の方法を「予防管理計画の有効性の検証手順」として記載する必要があります。
    • 輸入食品がカナダの要件に合致することを確認できるように輸入者が踏む手順(サンプリング、分析証明書の評価、商品スペックの確認など)
    • 検証手順の頻度(新規の供給業者については最初の出荷を含めた5回分の出荷分を確認し、その後は国際的な食品安全システムからの年次監査結果を要求するなど)
    • 検証を行う人員の役職名
    さらに、輸入者の予防管理計画には検証手順に使用した補完資料(各種規則やガイドライン、CODEXなど国際的に認証されているガイドライン、科学的文献、専門家の意見、業界の慣習など)を盛り込むことも可能です。
  3. 消費者保護に関する要件
    輸入食品が、ラベル表示、商品名称、等級、包装などの消費者保護に関する規定順守を確実にするために講じる対策について記載します。
2. 予防管理計画の実施

予防管理計画の文書化を完了後、計画を日常業務で遂行するには、次のことを実施する必要があります。

  • 手順に関するスタッフのトレーニング
  • 書かれた予防管理計画に従う
  • 予防管理計画を実施したことを示す記録を作成し、その記録を少なくとも2年間保持する
  • 予防管理計画が書面通りに実施され、食品安全上の問題予防に有効であることを検証し、その結果、カナダ国民のための安全な食品に関する規則(SFCR)を順守する

予防管理計画の有効性の検証
予防管理計画の有効性を示すにはいくつかの方法があります。例えば、食品ごと、または外国供給業者ごとに検証手順を設定しておくことも可能です。検証頻度や検証水準は輸入食品のリスクに応じて変更する必要があります。

予防管理計画の有効性検証のための対策

  • 商品がカナダの規格およびスペックを満たしているかの目視検査
  • 包装材料が意図した用途に適していること、包装製造業者の指示に従って使用されていること、およびカナダの要件を満たしていることの検証
  • ロットの分析証明書の取得
    • ロットの分析証明書の取得
    • ロットが最近サンプリングされ、サンプリング後の食品への変化を防ぐために適切な条件下で保管されていることを確認
    • 代表的なサンプルを定期的(例:毎月)に取り出して分析し、分析証明書の正確さを検証
  • それぞれの供給業者について文書化された履歴を維持し、供給業者が仕様に準拠していることを示す(例:分析結果の文書化)
  • 所定のサンプリング計画に従ってロットをサンプリングし、仕様への準拠について分析
  • 輸入食品について受け取った苦情を定期的に見直す(例:毎月)

予防管理計画には、計画を実施したという証拠(サービス契約、処理記録、その他の日々の記録など)も含める必要があります。

3. 予防管理計画の維持管理

予防管理計画を開発・実施後は、年に一度など、定期的に見直しを行うとともに次の場合にも再評価・修正を行う必要があります。

  • 何かが新しくなる、もしくは変更が行われる場合(例:供給業者の変更や商品の仕様変更など)。
  • 問題が見つかった場合(外国供給業者の社内モニタリングでの欠陥発見や、第三者監査でコンプライアンス違反、消費者クレームに基づく予防管理計画の不備が見つかった場合など)。
トレーサビリティ
輸入者には、カナダ食品安全規格で定義されているトレーサビリティの要件が適用され、次の情報を盛り込んだ文書を記録保管することが求められます。
  1. 食品の識別
    ・食品の一般名
    ・食品のロットコードまたはその他の一意の識別子
    ・食品の製造、保管、包装、またはラベル貼付した企業もしくはそれを委託した企業の名称および住所
  2. 食品の直近の供給業者(サプライチェーンの一段階前)の情報
    ・供給業者の名称および住所
    ・食品の供給日
  3. 食品の直近の提供者(サプライチェーンの一段階後)の情報
    ・供給業者の名称および住所
    ・食品の供給日

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2019年7月

菓子は、残留農薬/動物用医薬品規制の対象となります。カナダは使用される農薬についてポジティブリスト制度を採用し規制しています(有害生物駆除製品法、Pest Control Products Act:PCPA)。許容残留農薬の登録あるいは事前相談は、保健省病害虫管理規制局(Pest Management Regulatory Agency:PMRA)のElectronic Pesticide Regulatory System(e-PRS)によって申請するか、電子メールで問い合わせることができます。
なお、同局では農薬最大残留基準値データベースを公開しており(最新情報は関連リンク参照)、調査時点における加工食品の農薬最大残留基準値は次のとおり1種類が規定されています。

加工食品における残留農薬の最大残留基準値
化学物質名 最大残留基準値 (ppm)
Phosphine 0.01

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2019年7月

菓子は、重金属/汚染物質/真菌・毒素・微生物などの規制対象となります。具体的な基準値は、食品医薬品規則-食品の不良(DIVISION 15 Adulteration of Food)によって規制されており、カナダ保健省食品部化学安全局(Bureau of Chemical Safety, Food Directorate)が管轄しています。
同局では、重金属/汚染物質/真菌・毒素・微生物などを「汚染物質、不純物、化学汚染物質」と定義しており、含有禁止物質および含有許可物質とその最大残留基準値を食品の種類別に次の順で提示しています。関連リンクの「その他参考情報」を参照してください。

  1. 食品の汚染物質および不純物リスト
    パート1:食品に含まれてはならない物質リスト
    パート2:食品への含有最大基準が設けられている物質リスト
  2. 食品の化学汚染物質の含有最大基準

なお、2018年9月17日付で、トランス脂肪酸の原因となる部分水素化油脂が「食品の汚染物質および不純物リストパート1:食品に含まれてはならない物質リスト」に加えられたことにより、食品への使用が禁止となりました。クッキーなど、ショートニング、マーガリンなどを使用した商品では特に注意が必要です。

4. 食品添加物

調査時点:2019年7月

菓子は、食品添加物規制の対象となります。カナダでは、使用される添加物についてポジティブリスト制を採用しており、食品医薬品規則-食品添加物(DIVISION 16 - Food Additives)で規制されています。カナダで使用できる食品添加物(着色料含む)のほか、その使用方法および限度量は、カナダ保健省の「許可済み食品添加物リスト」(カナダ保健省 食品添加物について」リンク内)に公開されています。規定量を超える使用、同リストに記載のない食品添加物の使用、規定されている使用法以外の使用を行う場合は、カナダ保健省に事前に申請する必要があります。例えば、日本では使用が認められている次の着色料や保存料はいずれもカナダでの使用は認められていません。

カナダで使用が禁止されている日本の食品添加物例
種類 名称 使用が散見される食品
着色料 紅麹 おかきや煎餅
着色料 クチナシ 羊羹などを含む緑・黄色系食品
保存料 パラオキシ安息香酸(イソプロピル、ブチル、イソブチル) 醤油、蒲焼きソース、かき氷シロップ
(出所:ジェトロ聞き取り調査)

なお、人工着色料の使用にあたってはカナダ保健省からの認定書の取得が義務付けられていましたが、2016年12月14日付で食品医薬品規則が改正され、認定書取得の義務付けが廃止されました。

5. 食品包装規制(食品容器の品質または基準)

調査時点:2019年7月

食品用の容器・包装に関しては、食品医薬品規則-食品包装材(DIVISION 23 Food Packaging Materials)で食品衛生・安全性および品質基準に合致することが求められており、カナダ保健省健康製品食品部食品局(HPFB)およびカナダ食品検査庁が管轄しています。
食品の包装材が安全でかつ食品医薬品規則の品質基準に合致することは食品販売者(製造業者、卸売業者)の責任となっています。2014年7月2日まではカナダ食品検査庁による包装材の安全性評価のための市場導入前審査が義務付けられていましたが、現在は乳児用調製粉乳(フォーミュラ)や新規食品などの一部の食品を除いて行われていません。ただ、企業が希望すれば、HPFBは包装材の審査を行い、審査基準を満たせば同局から使用に異議がない旨の書面「LONO(Letter of No Objection)」の受理が可能です。
なお、カナダ保健省では包装材に使用できる材質のポジティブリストは提示していませんが、生産者へのサービスの一環として、2003年11月1日以降LONOを発行してきたポリマーのポジティブリストを公開しています。

6. ラベル表示

調査時点:2019年7月

カナダの菓子、チョコレート、スナック菓子のラベル表示は、カナダ食品安全法および規則(Safe Food for Canadians Act & Regulations)、食品医薬品法および規則(Food and Drugs Act & Regulations)によって規定されています。

2016年12月14日、食品医薬品規則の栄養ラベル表示、原材料表示および人工着色料の要件変更が施行され、新ラベル表示への移行に5年間の猶予期間が設けられることになりました。猶予期間中は新旧どちらのラベル表示も可能ですが、2021年12月14日以降は、すべての包装済み食品は新規則に準拠しなければなりません。ここでは新規則について概説します。

ラベル表示は、いかなる包装済み商品にも適用される「基本ラベル表示要件(Core Labelling Requirements)」、「強調表示および陳述(Claims and Statements)」の部分と食品分野別に定義される「食品群別ラベル表示要件(Food-Specific Labelling Requirements)」から構成されています。商品に応じてそれぞれの要件に沿った表示が求められ、英語、フランス語による併記が義務付けられています。

基本ラベル表示要件
  1. 2カ国語表記
  2. 品名
  3. 原産国
  4. 日付刻印と貯蔵方法
  5. 事業者名および住所
  6. 照射食品
  7. 読みやすさと表示位置
  8. 原材料表示およびアレルギー源
  9. 容量
  10. 栄養表示
  11. 甘味料
  12. 食品添加物
  13. 強化食品
  14. 等級
  15. 商品認識基準
強調表示および陳述
  1. 広告
  2. アレルギー源およびグルテン
  3. 組成および品質
  4. 健康強調表示
  5. 生産方法
  6. 写真、イラスト、ロゴおよび商標
  7. オーガニック
  8. 原産
  9. 栄養成分
食品群別ラベル表示要件
菓子・チョコレート・スナック類をはじめとして19の食品群別のラベル表示要件が提示されています。菓子・チョコレート・スナック類に特有なラベル表示要件として提示されている項目は次のとおりです。
  1. 品名
  2. 原材料
  3. 容量
  4. ナッツ類の含有率
  5. 栄養表示
  6. 自主的強調表示および陳述
  7. チョコレートのイメージ使用
なお、ラベル表示に関する規則は、2019年1月15日付で施行されたカナダ食品安全規則により、旧加工食品規則(Processed Products Regulations)および消費者包装表示法および規則(Consumer Packaging and Labelling Act & Regulations)の旧食品ラベル要件から統合されました。
カナダ食品安全規則により変更された主要点は次のとおりです。
  1. 「包装済み」(prepackaged)および「消費者向け包装済」(consumer prepackaged)という言葉が新たに定義されました。
    1. 「包装済み」(prepackaged):消費者向けにあらかじめ包装されたものを含め、個人や団体に対して販売される容器包装されたもの。製造業向けやフードサービス向けの商品が該当します。
    2. 「消費者向け包装済み」(consumer prepackaged):個人に対して販売される容器包装されたもの。小売商品が該当します。
    カナダ食品安全規則に統合された乳製品規則および加工食品規則では、prepackagedは小売店舗用販売食品に限定されているのに対し、食品医薬品規則では、prepackaged productは個人や団体に販売される商品と定義されており、整合性を欠いていました。これを是正するため、新規則では定義の統一化が図られています。
    カナダ食品安全規則の要件確認の際には、当該規則が「包装済み」(prepackaged)食品すべてに適用されるものか、あるいは「消費者向け包装済み」(consumer prepackaged)食品のみ、もしくは「包装済みで消費者向け包装済み以外の」(prepackaged other than consumer prepackaged)食品のみに適用されるものかを確認する必要があります。
  2. 消費者保護の観点から、予防管理計画の一部としてラベル表示が正確に行われているかを確認する文書を保管することが求められます。また、トレーサビリティの観点から、ラベルには次の情報掲載が求められます。
    1. 品名(カナダ食品安全規則または食品医薬品規則で定義される名称。あるいはこれらの規則で定義されていない場合には、食品の通称もしくは機能を示す名称。)
    2. 製造事業者もしくは製造委託元事業者の名前および住所
    3. アルファベットや番号で提示されるロット番号(消費者向けにあらかじめ包装された商品のみ)
    ただし、カナダ食品安全規則では規則準拠に関して猶予期間が設けられており、輸入菓子のトレーサビリティについては、2020年7月15日からの準拠が求められています。トレーサビリティに関する詳細は、食品関連の規制「1.食品規格」を参照してください。

7. その他

調査時点:2019年7月

なし