日本からの輸出に関する制度

アルコール飲料の輸入規制、輸入手続き

カナダの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2018年9月

東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、カナダ政府は2011年4~6月にかけて日本からの輸入食品・飼料の定期検査を行うとともに、安全性を証明する書類の提出を求めていましたが、2011年6月13日以降、こうした上乗せ規制は撤廃されており、輸入禁止(停止)は行われていません。

なお、カナダでは輸入業者が直接アルコール飲料を輸入、販売することはできません。アルコール飲料の管理権限は各州政府に与えられています。各州政府はそれぞれアルコール専売公社を設置し、輸入、流通、販売の管理を行っています。詳細は「その他」を参照してください。

2. 施設登録、商品登録、輸入許可等(登録に必要な書類)

調査時点:2018年9月

カナダへの酒類輸入については、アルコール飲料輸入法(Importation of Intoxicating Liquors Act)によって、州政府にその管理権限が与えられており、カナダへの酒類輸入はすべて各州のアルコール飲料専売公社を通じて処理されることが義務付けられています。詳細は「その他」を参照してください。

なお、カナダ食品検査庁(Canadian Food Inspection Agency: CFIA)は2018年6月13日に、2012年施行のカナダ食品安全法(Safe Food for Canadians Act)の下、カナダ食品安全規則の最終版を官報で公示し2019年1月15日の施行となることを発表しました。新規則は食品の種類別に設けられている14の現行規則を統合し、すべての食品にかかわる輸入、輸出、カナダ国内の州間の移動を規制するもので、輸入食品の安全に対する輸入業者の責任の強化、カナダ食品検査庁による輸入業者の把握、安全性に疑いのある輸入品の迅速な確認・対応と当局への連絡などが求められ、当該輸入食品の輸入者はライセンスが必要となります。

ライセンスを得るためには、輸入者は、食品の安全を維持するため、カナダの規制に適合させる行動・方策を示す食品安全予防管理計画(文書)を保持し、トレーサビリティの記録の保管を行わなければなりません。ただし、アルコール飲料については、ライセンス取得、食品安全予防管理計画(文書)の保持、食品予防管理については免除されており、輸入者(すなわち各州政府アルコール専売公社)に対して、トレーサビリティのための記録保管要件のみ適応が求められています。新規則の施行日は2019年1月15日ですが、記録保管の開始には猶予期間が設けられており、2020年7月15日からとなっています。トレーサビリティのための記録保管についての詳細は「食品関連の規制」の「6.その他」(食品安全・衛生規則」を参照してください。

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2018年9月

日本からアルコール飲料を輸出する場合は、植物検疫証明書なしで輸出できます。ただし病害虫(キバチの一種、キクイムシ類、マツノマダラカミキリなど)が梱包材に付着して侵入してくることを防止するため、カナダ食品検査庁では輸入貨物の木材梱包材(クレート、木箱、ダンネージ(荷敷き)、パレット、ケーブルドラム、スプール/リールなど)に、「植物検疫措置に関する国際基準No.15(ISPM No.15)」(以下、国際基準No.15)に沿った消毒処理を要求しています(厚さ6ミリ以下の木材や、プライウッドやパーティクルボード、OSB(雑木破砕接着合板)、ベニヤ板などは対象外)。

カナダでの輸入手続き

1. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2018年9月

カナダ食品検査庁では、同庁ウェブサイトで自動輸入参照システム(Automated Import Reference System)を導入しており、商品ごとに通関時に必要となる書類や情報を公開しています。同ウェブサイトによれば、アルコール飲料の輸入に際してカナダ食品検査庁が特別に提出を求める書類はありません。ただし、各州アルコール飲料専売公社の指定する書類が別途必要になるため、注意が必要です。

2. 輸入時の検査

調査時点:2018年9月

カナダ食品検査庁によるアルコール飲料の食品検査は、カナダ食品検査庁の輸入および製造食品プログラム検査マニュアル(Imported and Manufactured Food Program Inspection Manual)に則って行われます。
加えて、オンタリオ州酒類管理委員会(LCBO)では、商品選定時に品質検査を行うとともに年間を通じてサンプル抜き取り検査を行っています。

3. 販売許可手続き

調査時点:2018年9月

カナダではアルコール飲料の管理権限は各州政府に与えられており、販売は、各州政府のアルコール専売公社および専売公社が許可する販売業者にのみ認められています。詳細は、「その他」を参照してください。

4. その他

調査時点:2018年9月

なし

その他

調査時点:2018年9月

カナダでは輸入業者が直接アルコール飲料を輸入、販売することはできません。アルコール飲料の管理権限は各州政府に与えられています。各州政府はそれぞれアルコール専売公社を設置し、輸入、流通、販売の管理を行っています。輸出者(蔵元など)は原則、公社と売買契約を締結し、公社へ輸出を行います。公社がアルコール飲料の輸入から販売まで大半を独占している州や、小売を民営化している州などビジネスに関与する度合いは州によりさまざまです。取引条件も州により異なります。
公社は輸出者に対して公認の輸入代理店(エージェント)を指定、利用することを推奨しています。エージェントは公社とのやり取りや州内のマーケットを熟知しており、輸出者と連携しながらレストランなどへの営業や日本酒普及のための販促活動を行います。1商品に指定できるエージェントは1社のみ認められています。エージェントは販売量に応じた手数料(コミッション)を輸出者から受け取ります。

主な州の特徴は次のとおりです。

オンタリオ州
アルコール飲料の仕入れ、輸入、在庫管理、配送は、オンタリオ州酒類管理委員会(LCBO)が独占。LCBO指定の船便に載せることを求められる。輸入アルコール飲料の小売販売は、LCBOの直営店舗が独占していたが、最近では一部のスーパーマーケットでビールやワインの販売が認められた。また、日本酒の取扱い数を大幅に増やしたLCBO直営店舗の開店や、インターネット販売が開始されるなど、徐々に消費者の需要や利便性に対応した取り組みが始まっている。
LCBO売上 58億9,000万カナダドル(2016/17)小売店の数 2,702(このうちLCBO直営店および代理店872)
日本酒の販売されている種類 213(出典:LCBOウェブサイト)
日本酒取扱いエージェント数 12(ジェトロ調べ)
日本酒取扱いエージェント業界団体 Sake Institute of Ontario(SIO)
日本酒イベント カンパイトロント(毎年5月末)、Warm Sake(毎年1月)他、輸入エージェントが主催する小イベント多数
ブリティッシュ・コロンビア州
海外からアルコール飲料の仕入れ、輸入、在庫管理、配送は酒類配送局(LDB)が管理。他州のアルコール専売公社に販売も行っている。小売はライセンス小売店(LRS)制度を導入し、一部民営化している。
LDB売上 33億3,150万カナダドル(2016/17)
小売店の数 1,681(このうちLDB直営店および代理店435)
日本酒の販売されている種類 58(出典:LDBウェブサイト)
日本酒取扱いエージェント数 13(ジェトロ調べ)
日本酒取扱いエージェント業界団体 Sake Association of British Columbia(SABC)
日本酒イベント Sake Fest(9月)など
ケベック州
日本酒、蒸留酒の仕入れ、輸入、在庫管理、配送、小売はケベック州酒類管理委員会(SAQ)が独占。基本的にはオンタリオ州と似ているが、大きく異なるのは輸出者がSAQへの配送までを手配すること。また、ワインの小売と、ビールはすべて民間に開放されている。
SAQ売上 31億2,260万カナダドル(2017)
小売店の数 8,336(SAQ直営店および代理店402)
日本酒の販売されている種類 47(出典:SAQウェブサイト)
日本酒取扱いエージェント数 9(ジェトロ調べ)
日本酒取扱いエージェント業界団体 Association Saké Québec (ASQ)
日本酒イベント ジェトロ主催日本酒セミナーなど
アルバータ州
名目上、海外からアルコール飲料の仕入れ、輸入は州公社(AGLC)が行うが、実際の実務は輸入エージェントが担う。在庫管理、配送は州から委託を受けた民間企業が行っており、他州のアルコール専売公社に販売も行っている。小売は完全に民営化している。輸入エージェントはAGLCに販売する製品を登録しなければならない。輸入エージェントは発注、輸送、マーケティングなど販売に関するあらゆる責任を負う。
AGLC売上 25億4,512万カナダドル(2016/17、アルコール飲料部門)
小売店の数 2160
アルバータ州に登録されている日本酒の種類 225(出典:AGLC)
日本酒取扱いエージェント数 7(ジェトロ調べ)
日本酒取扱いエージェント業界団体 Sake Institute of Alberta
日本酒イベント Sake 101(8月)など
マニトバ州
仕入れ、輸入、在庫管理、配送はマニトバ州酒類宝くじ管理局(MBLL)が独占。日本酒、焼酎が販売可能な小売店舗は、MBLL直営店か地方の酒類販売ライセンスをもつ小売店のみ。現状、日本から直接輸入している日本酒、焼酎はなく、アルバータ州やブリティッシュ・コロンビア州、米国から陸送で仕入れている。小規模生産者に対しては利幅が通常より低く設定されており、小売価格を抑えることが可能。日本酒も対象となっている。
MBLL売上 7億7,332万カナダドル(2016/17、アルコール飲料部門)
小売店の数 498(このうちMBLL直営店および代理店235)
日本酒の販売されている種類 1613(出典:MBLL)
日本酒取扱いエージェント数 5社程度(販売されている日本酒の種類からジェトロ推定)
サスカチュワン州
仕入れ、輸入、在庫管理、配送(一部ビールを除く)はサスカチュワン州酒類賭博管理局(SLGA)が独占。小売はSLGA直営店舗が75店あるが、このうち40店を徐々に民営化して いく予定。現状、日本から直接輸入している日本酒、焼酎はなく、アルバータ州やブリティッシュ・コロンビア州から陸送で仕入れている。
SLGA売上 6億3,696万カナダドル(2017、アルコール飲料部門)
小売店の数 754(このうちSLGA直営店および代理店754)
日本酒の販売されている種類 5(出典:SLGA)
日本酒取扱いエージェント数 3社程度(販売されている日本酒の種類からジェトロ推定)
大西洋沿岸(マリタイム)諸州
ノバスコシア州、ニューブランズウィック州、プリンス・エドワード・アイランド州、ニューファンドランド・ラブラドール州では、輸入するアルコール飲料の仕入れ、輸入、在庫管理、配送は各州のアルコール飲料公社が独占。輸入品を運ぶ船会社の委託先は4州でまとめて入札を行い、指定している。小売は公社の直営店舗と地方のエージェンシーストア(民間事業主が運営、ライセンス制)が担っている。現状、日本から直接輸入している日本酒、焼酎はなく、ブリティッシュ・コロンビア州や米国から陸送で仕入れている。また、容器のリサイクルを推進するため、容器に英仏両言語でRefund Policyを明記することが必要。
ノバスコシア州(ノバスコシア州酒類管理委員会、NSLC)
NSLC売上 6億1,185万カナダドル(2017)
日本酒購入量 1,000ケース(2016)
小売店の数 235(このうち、NSLC直営店および代理店164)
日本酒の販売されている種類 6(出典:NSLC)
日本酒取扱いエージェント数 3社程度(販売されている日本酒の種類からジェトロ推定)
ニューブランズウィック州(ニューブランズウィック州酒類管理局、ANBL)
ANBL売上 4億1,512万カナダドル(2016/17)
小売店の数 177(このうち、ANBL直営店および代理店130)
日本酒の販売されている種類 1(出典:ANBL)
日本酒取扱いエージェント数 1社
プリンス・エドワード・アイランド(PEI)州(PEI州アルコール管理委員会、PEILCC)
PEILCC売上 1億801万カナダドル(2016/17)
小売店の数 46(このうち、PEILCC直営店および代理店27)
日本酒の販売されている種類 3(出典:PEILCC)
日本酒取扱いエージェント数 1社
ニューファンドランド・ラブラドール州(ニューファンドランド州アルコール委員会、NLC)
NLC売上 2億6,712万カナダドル(2016/17)
小売店の数 922(このうち、NLC直営店172)
日本酒の販売されている種類 1(出典:NLC)
日本酒取扱いエージェント数 1社