日本からの輸出に関する制度

牛肉の輸入規制、輸入手続き

UAEの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2018年9月

1)放射性物質規制

東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、UAE(ドバイおよびアブダビ両首長国)では、日本産食品の輸入に対して以下のような規制措置がとられています(2018年5月7日以降の措置)。これらの措置は、水産物およびアルコール飲料を除くすべての食品(食品添加物を含む)に適用されるもので、牛肉にも適用されます。

指定地域の福島県で生産・加工された製品または、原料の50%超(主原料)が福島県産(複数の原料を合わせて50%超となる場合を含む)である場合:
輸入時に、放射性物質検査証明の提出が求められます。日本の政府機関が発行する証明書は要しません。UAE(ドバイまたはアブダビ両首長国)側に登録した検査機関で放射性物質検査を行い、その検査結果(英文)を輸出品に添付します。以下の放射性物質基準に適合している場合に輸入が認められます。または、原料の割合や産地が不明な食品の場合、自主的に放射性物質検査を行い、次の基準に適合している場合に輸入が認められます。
  • ヨウ素131:100 Bq/Kg
  • セシウム(セシウム134とセシウム137の合計):1,000 Bq/Kg
両首長国により登録されている検査機関のリストは、農林水産省のウェブサイトに掲載されています。
福島県以外で生産・加工された製品:
従来課されていた、福島県産以外のものであることを証明する産地証明の提出は免除となりました。

2)輸入地域規制

UAEは、イスラエルを原産とする製品およびイスラエルのトレードマークやロゴが付された製品の輸入を禁止しています。また、イスラエルへの輸出を禁止しています。

2017年6月のカタールとの断交以降、カタールとの輸出入は不可となっています(2018年10月現在)。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2018年9月

UAEにおける食品の輸入手続きは、各首長国の税関および食品安全局(Food Safety Department:旧食品管理局)や食品管理庁(Food Control Authority)がその実施を担っています。ドバイ首長国の場合、牛肉を含むすべての食品の輸入に際して、輸入者による食品安全局の食品輸入再輸出システム(FIRS:Food Import Re-Export System)への事前登録が必要となります(輸入者の要件は「輸入手続き」の「3.販売許可手続き」のを参照)。輸入する食品はすべてFIRSの登録分類システムに登録することになっており、輸入者は、輸入前に食品ラベルの評価も実施する必要があります。FIRSへの登録は、ドバイ市政庁E-Governmentを通じて行います。登録と輸入申請のための手順は次のとおりです。

  • 企業の登録:商業ライセンスを持つ輸入者がドバイ市政庁のE-Governmentウェブサイトに登録してアカウントを作成し、その上でFIRSへの登録を行います。
  • 食品の登録とラベル評価手続き:バーコード番号に基づいて輸入する食品をFIRSに登録し、ラベル評価手続きを行います。
  • 食品輸入申請:FIRSの登録分類システムに登録した食品について、FIRSを通じて必要情報を入力し、輸入申請を提出します。手続きが完了すると照会番号が作成され、この番号は港での検査時に必要になります。

2018年2月からUAEの各エミレーツ(首長国)で共通運用する連邦気候変動環境省のポータルサイトであるZad(アラビア語で食品の意)システムの運用が開始され、当面はFIRSシステムと併用されていますが、将来的にZadシステムに一元化される見込みです。システムの内容はFIRSシステムがベースとなっています。

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2018年9月

UAEに日本から牛肉を輸入する場合は、食肉衛生証明書と輸出検疫証明書の発給を受ける必要があります。
食肉衛生証明書は、証明しようとする牛肉が、認定と畜場などで適切に処理され、対UAE輸出が可能なものであることと、ハラールと畜証明書発行機関による証明がなされたものであること(「その他. ハラール認証」を参照)を確認するもので、当該牛肉処理を行った認定と畜場などを管轄する食肉衛生検査所(設置されていない場合はと畜検査を実施している保健所)に発行を申請します。
輸出検疫証明書は、輸出品について家畜の伝染性疾病を広げる恐れのないことを動物検疫所が証明するもので、輸出港を管轄する動物検疫所に輸出検査申請書を提出して検査を受けます。
詳細は関連リンクの農林水産省のウェブサイト「証明書や施設認定の申請」を参照してください。

UAEの食品関連の規制

1. 残留農薬

調査時点:2018年9月

UAEでは、食品中に残留する動物医薬品の最大残留許容量にコーデックス規格を採用し、産業先端技術省(MoIAT)の発行する規格「UAE.S CAC/MRL 2: 2013食品中の動物用医薬品の最大残留許容量(Maximum Residue Limits for Veterinary Drugs in Food)」として定められています。牛肉については、クロルテトラサイクリン(抗生物質)などが対象となっています。UAE規格は、MoIATに登録して購入が可能です。なお、現在UAEが採用しているコーデックス規格は2012年7月時点のもので、最新のコーデックス規格に掲載されているすべての動物用医薬品が対象となるとは限りません(コーデックスでの採択年はオンラインデータベースで確認できます)。

2. 重金属および汚染物質

調査時点:2018年9月

牛肉は、重金属規制等の対象となります。UAEでは、汚染物質と毒素に関する基準として、コーデックス規格を採用し、「UAE.S CAC 193 :2013食品と飼料に含まれる汚染物質と毒素に関する一般基準(General Standard for Contaminants and Toxins in Food and Feed)」として産業先端技術省(MoIAT)がこれを公表しています。また、カドミウムや鉛などの最大許容量に関しては、GCCの標準化機構であるGSOの規格で定められています。
牛肉については、鉛(肉および食用内臓)などについて最大許容量が定められています。アフラトキシンについては、「UAE.S GSO 841 :1997食品と飼料へのマイコトキシンの最大許容量‐アフラトキシン(Maximum Limits Of Mycotoxins Permitted In Foods And Animal Feeds – Aflatoxins)」により食品への最大許容量は、20μg/kg(一部の食品に例外あり)となります。これらの規格は、産業先端技術省(MoIAT)に登録して購入が可能です。

牛肉の重金属最大許容量
重金属の種類 最大許容量(ppm)
0.1 ppm

3. 食品添加物

調査時点:2018年9月

UAEで使用できる食品添加物は、各種規格によって規定されています。コーデックス規格を採用した2013年の「UAE.S CAC 192 : 2013食品添加物の一般基準(General Standard for Food Additives)」のほか、添加物に関しては、「UAE.S 192 : 2016食品への使用が許可される添加物(Additives Permitted for Use in Foodstuffs)」や「UAE.S GSO 707 :1997食品への使用が許可される香料(Flavourings Permitted for Use in Foodstuffs)」などがあります。これらの規格は、産業先端技術省(MoIAT)に登録して購入が可能です。

また、ドバイ首長国の場合、ドバイ市政庁食品安全局(旧食品管理局)による禁止食品添加物と特定品目にのみ許可される着色料のリストがあり、この要件も合わせて適用となります。添加物としての使用禁止物質には次の表の添加物が含まれます。添加物としてアルコールの使用は認められていません。

食品添加物としての使用禁止物質
E 番号 添加物名(英語) 添加物名(日本語)
E-102※1 Tartrazine 黄色4号
E-104 Quinoline Yellow (yellow no.1) キノリンイエロー(黄色1号)
E-105 Fast Yellow AB ファストイエローAB (アゾ色素)
E-107 Yellow 2 G (Food Yellow 5) イエロー2G(食用黄色5号)
E-110※2 Sunset Yellow FCF 黄色5号
E-122※2 Azorubine アゾルビン
E-123 Amaranth (C.1. 16185. FD and C Red 2) アマランス(C.1. 16185. FD and C 赤色2号)
E-124 Ponceau 4 R (Red 2) (CI. 16255) ポンソー 4 R (赤色2号、CI. 16255)
E-129※2 Allura Red AC 赤色40号
E-131 Patent Blue V (C.I. 42051) パテントブルー V (C.I. 42051)
E-142 Green S (Acid Brilliant Green, Food Green S, Lissamine Green, C. 44090) グリーン S (アシッドグリリアントグリーン、フードグリーン S、リサミンクグリーン C. 44090)
E-924 Potassium Bromate (Bread products) 臭素酸カリウム (パン製造時に使用)
E-952 Cyclamate: An artificial intense sweetener with known links to testicular atrophy in rats and monkeys. These links led to cyclamate being banned in the United Kingdom, but European Union legislation allowed cyclamate back into our food and drink. チクロ: 強力な甘味を持つ人工甘味料であり、ネズミおよびサルの動物実験により精巣萎縮と関係があることが知られている。
英国ではチクロの使用を禁止したが、EUではいったん使用禁止にしたものの、食品や飲料へのチクロ使用を再容認している。
E-1510 Ethanol (alcohol) エタノール(アルコール)

4. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2018年9月

UAEでは、牛肉を包む食品用の容器・包装に関する規制は、主に「UAE.S GSO 839 :1997食品包装‐パート1:一般的要件(Food Packages - Part 1: General Requirements)」および、「UAE.S GSO 1863 :2013食品包装 – パート2:プラスチック包装の一般的要件(Food packages - Part 2: Plastic package - General -requirements)」によって定められています。 そのほか、次の規格も適用されます。

  • 「UAE.S 5009 :2009酸化型生分解性プラスチック袋とその他の使い捨てプラスチックの規格と仕様(Standard & Specification For Oxo-Biodegradation Of Plastic Bags And Other Disposable Plastic Objects)」
  • 「UAE.S GSO 1194 :2002食品パッケージに適用されるポリエチレンバッグの検査方法(Methods Of Testing Polyethylene Bags For Food Packaging Applications)」

酸化型生分解性プラスチックの食品包装については、連邦気候変動環境省(MOCCAE)の省令により2014年1月1日からその利用が義務付けられています。さらに産業先端技術省(MoIAT)の首長国適合性認証システム(ECAS)への登録と適合性認証が必要になります。これらの規格は、MoIATで登録して購入が可能です。

5. ラベル表示

調査時点:2018年9月

ラベル表示に関しては、GSO規格である「UAE.S GSO 9 :2013包装食品のラベル表示(Labeling of prepackaged food stuffs)」の要件に従う必要があります。また、各首長国の食品安全局や食品管理庁も食品のラベル表示に関する指針などを定めています。 ドバイ首長国では、輸入前にラベルの承認を受ける必要があり、ラベルに表示しなければならない内容は次のとおりです。食品添加物の表示は、認可物質名または国際番号とその機能の表記が必要です。

  1. ブランド名
  2. 製品名(食品の説明の要約)
  3. 成分(成分を含有重量/容量の大きい順に)
  4. 製造日および消費期限(消費期限または有効期限の表示が免除されている場合を除く)
  5. 製造者、梱包者、販売者、または輸入者名
  6. 正味重量または容量
  7. 原産国(省略すると消費者の混乱や誤解を招く場合)
  8. 製品のバーコード
  9. ロット番号
  10. ラベルの表示言語はアラビア語(最低限2、3、7、11、13、14について。ステッカー貼付でもよい。)
  11. 保管条件(保管条件が製品の有効性に影響する場合)
  12. 過敏症を引き起こす可能性のある成分情報
  13. 使用説明(必要な場合)
  14. 栄養成分

ドバイ首長国ではまた、肉の製造業者および輸入業者に向け、GSO規格(UAE.S GSO 9 :2013)に関連して次の点を順守するよう対外通達が出されています。

  1. 製品の説明を、消費者の誤解を招かない方法で正しく記載すること
  2. 成分のすべてについて、含有重量の割合(パーセンテージ)の大きい順に記載すること
  3. E番号およびその機能を記載すること
  4. アレルゲンを明記すること

このほか、食品のラベル表示に関しては、栄養成分表示の要件や栄養と健康強調表示の要件に関するGSO規格があります。また食品の消費期限の詳細については、「UAE GSO 150 -1:2013食品の消費期限パートI:消費期限の義務(Expiration dates for food products - Part 1 : Mandatory expiration dates)」および「UAE.S GSO 150 -2:2013食品の消費期限パートII:任意の消費期限(Expiration dates for food products - Part 2 : Voluntary expiration dates)」で規定されています。製造年月日と消費期限を食品包装またはラベルに印刷する必要があり、記載方法は次のとおり指定されています。消費期限が3カ月以上の場合は、月と年のみの表示でよいとされています。また、消費期限が3カ月以上の場合、製造日を省略できるルールがありますが、ドバイ首長国のみで通用するルールのため、他首長国への運搬やGCCの他国へ再輸出ができません。製造日を記載することを推奨します。

製造日
P:日/月/年
消費期限
E:日/月/年

6. その他

調査時点:2018年9月

食品安全・衛生規制
UAEでは、牛肉を含む食品は、GCCまたは連邦レベルで規定されている法律や規格、さらに各首長国の規定に従う必要があります。輸入される食品も同様です。
また2016年1月には、連邦レベルの食品安全法(Food Safety Law)が成立しました。同法は、公衆衛生と消費者保護を確保する効果的なシステムの主要要件について定めるもので、食品安全を脅かす違反に対してはより厳しい罰が課されることになりました。
食品安全要件と表示ラベルや消費期限などの規制が順守されているかどうかの監視は、各市政庁が担っています。店舗やレストランなどで抽出検査を実施し、食品の品質を確保しています。ドバイでは、食品安全局(旧食品管理局)が2013年4月に「Food Code」という食品安全全般に関する規定をまとめた文書を公表しています。

UAE内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2018年9月

GCC統一関税法により、UAEに輸入される牛肉のうち、冷凍されたもの(HSコード020110、020120、020130)は5%の対外共通税率が課税されます。生鮮および冷蔵された牛肉(HSコード020210、020220、020230)には関税はかからないことになっていますが、日本からの高額な和牛には税関の担当官の判断で実態的に5%の関税がかけられることがあります。なお、GCC諸国からの輸入品は課税が免除されます。

2. その他の税

調査時点:2018年9月

2018年1月1日からはすべての食品・飲料に一律5%のVATが導入されています。

3. その他

調査時点:2018年9月

なし

その他

調査時点:2018年9月

ハラール認証
UAEでは、動物および家禽類由来の派生品(現状は、牛肉および牛肉派生品に限る)は、ハラール認証を得た認定食肉処理場で加工されたものでなければ、輸入ができません。輸入の際には、ハラールであることを示すハラール証明書が必要になります。食肉以外でも、ハラール認証のない食肉処理場で加工された油脂などの肉の派生品を原材料に含む食品は、輸入ができないため注意が必要です。
ハラール証明書は、輸出国にあるイスラーム団体(Halal Certification Body:HCB)が産業先端技術省(MoIAT)に申請を行い、MoIATの関連組織で、HCBとしての適正を審査し、認可する組織(例:Emirates International Accreditation Center:EIAC)などが認可(Accredit)したHCBのみが発行できます。ハラール証明書は、牛肉輸入時の許可条件の必要書類となっており、2018年8月時点では、宗教法人日本イスラーム文化センター(Japan Islamic Trust)、エミレーツハラールセンター(Emirates Halal Center for Standards & Quality Certificate Corporation)の2カ所が該当します。
UAEでは、特定の場所を除き、国内で流通しているものは原則ハラール食品となっています。そのため、輸入にあたってMoIATが発行するUAEのハラールマークを、肉などを含む食品へ貼付することは許可条件となっておらず、また、UAE国内での販売には特に必要ありません。自社の取引上必要と判断して、ハラールマークを取得する場合は、UAEのハラールマークの取得に関する規制の詳細が、MoIATが2015年4月発行したUAE規格「UAE.S 2055-1:2015ハラール製品-パート1:ハラール食品の一般要件」に定められています。規格は、MoIATで登録して購入が可能です。