日本からの輸出に関する制度

牛肉の輸入規制、輸入手続き

品目の定義

本ページで定義する牛肉のHSコード

HSコード 0201.10~0201.30 :牛の肉(生鮮のものおよび冷蔵したもの)
HSコード 0202.10~0202.30 :牛の肉(冷凍したもの)

HSコードの改定(2017年版)に伴い、例えばドバイ首長国では2017年2月1日付けで新コードに移行しています。

UAEの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2023年7月

1. 放射性物質規制

アラブ首長国連邦(UAE)政府は、2020年12月10日付で東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う日本産食品の輸入規制を撤廃しました。

2. 輸入地域規制

2017年6月のカタールとの断交以降、カタールとの輸出入は不可となっていましたが、2021年1月に開催された第1回湾岸協力会議(Gulf Cooperation Council: GCC)首脳会議でGCCおよびエジプトが「アルウラ声明」に署名し、カタールとの貿易や航空便などの往来も復活しました。これにより、実質的な地域的輸入規制はありません。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2023年7月

1. 施設登録

UAEに輸出される牛肉を取り扱うと畜場および食肉処理場は、ハラールと畜証明書発行機関により承認され、UAE政府から牛肉輸出施設として登録された後、都道府県知事または保健所設置市市長に申請が必要。

2. 輸出事業者登録

輸出する商品のラベルをUAEの管理システムに評価申請・登録する際に、ラベルに製造業者、生産者、卸業者、輸入業者、輸出業者または販売会社の名称と住所が入っている必要があります。

3. 輸出に必要な書類

UAEへの牛肉の輸出において輸出者側で用意すべき書類は次のとおりです:

  1. 荷渡指図書(Derivery Order: D/O)
  2. 船荷証券(Bill of Lading: B/L)
  3. インボイス
  4. パッキングリスト
  5. 原産地証明書
  6. 輸出検疫証明書(動物検疫証明書)
  7. 放射性物質検査証明書(該当する場合)
  8. 衛生証明書(当該牛肉処理を行った認定と畜場などを管轄する食肉衛生検査所、もしくはと畜検査を実施している保健所より食肉衛生証明書を取得する必要があります。その際、ドバイ首長国向けにかぎっては、サイン証明書の書式が規格化されています。様式は農林水産省のウェブサイトから入手してください。)
  9. ハラール証明書(「その他」の記載を参照してください)

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2023年7月

UAEに日本から牛肉を輸入する場合は、食肉衛生証明書と輸出検疫証明書の発給を受ける必要があります。
食肉衛生証明書は、証明しようとする牛肉が、認定と畜場などで適切に処理され、対UAE輸出が可能なものであることと、ハラールと畜証明書発行機関による証明がなされたものであること(「その他」の「ハラール認証」を参照)を確認するものです。当該牛肉処理を行った認定と畜場などを管轄する食肉衛生検査所(設置されていない場合はと畜検査を実施している保健所)に発行を申請します。
輸出検疫証明書は、輸出品について家畜の伝染性疾病を広げる恐れのないことを動物検疫所が証明するもので、輸出港を管轄する動物検疫所に輸出検査申請書を提出して検査を受けます。
詳細は農林水産省のウェブサイト「証明書や施設認定の申請外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の「アラブ首長国連邦向け輸出牛肉の取扱要綱」を参照してください。

UAEの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2023年7月

UAEは、湾岸協力会議(GCC)の標準化機構であるGSOが発行するさまざまな食品の規格(技術規則)を採用しています。UAEに牛肉を輸出する場合には、これらの規格が定める要件を満たす必要があります。

牛肉の規格(技術規則)
牛肉のGSO規格(例) UAEの現行規格
牛肉(生鮮) ・UAE.S GSO 996 : 2016
牛肉(冷凍したもの) ・UAE.S GSO 997 : 2016

関連リンク

関連省庁
産業先端技術省(MoIAT)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※リンクのMOIATの規格購入ページに行っていただき、ページ右部にある虫眼鏡のマークをクリックし、検索窓のうち、"Standard Name"に検索したい食品を英語で記入し、検索してください。
その他参考情報
湾岸協力会議(GCC)標準化機構 GSO 食品規格 牛肉、羊肉、ヤギ肉 (英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(556KB)

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2023年7月

UAEでは、コーデックス規格を採用し、産業先端技術省(MoIAT)の発行規格「UAE.S MRL 1 :2019農産物および食品中の農薬の最大残留許容量(Maximum Residue Limits (MRLs) for Pesticides in agricultural and food products)」で、食品の残留農薬の最大残留許容量について規定しています。規格は、産業先端技術省(MoIAT)のウェブサイトにおいて購入が可能です。
また、UAEでは、食品中に残留する動物医薬品の最大残留許容量についてもコーデックス規格を採用し、産業先端技術省(MoIAT)の発行する規格「UAE.S GSO 2481:2015食品中の動物用医薬品の最大残留許容量(Maximum Residue Limits (MRLs) for Veterinary Drugs in Food)」として定められています。規格は、産業先端技術省(MoIAT)のウェブサイトにおいて購入が可能です。
これに加え、連邦気候変動環境省(MOCCAE)が、省令を通じて禁止または制限農薬のリストを公表しています。省令は随時改正されており、2018の改正省令では、禁止農薬のリストに346種類、制限農薬のリストには36種類、計382種類の農薬が含まれています。

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2023年7月

牛肉は、重金属規制などの対象となります。UAEでは、汚染物質と毒素に関する基準として、コーデックス規格を採用し、「UAE.S CAC 193 :2013食品と飼料に含まれる汚染物質と毒素に関する一般基準(General Standard for Contaminants and Toxins in Food and Feed)」として産業先端技術省(MoIAT)がこれを公表しています。また、カドミウムや鉛などの最大許容量に関しては、GCCの標準化機構であるGSOの規格で定められています。
牛肉については、鉛(肉および食用内臓)などについて最大許容量が定められています。アフラトキシンについては、「食品と飼料へのマイコトキシンの最大許容量‐アフラトキシン(Maximum Limits Of Mycotoxins Permitted In Foods And Animal Feeds – Aflatoxins)」により食品への最大許容量は、20μg/kg(一部の食品に例外あり)となります。これらの規格は、産業先端技術省(MoIAT)のウェブサイトから購入が可能です。

牛肉の重金属最大許容量
重金属の種類 最大許容量(ppm)
0.1 ppm

4. 食品添加物

調査時点:2023年7月

UAEで使用できる食品添加物は、各種規格によって規定されています。コーデックス規格を採用した2013年の「UAE.S CAC 192 : 2013食品添加物の一般基準(General Standard for Food Additives)」のほか、添加物に関しては、「UAE.S 192 : 2016食品への使用が許可される添加物(Additives Permitted for Use in Foodstuffs)」や「UAE.S GSO 707 :1997食品への使用が許可される香料(Flavourings Permitted for Use in Foodstuffs)」などの規格によって規定されています。これらの規格は、産業先端技術省(MoIAT)のウェブサイトから購入が可能です。

また、ドバイ市政庁のウェブサイトによると、「GSFA Online Food Additive Index」および「European Commission Database」に掲載されていない食品添加物については、使用が禁止されているとの記載があります。また、これらの食品添加物については商品ラベルに認可物質名または国際番号とその機能の表記が必要です

ドバイ首長国の場合、ドバイ市政庁食品安全局(旧食品管理局)による禁止食品添加物と、特定品目にのみ許可される着色料のリストが掲載されており、この要件も合わせて適用されます。添加物としての使用禁止物質には次表の添加物が含まれます。また、添加物としてアルコールの使用は認められていません。

食品添加物としての使用禁止物質
E 番号 添加物名(英語) 添加物名(日本語)
E-102※1 Tartrazine 黄色4号
E-104 Quinoline Yellow (yellow no.1) キノリンイエロー(黄色1号)
E-105 Fast Yellow AB ファストイエローAB (アゾ色素)
E-107 Yellow 2 G (Food Yellow 5) イエロー2G(食用黄色5号)
E-110※2 Sunset Yellow FCF 黄色5号
E-122※2 Azorubine アゾルビン
E-123
Amaranth (C.1. 16185. FD and C Red 2) アマランス(C.1. 16185. FD and C 赤色2号)
E-124 Ponceau 4 R (Red 2) (CI. 16255) ポンソー 4 R (赤色2号、CI. 16255)
E-129※2 Allura Red AC 赤色40号
E-131 Patent Blue V (C.I. 42051) パテントブルー V (C.I. 42051)
E-142
Green S (Acid Brilliant Green, Food Green S, Lissamine Green, C. 44090) グリーン S (アシッドグリリアントグリーン、フードグリーン S、リサミンクグリーン C. 44090)
E-924 Potassium Bromate (Bread products) 臭素酸カリウム (パン製造時に使用)
E-952
Cyclamate: An artificial intense sweetener with known links to testicular atrophy in rats and monkeys. These links led to cyclamate being banned in the United Kingdom, but European Union legislation allowed cyclamate back into our food and drink. チクロ: 強力な甘味を持つ人工甘味料であり、ネズミおよびサルの動物実験により精巣萎縮と関係があることが知られている。
英国ではチクロの使用を禁止したが、EUではいったん使用禁止にしたものの、食品や飲料へのチクロ使用を再容認している。
E-1510 Ethanol (alcohol) エタノール(アルコール)

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2023年7月

UAEでは、牛肉を包む食品用の容器・包装に関する規制は、主に「UAE.S GSO 839 :1997食品包装‐パート1:一般的要件(Food packages - Part 1: General requirements)」および、「UAE.S GSO 1863 :2013食品包装 – パート2:プラスチック包装の一般的要件(Food packages - Part 2: Plastic package - General -requirements)」によって定められています。その他、次の規格も適用されます。

  • 「UAE.S 5009 :2009酸化型生分解性プラスチック袋とその他の使い捨てプラスチック製品の規格と仕様(Standard & Specification For Oxo-Biodegradation Of Plastic Bags And Other Disposable Plastic Objects)」
  • 「UAE.S GSO 1194 :2002食品パッケージに適用されるポリエチレンバッグの検査方法(Methods Of Testing Polyethylene Bags For Food Packaging Applications)」

酸化型生分解性プラスチックの食品包装については、連邦気候変動環境省(MOCCAE)の省令により2014年1月1日からその利用が義務付けられています。さらに産業先端技術省(MoIAT)の首長国適合性認証システム(ECAS)への登録と適合性認証が必要になります。これらの規格は、産業先端技術省(MoIAT)で登録して購入が可能です。

6. ラベル表示

調査時点:2023年7月

ラベル表示に関しては、GSO規格である「UAE.S GSO 9 :2013包装食品のラベル表示(Labeling of prepackaged food stuffs)」の要件に従う必要があります。また、各首長国の食品安全局や食品管理庁も食品のラベル表示に関する指針などを定めています。
輸入業者は、入国前に食品ラベルの評価を申請する必要があります。この工程は、UAEの食品規格および規制への適合性を評価するものでZAD(連邦気候変動環境省のポータルサイト)またはZadi(ドバイトレードによる統合食品輸入プラットフォーム)で行うことができます。
英語とアラビア語でラベルに表示しなければならない内容は次のとおりです。食品添加物の表示は、認可物質名または国際番号とその機能の表記が必要です。

  1. 製品名(食品の名前をラベルの目立つ位置に表示)
  2. 原材料(比率の高い順)
  3. 添加物(名称またはE-番号を添加物のグループ名とともに表示)
  4. 栄養成分
  5. 正味重量または容量 ※
  6. 製造業者、生産者、卸業者、輸入業者、輸出業者または販売会社の名称と住所
  7. 原産国
  8. 賞味期限、特別な保管や準備の指示(法令による保存可能期間があるものについては商品と賞味期限を申告すること)
  9. 原材料のアレルギー情報
  10. ロット番号
  11. 動物性油脂の出所(牛肉、水牛など)
  12. 過敏症を引き起こす可能性のある食材および原料
  13. バーコード
  14. 放射線照射済み食品

アラビア語のみのラベルに最低限必要な情報は製品名、原材料、原産国、保存条件(該当する場合)、使用説明書(該当する場合)、栄養情報(該当する場合)。

※GSO ISO 1000の「国際単位」およびUAE.SGSO R87「包装商品の数量」を参照すること。重量はグラム、キログラム、トンでなければならない。液体食品の正味容量はミリリットル、リットルでなければならない。固形食品はメートル法の重量単位、半固形または粘性食品はメートル法の重量単位またはメートル法の容量単位で表示する。

このほか、食品のラベル表示に関しては、栄養成分表示の要件や栄養と健康強調表示の要件に関するGSO規格があります。また食品の消費期限の詳細については、「UAE GSO 150 -1:2013食品の消費期限パートI:消費期限の義務(Expiration dates for food products - Part 1 : Mandatory expiration dates)」および「UAE.S GSO 150 -2:2013食品の消費期限パートII:任意の消費期限(Expiration dates for food products - Part 2 : Voluntary expiration dates)」で規定されています。製造年月日と消費期限を食品包装またはラベルに印刷する必要があり、記載方法は次のとおり指定されています。

製造日
P:日/月/年
消費期限
E:日/月/年

7. その他

調査時点:2023年7月

食品安全・衛生規制
UAEでは、牛肉を含む食品は、GCCまたは連邦レベルで規定されている法律や規格、さらに各首長国の規定に従う必要があります。輸入される食品も同様です。
また2016年1月には、連邦レベルの食品安全法(Food Safety Law)が成立しました。同法は、公衆衛生と消費者保護を確保する効果的なシステムの主要要件について定めるもので、食品安全を脅かす違反に対してはより厳しい罰が課されることになりました。
食品安全要件と表示ラベルや消費期限などの規制が順守されているかどうかの監視は、各市政庁が担っています。店舗やレストランなどで抽出検査を実施し、食品の品質を確保しています。ドバイ首長国では、食品安全局(旧食品管理局)が2020年3月に「Food Code」という食品安全全般に関する規定をまとめた文書を公表しています。

その他

調査時点:2023年7月

ハラール認証
UAEでは、動物および家きん類由来の派生品(現状は、牛肉および牛肉派生品に限る)は、ハラール認証を得た認定食肉処理場で加工されたものでなければ、輸入ができません。輸入の際には、ハラールであることを示すハラール証明書が必要になります。食肉以外でも、ハラール認証のない食肉処理場で加工された油脂などの肉の派生品を原材料に含む食品は、輸入ができないため注意が必要です。
ハラール証明書は、輸出国にあるイスラーム団体(Halal Certification Body:HCB)が産業先端技術省(MoIAT)に申請を行い、産業先端技術省(MoIAT)の関連組織で、HCBとしての適正を審査し、認可する組織(例:Emirates International Accreditation Center:EIAC)などが認可(Accredit)したHCBのみが発行できます。ハラール証明書は、牛肉輸入時の許可条件の必要書類となっており、2023年7月時点では、宗教法人日本イスラーム文化センター(Japan Islamic Trust)、エミレーツハラールセンター(Emirates Halal Center for Standards & Quality Certificate Corporation)、NPO法人日本ハラール協会(Japan Halal Association)、プライムサーティフィケーション&インスペクションカンパニー(Prime Certification & Inspection Company Ltd.) の4カ所が該当します。
UAEでは、特定の場所を除き、国内で流通しているものは原則ハラール食品となっています。そのため、輸入にあたって産業先端技術省(MoIAT)が発行するUAEのハラールマークを、肉などを含む食品へ貼付することは許可条件となっておらず、また、UAE国内での販売には特に必要ありません。自社の取引上必要と判断して、ハラールマークを取得する場合は、UAEのハラールマークの取得に関する規制の詳細が、産業先端技術省(MoIAT)が2015年4月発行したUAE規格「UAE.S 2055-1:2015ハラール製品-パート1:ハラール食品の一般要件」に定められています。規格は産業先端技術省(MoIAT)で登録して購入が可能です。
なお2024年1月時点でのUAE向け輸出に対応している国内のと畜場・食肉処理施設は次の7カ所が該当します。
UAE向け輸出に対応していると畜場・食肉処理施設
施設名称 所在地 と畜場又は食肉処理場 認可自治体
株式会社北海道畜産公社北見工場北見地区総合食肉流通センター 北海道網走郡大空町東藻琴千草72番地の1 と畜場/食肉処理場 北海道
羽曳野市立南食ミートセンター 大阪府羽曳野市向野2丁目4番14号 と畜場 大阪府
埴生ミートパッカー株式会社 食肉処理場
三田食肉センター 兵庫県神戸市北区長尾町宅原11 と畜場/食肉処理場 神戸市
株式会社にし阿波ビーフ 徳島県三好郡東みよし町足代890番地3 と畜場/食肉処理場 徳島県
株式会社熊本中央食肉センター 熊本県宇城市豊野町巣林548番地 と畜場 熊本県
株式会社杉本本店 熊本県宇城市豊野町巣林538番地 食肉処理場