日本からの輸出に関する制度 青果物の輸入規制、輸入手続き

EUの輸入規制

1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)

調査時点:2022年2月

放射性物質規制

これまでEUは、日本から輸出される一部の食品・飼料について、放射性物質検査証明書及び産地証明書を求める措置を講じてきました。輸入規制措置を撤廃する実施規則(EU)2023/1453により、当該規則の施行日である2023年8月3日EU到着分から、これら証明書の添付が不要となります。なお、本規則は北アイルランドにも同様に適用されます。

植物防疫規則

EUでは、規則 (EU) No 2016/2031ならびに、理事会実施規則(EU)2018/2019および理事会実施規則(EU)2019/2072により植物検疫に関する規則が定められており、実施規則(EU)2018/2019のANNEXおよび実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VIにEUへの輸入が禁止される植物、植物製品などのリストが、実施規則(EU) 2019/2072のANNEX IXに保護ゾーンへの輸入が禁止される植物、植物製品などのリストが規定されています。(一部移行措置として指令2000/29/ECが延長されている項目もあります)。

実施規則(EU)2019/2072のANNEX VIに記載されている、ばれいしょの塊茎(CNコード0701 10 00)などは輸入が禁止されています。青果(果実)や種子は対象外ですが、かんきつ(みかん)属、きんかん属、カラタチ属およびこれらの交配種の植物の輸入は禁止されています。このため、葉や土がついたかんきつ類をEUに輸入することはできません。さらに、実施規則(EU)No 2018/2019 ANNEX Iに規定されているニガウリなどのツルレイシ属(Momordica sp.)の果実(CNコード 07 09 99090)は、個人消費用の手荷物を含め、EUへの輸入が禁止されています。
さらに、かんきつ類を含む、実施規則(EU)2019/2072のANNEX VIIに記載される一部の青果は、輸出前に栽培地検査など特別な要件が求められます。詳細は、「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」を参照してください。

また、土壌や有機物を含む培養資材(未使用のピートやココヤシ繊維を除く)のEUへの輸入も禁止されています。輸入が許可される培養資材にかかる要件は、植物防疫規則の実施規則(EU) 2019/2072のANNEX VIIに規定されています。

衛生認定施設要件

また、EUの食品衛生にかかる制度の枠組みの中で、委任規則(EU) 2019/625第5条の規定のとおり、次のCNコード07類の一部のスプラウト(新芽野菜、発芽野菜)はEU の衛生認定施設(EU HACCP要件)由来のものでないとEUへ輸出できません(規則(EU) 210/2013および規則(EC) No 852/2004)。証明様式は委任規則(EU) 2020/2235ANNEXIII 第51章に規定されています。

(EU HACCP)衛生認定施設での栽培が条件となるスプラウト
CNコード 品目
0704 90 ブロッコリー・カリフラワー・メキャベツを除く生鮮または冷蔵の0704類(あぶらな属)の野菜。キャベツ、赤キャベツ、コールラビ―、ケールなど
0706 90 にんじん ・かぶを除く生鮮または冷蔵の0706類。ダイコン、セルリアック(根セロリ)、ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)、ビーツの葉など
0708 10 殻有無を問わず生鮮または冷蔵のエンドウ豆(Pisum sativum)
0708 20 殻有無を問わず生鮮または冷蔵のササゲ属(Vigna spp.,) とインゲンマメ属(Phaseolus spp.)ジュウロクササゲ、サヤインゲンなど
0708 90 殻の有無を問わず上記以外の生鮮または冷蔵のマメ科野菜
1214 90 ムラサキウマゴヤ(アルファルファ)を除く、ルタバガ(スウェーデンカブ)、フダンソウ(葉菜)、クローバー、イガマメ(サインフォイン)、ルピナス、ソラマメ属、ケール、干し草、その他の飼料用の根菜など

ササゲ属のスプラウトは一部もやしとして栽培されているため注意が必要です。ただし、殻から取り出されて乾燥した状態の豆類(HSコード0713類)には認定施設要件は課されませんが、公的書類(衛生証明書など)が必要とされます。2022年2月現在、日本国内で前述のスプラウトのEU 向け輸出認定施設は未整備のため、かいわれ大根やからし菜・わさび菜スプラウトはEUへ輸出できません。

※本項以降では、EU規制に加え、主要EU加盟国がEU規制に上乗せで定めている独自規制についても言及していますが、これは、ジェトロで把握できた範囲において言及しているものであり、各国の独自規制を網羅しているものではありません。また、各項目で明示的な言及がない国については、記載できる情報がないということであり、独自規制が存在しないということではありません。

2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)

調査時点:2022年2月

生産園地登録と栽培地検査合格証
生産園地登録や栽培地検査など一部の青果の輸入に課される特別な要件は、(EU)2019/2072のANNEX VIIに記載されており、次の青果は同規則に規定される特別な要件を満たした場合にEUへ輸出することが可能です。
表 1特別な条件を求められる青果物(一部)
CNコード 学名 和名(仮)
12 0706 10 00
0706 90 10
0706 90 30
0706 90 90 他
ジャガイモ以外の根菜類・塊茎野菜(土の付着が重量の 1%未満であること)
14- 17 0701 10 00
0701 90 10
0701 90 50
0701 90 90
Tubers of Solanum tuberosum L., ジャガイモ
57- 61 0805 10 22
0805 10 24
0805 10 28 他
Citrus L., Fortunella Swingle, Poncirus Raf.,
Microcitrus Swingle,
Naringi Adans., Swinglea Merr.,
カンキツ属・キンカン属・カラタチ属・(一部ミクロシトラス属、ナリンギ属、スウィングレア属)の果実およびこれらの交配種 (ビターオレンジCitrus aurantium L. タヒチライムCitrus latifolia Tanakaを除く)
61- 63 0809 10 00
0809 21 00
0809 29 00
0809 30 10, 30 900809 40 05, 40 90他
Mangifera L.
Prunus L.
マンゴー属・スモモ属(別名サクラ属)の果実
64- 66 0808 10 10
0808 10 80
0808 30 10
0808 30 90
Malus Mill
Pyrus L.
リンゴ属・ナシ属
68- 70 0702 00 00
0709 30 00
Solanaceae
Solanum melongena L.
Solanum aethiopicum L.
Solanum lycopersicum L
ナス科・ナス・ジロ(ナス属)・トマトの果実
71 ex 0709 99 90 他 Momordica L. ツルレイシ属の果実(ニガウリなど)
68 0709 60 91
ex 0709 60 10
ex 0709 60 95
ex 0709 60 99他
Capsicum annuum L., トウガラシ属の果実

規則(EU)2019/2072のANNEX VIIの第57項~第61項のとおり、定義品目のかんきつ属(Citrus spp.)を含め、きんかん属(Fortunella spp.) 、カラタチ属(Poncirus spp.) 一部ミクロシトラス属(Microcitus spp.)、ナリンギ属(Naringi spp.)、スウィングレア属(Swinglea spp.)およびこれらの交配種の青果をEUに輸出するには、生産樹園地でカンキツかいよう病(Xanthomonas citri pv.)やミカンバエ(Tephritidae)、かんきつ斑点病菌(Pseudocercospora angolensis)など第57項~第61項に記載されている病害虫が発生していないことを証明する必要があります。このために、

  1. 防除暦などを踏まえた適切な病害虫防除および園地管理が行われることを条件に、生産園地登録を毎年3月末までに申請し、
  2. 同様に、生産園地と同一の都道府県に所在する、選果、果実の表面殺菌および梱包を行う選果梱包施設も毎年3月末までに登録する
  3. 日本の植物防疫所による生産園地の栽培地検査を受ける
    ・生果実調査(収穫後3カ月間に毎月1回)
    ・トラップ調査(5/1~10/31)
  4. 輸出植物検査を植物防疫所に申請を行い、選果および果実の表面殺菌を行った後、
  5. 輸出検査に合格すると栽培地検査合格証が発給されます。

輸出検査の詳細は、次項「3.動植物検疫の有無」および農林水産省「EU加盟国向け日本産かんきつ生果実の輸出検疫条件の概要」でも確認することができます。
その他、サクランボ、ナシ属、リンゴ属、カンキツ属、ナス、トウガラシ属など輸入条件の内容は、輸出国における病害虫の発生状況によって異なってくること、輸出する際に適用される具体的な栽培条件について、品目によっては、条件を事業者レベルで満たすことが不可能な場合もあるため、日本の植物防疫所に確認してください。

衛生認定施設要件
その他、本サイト対象品目には関連しませんが、輸入規制「1.輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」に記載のとおり、委任規則(EU)2019/625により、一部の根菜や食用スプラウト(新芽・もやしなど)はEUへの輸出が認められた認定施設からの由来である必要があります。2022年2月現在、前述のスプラウトのEU 向け輸出認定施設は未整備のため、EUへ輸出できないため留意が必要です。
植物検疫証明書の取得
新植物衛生の公的管理制度により、実施指令(EU)No 2019/2072 ANNEX XI Part Cに記載されるパイナップル、ココヤシ、ドリアン、バナナおよびナツメヤシの果実を除き、同規則ANNEX XI Part AおよびPart Bに記載されるすべての果実・植物・植物製品は、旅行者の手荷物を含め、日本の植物防疫所が発行する植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)の添付が必要になります。詳細は「3. 動植物検疫の有無」を参照してください。
適合証明書
EU規制においては、野菜および果物が満たすべき品質などの一般販売基準(GMS)または特定販売基準が定められています(規則(EU) No 1308/2013)。このため、産業加工用、皮をむいたカットフルーツ、動物用肥料、個人消費、ナッツ類やかんきつ類のドライフルーツなどを除き、輸入される野菜または果物もEUの販売基準に適合している必要があります。b 青果物が、関連販売基準に適合している旨の証明書(欧州委員会実施規則(EU)No 543/2011 Annex IIIに規定の証明書。以下「適合証明書」)の提出が求められます。
日本はEU輸入前に実施する適合性検査の第三国のリストに掲載されていないため、適合証明書をEU側で取得する必要があります。日本で発行された品質証明書などは通関における適合証明書としてはみなされません。詳細は、「輸入手続き」の「1.施設登録、商品登録、輸入ライセンス等(登録に必要な書類)」を参照してください(輸入バナナについては別規定があります)。
適合証明書に必要な青果の規格の詳細については、食品関連の規制「1.食品規格」の項を参照してください。
インボイス
欧州委員会実施規則 (EU) No 543/2011第5条により、インボイスなどの添付書類には商品の名称および原産国を明示し、さらにレモン、マンダリンオレンジ、うんしゅうみかん、クレメンタイン、通常のマンダリン、タンジェリン、およびこれらの交配種、オレンジなどのかんきつ類に関しては、特定販売基準で要求されている等級、品種、市販用か産業加工用「products intended for processing」か、を明示する必要があります(ただし、消費者に渡すレシートへの明記は必要とされていません)。詳細は「食品関連の規制」の「1.食品規格」を参照してください。
原産地証明書
日EU経済連携協定(以下「日EU・EPA」)に基づく特恵税率の適用を受けるためには、当該輸出品の原産地が日本である旨を証明する原産地証明が必要となりますが、日EU・EPAでは、自己申告による原産地証明制度が採用されており、輸出者、輸入者または通関業者のいずれかが、自ら原産地を証明することになります。書式に関しては税関のウェブサイトで確認することができます。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 食品・農業・漁業外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 植物・植物製品(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
植物防疫所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EU)No 1308/2013(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 543/2011(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 2016/1237(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
指令2000/29/EC(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU)2019/2072(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
委任規則(EU)2019/625(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
植物防疫所 EU加盟国向け日本産カンキツ生果実の輸出検疫条件の概要PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(202 KB)
税関原産地規則ポータル「原産地証明手続」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
税関 原産地規則ポータル外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
税関 EPA原産地規則マニュアルPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1.7 MB)
欧州委員会 税制・関税同盟「日本」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 日EU・EPAガイダンス「特恵の要求、確認および否認」(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(545KB)
欧州委員会日EU・EPAガイダンス「原産地に関する申告」(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(481KB)
ジェトロ「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)ガイダンス要求、確認および特恵の否認(2019年12月更新版)(ジェトロ仮訳)」PDFファイル(722KB)
ジェトロ「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の協定(日EU・EPA)ガイダンス原産地に関する申告(ジェトロ仮訳)」PDFファイル(711KB)

3. 動植物検疫の有無

調査時点:2022年2月

EUの要請による緊急措置

EUの植物防疫状況により、当該病害虫の未発生国であっても、実施規則などにより、日本を含む第三国に特別な緊急措置を要求する場合があります。最新の情報は必ず、植物防疫所のウェブサイトで確認してください

植物検疫証明書の取得

新植物衛生の公的管理制度により、実施指令(EU)No 2019/2072 ANNEX XI Part Cに記載されているパイナップル、ココヤシ、ドリアン、バナナおよびナツメヤシを除き、同規則ANNEX XI Part A およびPart Bに記載されるすべての果物・植物・その他の植物製品の輸出には、植物防疫所が発行する植物検疫証明書(Phytosanitary Certificate)の添付が必要となります。植物検疫証明書は、日本の植物防疫所が発行するため、輸出前に最寄りの植物防疫所で輸出検査をする必要があります。EUが植物検疫証明書に求める記載事項は規則(EU)2016/2031 第76条およびANNEX Vに記載されています。

表 2 ANNEX XI Part Aに記載される植物検疫証明書を要求される果実と根菜(一部)
CNコード 掲載されている学名 和名(仮)
0706 10 00
0706 90 の一部
ex 0714の一部
ex 0910 11 00
ex 0910 30 00
ex 0910 99 91
ex 1212 91 80
ex 1212 94 00
ex 1212 99 95
生鮮、冷蔵の根・塊茎野菜(土の付着が重量の 1%未満) にんじん、かぶ、サラダ用ビート、セイヨウゴボウ、セレリアック、大根および同様の食用の根菜、 キャッサバ、アロールート(クズウコン)、サレップ、キクイモ、サツマイモ、およびデンプンまたはイヌリンの含有量が高い同様の根菜と塊茎(凍結、乾燥、スライスまたは粒状でない)、 サフラン、ターメリック(クルクマ)、その他根・塊茎野菜のスパイス(乾燥したものを除く) 甜菜(ビート)(粉状でない)、チコリー その他生鮮、冷蔵の根菜・塊茎植物
0701 90 10
0701 90 50
0701 90 90
0805 10 の一部
ex 0709 99 90 他
0702 00 00
0709の一部
ex 0810 90 75他
Tubers of Solanum tuberosum L.,
Citrus L., Fortunella Swingle,
Poncirus Raf.,
Microcitrus Swingle,
Naringi Adans., Swinglea Merr.,
Momordica L.
Solanaceae Juss.
ジャガイモ ミカン属、カンキツ属・キンカン属・カラタチ属・(一部ミクロシトラス属、ナリンギ属、スウィングレア属)およびこれらの交配種 ツルレイシ属(ニガウリなど) ナス科(ナス・ジロ(ナス属)・トマト、トウガラシ属を含む)の果実
ex 0804 の一部
0806 10 の一部
0807 20 00
0808 の一部
0809 の一部
0810 の一部
Actinidia Lindl.,
Annona L.,
Carica papaya L., Cydonia Mill.,
Diospyros L.,
Fragaria L.,
Malus L.,
Mangifera L.,
Passiflora L.,
Persea americana Mill., Prunus L.,
Psidium L.,
Pyrus L.,
Ribes L.,
Rubus L.,
Syzygium Gaertn., Vaccinium L.,
Vitis L.
マタタビ属(キウイフルーツなど)・バンレイシ属・メロン・スイカ・パパイア属・マルメロ(セイヨウカリン)・カキノキ属(カキなど)・オランダイチゴ属・リンゴ属・マンゴー属・トケイソウ属(パッションフルーツ・グラナディラ)・ワニナシ属 (アボカドなど) ・スモモ属(アプリコット、さくらんぼ、桃を含む)・バンジロウ属(グァバ)・ナシ属・スグリ属・キイチゴ属・フトモモ属・スノキ属(ブラックベリー・ブルーベリー・クランベリーなど)の果実

本リストにはりん茎、球根、生きた部分が付着する青果や育苗資材に植えられた食用の葉野菜や「植物」は含まれません。栽培用でない果実や野菜であってもPart Bに記載される07類08類の「青果」も植物検疫証明書は要求されます。必ず最新版(All consolidated)の同規則のANNEX XI Part A およびPart Bを確認するようにしてください。

なお、規則 (EU)2016/2031第2条の定義のとおり、「植物」とは、「生きた植物(の全体)」か、播種用の種子、植物学的な意味での果実、野菜、切り花などの「生きた植物の特定の一部」を意味しており、野菜や果実であっても冷凍、乾燥、加熱、調味などの加工処理がなされて「生きていない」もの、一般的には野菜と認識されていても生物学上の「植物」ではないキノコ類(菌類)などは、該当しません。一方で、果実に葉や果柄がついている場合は「植物」とみなされるため注意が必要です。また、同規則では「植物由来の未加工製品または加工済みであっても病害虫の拡散のリスクがあるもの」を「植物製品」と定義づけています。

特別な条件を求められる青果物

本稿対象品目のかんきつ類の青果は(EU)2019/2072のANNEX VII第57項に基づき、花柄や葉が付着しておらず、梱包に原産地が表示されていることが求められます。

なお、「2.施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)」で説明のとおり、本稿対象品目のかんきつ類の青果は、実施規則(EU)2019/2072の ANNEX VII 第57項~第61項に記載の特定の条件を満たす旨が植物検疫証明書に記載されていることが求められます。
このため、

  1. 防除暦などを踏まえた適切な病害虫防除および園地管理が行われることを条件に、生産園地登録を毎年3月末までに申請し、
  2. 同様に、生産園地と同一の都道府県に所在する、選果、果実の表面殺菌および梱包を行う選果梱包施設も毎年3月末までに登録する。
  3. 日本の植物防疫所による生産園地の栽培地検査を受ける。
    ・生果実調査(収穫後3カ月間に毎月1回)
    ・トラップ調査(5/1~10/31)
  4. 輸出植物検査を植物防疫所に申請を行い、選果および果実の表面殺菌を行った後、
  5. 次の輸出検査に合格すると栽培地検査合格証が発給されます。

かんきつ類の輸出検査

植物防疫所は輸出検査で次の項目について確認します。

  1. EUの検疫対象病害虫の付着がないこと。(カンキツかいよう病(Xanthomonas citri pv.)やミカンバエ(Tephritidae)、かんきつ斑点病菌(Pseudocercospora angolensis)、カンキツ黒星病(Phyllosticta citricarpa)など)特にミカンバエ、カンキツかいよう病
  2. 果実に果柄または葉が付着していない
  3. EUに事前通知された適切な処置方法(有効塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液への2分間の浸漬、または、85ppmの過酢酸水溶液への1分間の浸漬による果実の表面殺菌)が施されていること
  4. 梱包は開口部のない未使用のものであること。通気孔がある場合には、ミカンバエの汚染防止措置がとられていること
  5. 梱包に原産地(国および生産都道府県)の表示が行われていること

などの特定要件が植物検疫証明書の『Additional declaration(追加申告)』に記載されている必要があります。

輸出貨物は、植物衛生証明書の発給から14日以内に発送されなければなりません。日本からEUへ輸出する場合の検疫証明書の様式モデルは(EU)No2016/2031 ANNEX V Part A に記載されています。

なお、本項目に関して、主要加盟国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ)において、EU規制に上乗せで課される独自規制は確認されていませんが、国によってEU規制の運用が異なる場合があることに留意が必要です。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 食品・農業・漁業(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 植物・植物製品(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
植物防疫所外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則 (EU) No 2016/2031(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施指令 (EU) 2019/523 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU)2019/2072(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
植物防疫所 輸入規則等詳細情報 欧州連合(EU)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
植物防疫所 EU加盟国向け日本産カンキツ生果実の輸出検疫条件の概要PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(202 KB)
欧州委員会EU新植物検疫規則について(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

EUの食品関連の規制

1. 食品規格

調査時点:2022年2月

果物と野菜の一般販売基準(GMS)

EUでは、EU市場に上市されるすべての製品に対して同水準の品質を保証するという観点から、消費者に新鮮な状態で供給される農産物や水産物を中心に取引規格(marketing standard)が定められています。定義品目であるかんきつ類については、欧州議会・理事会規則(EU)No 1308/2013により取引規格が定められています。

国連欧州経済委員会(UN/ECE)新基準に合わせ、実施規則(EU)543/2011を改正する欧州委員会委任規則(EU)2019/428により一部の例外を除き、果物と野菜の一般販売基準(GMS)が定められています。 UN/ECE新基準に商品が準拠していることが証明できる場合は、一般販売基準(GMS)に適合するものとみなされます。出荷後の段階にあっては、軽度の鮮度の欠如や成長の原因による軽微な劣化は許容されます。(「特級」を除く)

一般販売基準

一般販売基準は、調製および包装を経た果物および野菜の品質要件を規定することを目的として、次の要件が定められています。

  • 無傷であること。
  • 傷んでいないこと。腐敗または品質の劣化による影響で消費に不適切になった商品は、除去される。
  • 清潔であり、視認できる異物が実質的に混入していないこと。
  • 害虫が実質的に混入していないこと。
  • 果肉が害虫の影響で損傷していないこと。
  • 外側に異常な水滴が付いていないこと。
  • 異味または異臭がないこと。
  • 商品は、次の条件に耐える状態でなければならない。
    • 輸送および取り扱いに耐えられること。
    • 良好な状態で目的地に到着すること。

熟度に関して、十分に成長している必要があるが、過度に成長していてはならないこと、果物は、十分に成熟している必要があるが、過熟していてはならないこと、商品は成熟の過程を経て良好な熟度に達することができなければならないことが求められます。

各ロットにつき品質にかかる許容範囲は数量または重量の10 %まで、腐敗に関しては当該許容範囲の2%未満となります。

なお、正味重量が5kg以下であり、異なる果物もしくは野菜またはその両方を含む「混合品」の包装物品の販売は、食品の品質が均一であり、各食品が関連の特定販売基準または、食品に特定販売基準がない場合は、一般販売基準に準拠していること、さらに、規則(EU)2019/428に従い包装に適切なラベルが貼付されており、当該混合品が消費者の誤解を招く性質のものでないことが求められます。
詳細は「5.食品包装材」および「6.ラベル表示」で確認してください。

「一般販売基準規則」対象外の果物と野菜

産業加工用(加工用と明記されている)、皮をむいたカットフルーツ、動物用肥料(飼料用と明記されている)、個人消費、トリミングまたはカットされて「調理済み食品」または「調理キット」になっている商品、その他次のナッツ類やかんきつ類のドライフルーツなどは適用除外とされます。これらの場合「products intended for processing」 または 「for animal feed」と明記する必要があります。

  1. 野生のキノコ類(CNコード0709 59)
  2. ケイパー(CNコード0709 90 40)
  3. ビターアーモンド(CNコード0802 11 10)
  4. 殻むきアーモンド(CNコード0802 12)
  5. 殻むきヘーゼルナッツ(CNコード0802 22)
  6. 殻むきクルミ(CNコード0802 32)
  7. 松の実(CNコード0802 90 50)
  8. ピスタチオ(CNコード0802 50 00)
  9. マカダミアナッツ(CNコード0802 60 00)
  10. ペカンナッツ(CNコード0802 90 20)
  11. ほかの種実類(CNコード0802 90 85)
  12. プランテンを乾燥させたもの(CNコード0803 00 90)
  13. かんきつ類を乾燥させたもの(CNコード0805)
  14. トロピカルナッツ類を混合させたもの(CNコード0813 50 31)
  15. その他のナッツ類を混合させたもの(CNコード0813 50 39)
  16. サフラン(CNコード0910 20)

特定販売基準

さらに、10種類の青果に関しては、特定販売基準が定められています。
「特定販売基準」の対象となる青果は次のとおりです。

  • リンゴ
  • レタス、巻き葉および広葉のアンディーブ
  • イチゴ
  • トマト
  • かんきつ類
  • 桃およびネクタリン
  • パプリカ
  • キウイフルーツ
  • 洋梨
  • 生食用ブドウ

「かんきつ類」の特定販売基準

規則(EU) 543/2011のANNEX I(Appendix)に掲載のとおり、次のかんきつ類は特別な販売基準が定められています(ただし、かんきつ類のドライフルーツ、産業加工用は除く)。これらは、前述の一般条件にさらに、「押し傷または広範囲に渡る傷跡がないこと」「しわまたは乾燥の兆候がないこと」「低温または氷点下の影響で損傷していないこと」という条件が追加されます。

レモン種(Citrus limon (L.) Burm. f.)およびその交配種を生育させたレモン類 マンダリンオレンジ(Citrus reticulata Blanco)、うんしゅうミカン(Citrus unshiu Marcow)、クレメンタイン(Citrus clementina hort. ex Tanaka)、地中海マンダリン(Citrus deliciosa Ten.)、タンジェリン(Citrus tangerina Tanaka)を含むマンダリン(ミカン類)に属する種およびこれらの交配種を生育させたもの オレンジ(Citrus sinensis (L.) Osbeck)という種およびその交配種を生育させたオレンジ類

うんしゅうみかん、クレメンタイン、その他マンダリン品種およびその交配種に関する特定販売基準は次のとおりです。なお、かんきつ類の成熟度は、最小果汁含有率、最小糖酸比、色合いの要因で決定されます。

かんきつ類に関する特定販売基準
最小果汁含有率
(パーセント)
最小糖酸比 色合い
うんしゅうみかん 33 6.5:1 少なくとも果物表面の3分の1は、品種の典型的な色でなければならない
クレメンタイン 40 7.0:1
他のマンダリン品種およびそれらの交配種 33 7.5:1(1)

(1) マンドラ(Mandora)およびミネオラ(Minneola)という品種の最小糖酸比については、2023年1月1日に開始する販売年度が終了するまで6.0:1とする。

かんきつ類の品質は、「特上」級、「等級I」「等級II」の3種類の等級に分類され、形や色合いの欠陥に関して細かく定義されており、許容範囲の比率も定められています。

うんしゅうみかん、ほかのマンダリン品種および交配種に適用される最低サイズは、直径45 mm、クレメンタインは35mmと定められており、果物の横断面の最大直径または個数で決定されます。サイズの均一性を図るため、同じ包装におけるサイズの個体差は最小の果物の直径(包装に表示されているもの)が60 mm未満の場合は10mmを、最小の直径が60mm以上80mm未満の場合は15mmを、最小の直径が80mm以上110 mm未満の場合は20mmを超えてはならないとされています。

サイズコードを適用する場合、次の表にあるコードおよび範囲を順守する必要があります。

かんきつ類のサイズコード
サイズコード 直径(mm)
うんしゅうみかん、クレメンタイン、他のマンダリン品種およびその交配種 1 – XXX
1 – XX
1 または 1 – X
2
3
4
5
6 *1
7
8
9
10
78以上
67 – 78
63 – 74
58 – 69
54 – 64
50 – 60
46 – 56
43 – 52
41 – 48
39 – 46
37 – 44
35 - 42

*1 ただし、45 mm未満はクレメンタインにのみ適用されます。

関連リンク

関係省庁
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※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。

2. 残留農薬および動物用医薬品

調査時点:2022年2月

EUでは、使用可能な農薬について、ポジティブリスト制を採用しており、食品の種類ごとに、許容される残留農薬の上限量値(Maximum Residue Limit、MRL)が規定されています(欧州議会・理事会規則(EC)No 396/2005)。MRLは、当該食品1キログラム当たりに許容される農薬量(mg/kg)として示され、MRLが設定されていない農薬と食品の組み合わせに対しては、一律0.01mg/kgの上限値が適用されます。
すべての食品に対するMRLは、「EU農薬データベース」で検索可能です。データベースは科学的評価に基づき更新されるため、随時確認する必要があります。
例えば、かんきつ類などに使用されている活性成分イプロジオン(iprodione) はEUでの登録が撤回されたことに伴い、2019年7月31日から、かんきつ類のMRLは0.01mg/kgに引き下げられています。詳細は、関連リンクにあるジェトロレポート「EU 農薬登録規則改正が輸出に与える影響」を参照してください。

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その他参考情報
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EU農薬データベース(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ EUにおける残留農薬に関する規制(2015年2月)
農林水産省 諸外国における残留農薬基準値に関する情報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「EU 農薬登録規則改正が輸出に与える影響」調査 報告書

3. 重金属および汚染物質

調査時点:2022年2月

EUでは、欧州委員会規則(EC)1881/2006で食品カテゴリーごとに含まれる汚染物質の上限値を規定しています。ここでの「汚染物質」とは、意図的に食品に添加されたものではなく、食品の生産(作物管理、畜産、獣医療における作業を含む)、製造、加工、調理、処理、包装、梱包、輸送および保管などのプロセスまたは生育環境に由来して、食品中に存在する物質をいいます(欧州理事会規則 (EEC) No315/93 第 1条(1))。これらの最大規定値を超えるものは原材料としても使用できないとされているため、(規則(EC)1881/2006第3条)注意してください。
なお、青果には直接関連しませんが、規則(EC)No 1881/2006を改正する規則(EU) 2021/1323および規則(EU) 2021/1317により、2021年8月31日から「カドミウム」や「鉛」の上限値や対象品目が一部変更となると同時に、新たに「塩」「香辛料・スパイス」に含まれるカドミウムと鉛の基準値が設定されています。
本サイト対象品目の汚染物質の上限を参考として次のリストにまとめていますが、網羅版ではないため、必ず規則の最新版を確認するようにしてください。

汚染物質の上限値(生鮮のごぼう、わさび、山芋を含むその他の根菜)
物質名 上限値 対象品目
0.1mg/kg 塊茎類・りん茎類・根茎類、地下茎を含む根菜(生鮮のセイヨウゴボウ、しょうが、ウコンを除く)、キャベツ、コールラビ、アブラナ属果菜類(ブロッコリ、カリフラワーなど)、豆類
0.3mg/kg アブラナ科葉茎菜類、セイヨウゴボウ、一部のキノコ(マッシュルーム、ヒラタケ、しいたけ)、生ハーブを除く葉野菜、
カドミウム 0.1mg/kg 下記※を除く葉茎菜類、塊茎類、根菜、
0.020 mg/kg ラディッシュ・ダイコン※
0.050 mg/kg 熱帯地方の根・塊茎菜、根パセリ、カブ※
0.060 mg/kg ビーツ※
0.15 mg/kg セルリアック※
0.20 mg/kg 西洋わさび、パースニップ(シロにんじん)、セイヨウゴボウ※
0.030 mg/kg ニンニク以外のりん茎類
0.050 mg/kg ニンニク
0.020 mg/kg ナス以外の果菜類
0.030 mg/kg ナス
0.040 mg/kg アブラナ科葉茎菜類を除くアブラナ科果菜類
0.1 mg/kg アブラナ科葉茎菜類
0.1 mg/kg 上記以外の葉茎菜類
メラミン 2.5mg/kg 乳児用調製粉乳および乳児用栄養補給調整食品を除くすべての食品
過塩素酸イオン 0.05mg/kg 下記以外の野菜と青果
0.10mg/kg ウリ科・ケール(リョクヨウカンラン)
0.50mg/kg 葉菜類・ハーブ類
0.01mg/kg 乳児用向け調理済み食品
汚染物質の上限値(かんきつ類の青果)
物質名 上限値 対象品目
0.1mg/kg クランベリー、フサスグリ、エルダーベリー、イチゴを除く果実
カドミウム 0.020 mg/kg かんきつ類の果実、ナシ状果、核果、オリーブ、キウイフルーツ、バナナ、マンゴー、パパイヤ、パイナップル
メラミン 2.5mg/kg 乳児用調製粉乳および乳児用栄養補給調整食品を除くすべての食品
過塩素酸イオン 0.05mg/kg ウリ科・ケール(リョクヨウカンラン)葉菜類・ハーブ類以外の野菜と青果
0.01mg/kg 乳幼児用向け食品など

その他、EUでは、環境残留性と生物蓄積性が高く環境と健康にリスクをもたらすダイオキシン類・ポリ塩化ビフェニル(PCB)・DDTなどの残留性有機汚染物質(POPs)に関して、EU域内での生産、販売および使用が禁止または厳しく制限されています。2019年6月から、旧規則(EC) 850/2004は新規則(EU) 2019/1021により改正されており、同規則ANNEXⅠに記載されている物質はEU域内における上市、使用が禁止されます。

REACH規則含め、詳細は関連リンクのジェトロEU 輸入品目規制「特定危険化学品に関する規制」で確認することができます。

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4. 食品添加物

調査時点:2022年2月

一般に、生鮮のごぼう、わさび、山芋の青果に対して食品添加物は使用されないと考えられますが、食品添加物に関する規則(EC) 1333/2008第15条により、一部例外を除き、食品添加物は果物や野菜などの未加工食品には使用してはならないとされています。また、規則(EC) 1925/2006第4条により、未加工品に、ビタミンとミネラルが添加されてはならない旨も規定されています。
EU では、着色剤や保存料、酸化防止剤、その他乳化剤・安定剤などの食品添加物と、食品香料および食品酵素を区別し、これらを合わせて「食品改良剤(Food Improvement Agents)」)と総称しています。食品改良剤については、ポジティブリスト形式での規制が課されており、認可を得た食品改良剤のみが使用を認められています。食品添加物および食品香料のポジティブリストについては、欧州委員会のデータベースで検索が可能です。食品酵素のポジティブリストについては、調査時点ではポジティブリストが完成していないため、ポジティブリスト形式での使用規制は適用されていません。
EU では「漂白剤」「炭化剤」「保色剤」が食品添加物として分類に含まれていない一方で、「酸味料」「加工でん粉」「コントラスト増強剤」が食品添加物とされています。

食品改良剤に関するEU根拠法
食品改良剤 根拠法 定義
食品添加物 規則(EC) 1333/2008 それ自体は通常は食品として消費されず、栄養価の有無を問わずに食品の典型的な原材料としては通常は使用されない物質で、食品の製造、加工、調理、処理、包装、輸送、保存の段階において技術的な効果(防腐、酸化防止、色の定着など)を意図的に追加することにより、その物質やその副産物が直接的・間接的に食品の構成要素となるか、なることが十分に予想される物質。E番号で表示される。 ただし、次の物質は食品添加物として使用されない場合本規則の適用外である。
- 加工助剤(processing aids)
- 植物の健康に関する共同体ルールに従って植物や植物製品の保護のために使用される物質
- 栄養素(nutrients)として食品に添加される物質
- 理事会指令98/83/ECの範囲に該当するヒトの消費を意図した水の処理などで使用される物質
- 規則(EC) No 1334/2008の範囲に該当する香味料
その他、添加物とみなされないものについては同規則第3条を確認のこと。
食品香料 規則(EC) 1334/2008 それ自体は食品として消費されず、香りや風味を添えるか、もしくは変えるために食品に添加される製品。香料物質、香料調整品、熱処理香料、スモーク香料、香味料前駆体、その他香料およびこれらの複合物からなる。
”flavouring”、具体的な名称または香料の概要で表示。天然(Natural)の記載については同規則第16条の条件を満たす必要がある。
食品酵素 規則(EC) 1332/2008 植物、動物、微生物、または植物、動物、微生物に由来する製品から得られる製品で、微生物の発酵によって得られる製品も含む。
同規則で定められている食品酵素の名称または販売概要で表示。

ただし、かんきつ系の果実には印字のためおよび果実の表面の処理のため、例外的に一部の食品添加物の添加が認められています。「使用可能な食品カテゴリー」および「許容含有量(定められていない食品添加物もある)」が定められているため、欧州委員会のデータベースでEUに輸入しようとするかんきつ類の青果が属する食品カテゴリー(未加工の青果「(04.1.1) Entire fresh fruit and vegetables」に属する)における当該食品添加物の使用可否とその許容含有量についても確認する必要があります。

表 3 かんきつ類の果実に添加が許可される添加物と最大許容量
(04.1.1) 未加工の青果のうち「カットされていない青果」
E番号 添加物名 最大許容量 備考
E172 水酸化鉄 Iron oxides and hydroxides 6 mg/kg かんきつ類の果実、メロン、ザクロのEUに要求される義務の情報の印字に使用する場合のみ
E 445 ウッドロジングリセリンエステル Glycerol esters of wood rosins 50 mg/kg 皮をむいていないかんきつ類の果実の表面処理のみ
E 464 ヒプロメロース(HPMC) Hydroxypropyl methyl cellulose 10 mg/kg かんきつ類の果実、メロン、ザクロのEUに要求される義務の情報の印字に使用する場合のみ
E 471 脂肪酸モノ-およびジグリセリン Mono-and diglycerides of fatty acids 「適量」 かんきつ類の果実、メロン、パイナップル、バナナ、パパイヤ、マンゴー、アボカド、ザクロの表面処理のみ
E 473 -474 ショ糖脂肪酸エステル-スクログリセリド類 Sucrose esters of fatty acids-sucroglycerides 「適量」 生鮮の果実の表面処理のみ
E 901 蜜蝋、白と黄色 Beeswax, white and yellow 「適量」 かんきつ類の果実、メロン、リンゴ、ナシ、桃、パイナップル、バナナ、パパイヤ、マンゴー、アボカド、ザクロの表面処理、ナッツの光沢剤としてのみ
E 902 キャンデリラ蝋 Candelilla wax 「適量」 かんきつ類の果実、メロン、リンゴ、ナシ、桃、パイナップルの表面処理、ナッツの光沢剤としてのみ
E 903 カルナウバ蝋 Carnauba wax 200 mg/kg かんきつ類の果実、メロン、リンゴ、ナシ、桃、パイナップル、バナナ、パパイヤ、マンゴー、アボカド、ザクロの表面処理、ナッツの光沢剤としてのみ
E 904 シェラック Shellac 「適量」 かんきつ類の果実、メロン、リンゴ、ナシ、桃、パイナップル、バナナ、パパイヤ、マンゴー、アボカド、ザクロの表面処理、ナッツの光沢剤としてのみ
E 914 酸化ポリエチレンワックス Oxidised polyethylene wax 「適量」 かんきつ類の果実、メロン、パパイヤ、マンゴー、アボカド、パイナップルの表面処理

その他、かんきつ類を包装する材料に関して規定があります。詳細は、「5. 食品包装」と「6. ラベル表示」を参照してください。

関連リンク

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(化学物質名や食品カテゴリーでの検索が可能)
欧州委員会 食品香料データベース(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「EUにおける食品添加物に関する規制」(2014年3月) 
ジェトロ「食品添加物規制調査 EU」(2016年2月) 

5. 食品包装(食品容器の品質または基準)

調査時点:2022年2月

かんきつ類の青果の包装

包装されたうんしゅうみかん、クレメンタインなどかんきつ類の青果に関して、実施規則(EU)543/2011および欧州委員会委任規則(EU)2019/428において農産物を適切に保護できる方法で包装しなければならないと定められており、次の条件が求められます。

  • 包装の内側に使用する材料は、清潔でなければならず、農産物に外側または内側から一切の損害を引き起こさない品質を備えていなければならない。
  • 取引の規格が記載された紙またはスタンプについて、材料の使用は、無毒性のインクまたは糊で印刷またはラベル貼付を行っていること。
  • 農産物に個別に貼り付けられたステッカーは、取り除いた時に糊の跡が残っていてはならず、また、果皮の欠陥を引き起こしてはならない。
  • 果物ごとにレーザーで刻印を行う場合、果肉または果皮に欠陥を引き起こしてはならない。
  • 果物を包む場合は、薄くて乾燥した新しい無臭の紙(*注)を使用しなければならない。
  • 味、香りなどかんきつ類が有する天然の特徴を変化させうる物質(*注)については、使用が禁止される。
  • 包装物品は、異物が混入していてはならない。
    (*注)果皮に異臭を残すおそれのある保存剤やその他の化学物質は該当するEU規則に適合する場合のみ、認められます。EUで認可されている添加物については前述の「4. 食品添加物」で確認してください。

また、これらの青果の各包装の内容品は同じ原産地、品種、または市販タイプ、品質およびサイズならびに成熟度が均一でなければならないとされています。異なる種のかんきつ類からなる混合品をひとつの販売用包装にまとめて包装することは可能ですが、それぞれの品質、品種、市販タイプ、原産地が均一であることが求められます。

木材梱包材

第三国からEU への貨物の輸入に用いられる木材梱包材(パレットや木箱など)に関しては、規則(EU) 2016/2031第43 条に規定されるとおり、隔離病害虫の侵入およびまん延の経路となる可能性があることから、植物検疫措置に関する国際基準No. 15「ISPM 15」の要件を満たしている必要があります。

ISPM 15の詳細については、横浜植物防疫所「植物検疫措置に関する国際基準ISPM 15国際貿易における木材梱包材の規制(仮訳)」(以下「ISPM 15」)または一般社団法人 全国植物検疫協会のウェブサイトも参照してください。

ISPM 15の付属書1に規定される処理(樹皮を除去した木材に適用される熱処理、臭化メチル処理、フッ化スルフリル処理など)が施されたことを証明するマークが刻印されている必要があります。 マークとその適用については、ISPM 15の付属書2に規定されています。IPPCのシンボル、国コード、生産者もしくは処置実施者コード、実施された処理のコード(例:熱処理は HT、臭化メチル処理は MB など)からなり、マークは判読可能で、耐久性があり、移動不可能で、手書きであってはならないとされています。また、赤色やオレンジ色も避けるよう規定されています。

マークの一例

マークの一例

これらの規定は、次のものには適用されません。

  • 厚みが6 ミリメートル以下の薄い木材からなる梱包材
  • 接着剤、熱もしくは圧力、またはそれらの組み合わせで製造された合板、パーティクルボード、配向性ストランドボード、またはベニヤといった加工木材ですべてが作製された梱包材
  • EU域内の取引で使用されている木製梱包材

なお、日本における輸出用木材梱包材の生産者や消毒認定業者に関しても、全国植物検疫協会のウェブサイトで確認することができます。

「1.食品規格」に記載の、「一般販売基準(GMS)」対象の青果の包装にパレットを使用しているときは、少なくともパレットの2面の分かりやすい位置に「原産国」を記載するものとします。

食品接触包装材

その他、EUでは、食品用の容器・包装をはじめ、調理器具や食品製造機械、食品輸送用のコンテナなど、食品と接触することが意図されているまたは通常の使用条件において食品と接触することが合理的に予見されるあらゆる素材・製品(Food Contact Material:食品接触素材)について、健康被害を引き起こしてはならない、食品成分に許容できない変化を引き起こしてはならない、食品の味・香り・食感などを劣化させてはならない旨が定められています(欧州議会・理事会規則(EC)No 1935/2004)。

なお、EUレベルでの法規制に加えて、EU加盟国は独自規制を導入することが可能となっています。

フランスでは、デクレNo 2007-766(2007年5月10日付)とデクレNo 2008-1469(2008年12月30日付)により、ゴム、シリコンゴム(ポリマー)、イオン放射線処理、金属・合金 (ステンレススチール、アルミニウム) に関するアレテが定められており、適用される基準値や添加できる物質のポジティブリストなどが規定されています。
また、食品の包装と保管、着色に関する1912年6月28日付アレテにより、一部の製造・醸造を除き、飲食品に直接、銅、亜鉛、亜鉛メッキが触れることは禁止されており、食品に接触する重金属(ヒ素、鉛、スズ)、紙・ボール紙、ニス・コーティング剤、人口着色料などについても独自規定が設けられています。
その他、ガラス・グラスセラミックなどに含有する重金属量(カドミニウム、鉛、クローム)の上限値や禁止の有無を定めた規定、製造に使用できる素材(木材など)の規定や洗浄剤それぞれ該当規定を確認する必要があります 。
また、法令No 2012-1442に基づき、食品に接触するすべての包装容器などについてビスフェノールAの使用が禁止されています。

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2007年5月10日付 デクレNo 2007-766 (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※ 関連リンクに示した仏国内法のリンクは、すべて制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、Version à la date du で最新の日付を入力してください。
2008年12月30日付 デクレNo 2008-1469 (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1994年11月9日付飲食品に接触するゴム製品・素材に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1992年11月25日付飲食品に接触するシリコンゴム製品・素材に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1986年8月12日付飲食品に接触する製品・素材へのイオン放射線処理に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1976年1月13日付食品に接触するステンレス製品・素材に関するアレテ (フランス語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(375KB)
1987年8月27日付飲食品に接触するアルミニウムまたはアルミニウム合金製品・素材に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1985年11月7日付アレテ飲食品に接触するセラミック製品から抽出可能なカドミニウムや鉛の上限値に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1999年9月8日付アレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
1912年6月28日付食品の包装と保管、着色に関するアレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
フランス法令No 2012-1442(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
欧州委員会 食品接触材 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 食品接触材に関する各国当局窓口(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(521KB)
食品との接触を意図したプラスチック素材と製品に関する規則(EU)No 10/2011に関するEUガイドライン(英語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(579KB)
EU加盟国の食品接触素材に対する独自規制に関するレポート(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
フランス国立計測試験研究所(LNE)(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ「海外向け食品の包装制度調査(EU、TPP、米国、中国、韓国、台湾、インド、タイ、インドネシア、GCC、メルコスール)」(2020年3月)

6. ラベル表示

調査時点:2022年2月

「1. 食品規格」で説明のとおり、実施規則(EU)543/2011によりかんきつ類の青果に関して、荷印や表示に係る規定があり、それぞれの梱包包装に、「識別」「農産物の性質」「農原産地」「取引の規格」の事項を読みやすく消えない文字で、外から見えるように同面にまとめて記載する必要があります。ただし、梱包箱の中の販売用包装には適用されませんが、販売用パッケージにすでに次の項目が記載されており、外から見える場合は外箱への記載は不要とされます。販売用の事前包装の詳細については、後述する「一般食品のラベル表示」を参照してください。

かんきつ類の荷印に係る規定
識別
  • 包装業者および/または出荷業者の名称および実際の所在地(番地/市町村/地域/郵便番号/原産国と異なる場合は国名など)。
  • ただし、事前包装を除く一切の包装については、公式に発行または承諾されている、包装業者または出荷業者の識別コードで代用することができる。その場合は、「包装業者または出荷業者」(または同等の略語)の記載の付近に表示する。
  • 一方、事前包装の場合には、EU内に事業所を有する販売業者の名称および所在地と「・・・用包装」または同等の文言を付近に記載する。この場合、ラベルに包装業者または出荷業者を表すコードも記載する。
農産物の性質
  • 農産物が外から見えない場合は、「レモン」、「マンダリン」または「オレンジ」、明らかに異なる種のかんきつ類からなる混合品の場合は、「かんきつ類の混合品」または同等の名称および異なる当該種の通称名。
  • 「ネーブル」および「バレンシア」のオレンジについてはそれぞれの品種グループの名称。
  • 「うんしゅうみかん」および「クレメンタイン」については、種の通称名(品種の名称は任意)。他のマンダリンおよびその交配種については、品種の名称を表示。
  • 10粒以上のたねを含むクレメンタインの場合は、「たね有り」と記載。
  • 「たね無し」の表記は任意で、偶然にたねを含んでいてもよしとされる。
農産物の原産地
  • 国名(必須)。任意で生産地区または呼称、地域もしくは地方の地名。
  • 明らかに異なる種であり、原産地も異なるかんきつ類からなる混合品については、各原産国を関連種の名称の隣に見えるように表記。
取引の規格
  • 等級
  • 次のいずれかで表すサイズ
  • 最小および最大サイズ(mm)
  • サイズコード。任意で最小および最大サイズを加えることができる。
  • 個数
  • 収穫以降の段階で保存剤その他一切の化学物質が使用されている場合は、当該保存剤または化学物質の記載

なお、EUに要求される特定の処理に使用される添加物や、青果に直接印字するために、使用が許可されている着色料などの添加物に関しては、EU規制によりポジティブリスト形式で定められています。詳細は、「4. 食品添加物」で確認することができます。

梱包にパレットを使用しているときは、少なくともパレットの2面の分かりやすい位置に注意書きを添付し、かかる注意書きにこれらの内容を記載する。
なお、事前包装がされている場合もされていない場合も、消費者を惑わせる表示や医学的効能を宣伝する表示が禁止されているほか、オンライン販売などの手法により遠隔地から販売する事業者にも同様の規定が適用されます。

一般食品のラベル表示
その他、事前包装済みの一般食品のラベル表示は、欧州議会・理事会規則(EU)No 1169/2011で規定されています。同規制は EU 域内で流通する食品全般(最終消費者向けおよび調理施設(レストラン、食堂など)ケータリング向けの輸入食品を含む)に適用され、輸入食品にも適用されます。EU 市場で流通し消費者に販売される時点から、輸入者もしくは販売者に表示の義務が課されます。アレルギー物質や栄養素の表示など、日本よりも義務表示の対象が広い項目もあるため、注意が必要です。
青果を輸出する場合、規則(EU)No 1169/2011Article 9(次の表で同規則)およびEU関連規則に基づき次の項目を表示する義務があります。なお、消費者を惑わせる表示や医学的効能を宣伝する表示が禁止されているほか、オンライン販売などの手法により遠隔地から販売する事業者にも同様の規定が適用されます。
その他、事前包装されていない食品に対して、各国が独自の表示義務を課している場合があります。
ラベル表示義務項目
かんきつ類 ゴボウ等 項目 補足説明
食品の名称 食品の名称は、次の優先順位で記載する必要があります。
  1. 法的名称:EUまたは加盟国の法律、規則などで定められた名称。 かんきつ類は実施規則(EU)543/2011で規定される名称
  2. 慣習的名称:当該販売国で消費者に食品名称として受け入れられている名称。その名称以外に説明が不要なもの。
  3. 説明的名称:製品の本質が消費者に分かり、混同しやすいほかの製品と区別できる食品を形容した説明、および必要に応じてその用途を示す名称。
なお、商標やブランド名を食品の名称として使用することはできません。
原材料リスト 皮をむいたり、カットしたりしていない単一原材料(青果)の場合は不要。 原材料として使用されている場合の表示については同規則ANNEX VIIを参照。
食品添加物を添加した場合、原則として、すべての原材料(食品添加物や酵素を含む。)を重量順に表示する必要があります。ただし、食品に占める割合が2%未満の原材料については、非重量順も可能です。なお、複合原材料についても、名称・総重量を記載したうえで、その後に原材料リストを記載する必要があります。食品添加物および食品香料は、そのカテゴリー(酸化防止剤、防腐剤、着色料など)ごとに物質名またはE番号を表示する必要があります。ただし、加工助剤や最終製品技術的な機能を持たないキャリーオーバーなどについては同規則第20条を参照。
アレルギー物質 表示が義務付けられているアレルギー物質は、次のとおりです。ただし、セロリ以外の青果単体の場合はアレルゲン物質には該当しないため、実質的な表示義務はない。
  • グルテンを含む穀物(小麦、大麦、オーツ麦など)および同製品(一部例外あり)
  • 甲殻類および同製品
  • 卵および同製品
  • 魚および同製品(一部例外あり)
  • ピーナッツおよび同製品
  • 大豆および同製品(一部例外あり)
  • 乳(ラクトースを含む)および同製品(一部例外あり)
  • ナッツ類および同製品
  • セロリおよび同製品
  • 辛子および同製品
  • ゴマおよび同製品
  • 濃度が 1キロ/1リットル当たり10mg 超の二酸化硫黄または亜硫酸塩
  • ルピナス(マメ科植物)および同製品
  • 軟体動物および同製品
原材料リストの標記を太字などで強調することにより表記することが可能です。
正味量 重量単位で「kg(キログラム)」または「g(グラム)」で表示します。 文字の大きさは重量に応じ、次のとおり表示する必要があります。
公称重量 文字の高さ
50g以下 2mm以上
50g超200gまで 3mm以上
200g超1,000gまで 4mm以上
1,000g超 6mm以上
また、容量誤差の許容範囲(容器に記載された公称重量と実質重量の誤差)については、指令76/211/EEC により、次のとおり規定されています。
公称重量 (g) 許容範囲 (公称容量より少ない場合)公称重量 に対する% 許容範囲 (公称容量より少ない場合)g
5 ~ 50 9
50 ~ 100 4.5
100 ~ 200 4.5
200 ~ 300 9
300 ~ 500 3
500 ~ 1,000 15
1,000 ~ 10,000 1.5
表示されている正味量が関連するEU規制に準拠していることを示すため、eマークを正味量の横に表示することが可能です。
〇g

図:eマーク

賞味期限または消費期限 皮をむいたり、カットしたりしていない生鮮の青果の場合は不要。(発芽した種子や豆類などは必要)
特殊な保存条件や使用条件 当該食品が特別な保存条件や使用条件を必要とする場合には、表示する必要があります。例:「冷暗所で保管」
(食品情報について責任を負う)食品事業者の名称または商号、および所在地 食品を当該名称または商号で販売している食品事業者(EU域内事業者でない場合は、EUへの輸入者)の名称または商号および所在地を表示する必要があります。委託製造の場合、フランスでは« EMB »の後に5桁の登記番号
包装業者および/または出荷業者の名称 (EU)543/2011 包装業者および/または出荷業者の名称および実際の所在地(番地/市町村/地域/郵便番号/原産国と異なる場合は国名など)。
原産国 (EU)1308/2013(EU)543/2011 原産国の正式名称。目的地国の消費者が理解できるほかの言語で記載する。任意で生産地区または呼称、地域もしくは地方の地名。
使用方法の指示 記載がなければ適切な使用が困難な場合に記載する必要があります。
栄養表示 未加工の青果(単一原材料)については、栄養表示義務の対象外です。
製造ロット番号 (EU指令2011/91/EU) EU域内で流通する包装済み食品は、製造ロット番号を表示する必要があります。明確な表示(LOTなど)の場合を除き、「L」の文字に続けてロット番号を表示する必要があります。
(EU)543/2011に記載される特定基準 上記「かんきつ類の荷印に係る規定」に記載する特定販売基準にかかる表記(農産物の性質、たねの有無、農産物の原産地、取引の規格、等級、サイズなど)

その他、葉や花をつけたカンキツ属、キンカン属、カラタチの果実や一部の植物、木材には植物パスポートが必要とされます(種子や個人使用、研究用など実施規則(EU) 2019/2072の第6条第3項に記載された例外を除く)。 植物パスポートの詳細はEUのポータルサイト「花き」で確認してください。

7. その他

調査時点:2022年2月

  1. EU域外から輸入される食品については、欧州議会・理事会規則(EC)No 178/2002に基づきEU規制が求める衛生基準などとの同等性(輸出国と特定の合意がある場合はその合意事項)を満たす必要があります(同規則第11条)。
  2. EUの食品輸入事業者は、輸入した食品が EUの食品衛生要件を満たしていないと判断した場合、即時に製品を市場から回収する手続きをとり、加盟国の所管当局に通知する義務があります(欧州議会・理事会規則(EC)No 178/2002 Article 19)。また、同規則では、食品がヒトの健康や環境に甚大なリスクをもたらす可能性があると判断された場合、EUが当該食品の上市停止などの緊急措置をとることが認められています(同規則Article 53)。取られた措置についてはRASFF(食糧・飼料緊急アラートシステム)で確認することができます。

これらのEUの衛生法(衛生パッケージ)は規則(EC)No 178/2002 (食品一般法)、規則(EC)852/2004 (一般食品の衛生規則)、規則(EC)853/2004 (動物性食品の衛生規則)、(EC) 183/2005 (動物の飼料に要求される衛生規則) そして新公的管理規則(EU)2017/625およびこれらの規則を補完する関連規則(例えば、委任規則 (EU) 2019/625など)により構成されています。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 食品・農業・漁業(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州食品安全機関(EFSA)(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC)No 178/2002(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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規則(EC)No 853/2004(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC) No 852/2004 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EU) 2017/625(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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EUでの輸入手続き

1. 施設登録、商品登録、輸入ライセンス等(登録に必要な書類)

調査時点:2022年2月

適合証明書の取得
EU規制において、上市される野菜および果物が満たすべき品質などの一般販売基準または特別販売基準が定められています(規則(EU) No 1308/2013)。このため、産業加工用、皮をむいたカットフルーツ、動物用肥料などを除き、特定販売基準が定められている、レモン、マンダリン、うんしゅうみかん、クレメンタイン、タンジェリンおよびオレンジなど10種類とバナナについては、EUの販売基準に適合している旨の「適合証明書」(欧州委員会実施規則 (EU) No 543/2011 Annex IIIに規定)の提出が求められます。
一般販売基準の対象である生鮮のごぼう、わさび、山芋について基本的には求められませんが、適合証明書を要求される場合は、事前に通知がされるため取得する必要があります。
適合証明書は、EUへの輸入時に、通関代行事業者からEU加盟国の管轄当局に対してオンラインで事前通知を行い、検査官による書類審査または実際の物品検査(目視検査)を経て合格した場合に通関することができます。なお、第三国で事前適合審査を受けることが、可能な「第三国リスト」が実施規則(EU) No 543/2011 ANNEX IVに規定されていますが、日本はリストに非掲載のため、出荷先(EU)で取得する必要があります。
フランスの場合、対象の青果物の輸出入事業者は必要情報を事前にフランス競争・消費・不正抑止総局(DGCCRF) 管轄のTELEFELというシステムを通じて通知し、審査が行われます。実際の物品検査が行われた場合はDGCCRFから「適合証明書 (Certificat de conformité)」が、書類審査のみの場合は「許可証明 (Bulletin d’admission) 」が発行され、通関手続きを行います。TELEFELでの申告にはEORI 番号(EU圏内の通関時に必要な番号)が必要なため、基本的には通関代行事業者が依頼します。一度、TELEFELで必要情報を入力した後は、輸出入処理システムのProdouane経由で情報を共有することができます。(ただし、2020年よりLe GUN (通関窓口一括化)により、DELTA-G & SORAF&Lという通関システムで一元化運用しているため、実質的には、適合証明書の電子化が進められている。)
主なEU加盟国および英国の管轄機関
国名 管轄機関
フランス Direction Générale de la Concurrence, de la Consommation et de la Répression des Fraudes – DGCCRF
Service de la Protection des consommateurs et de la régulation des marchés
ドイツ Bundesanstalt für Landwirtschaft und Ernährung - BLE (Federal Agency for Agriculture and Food)
オランダ Ministerie van Landbouw, Natuur en Voedselkwaliteit (Ministry of Agriculture, Nature and Food Quality)
Nederlandse Voedsel en Waren Autoriteit
イタリア Dipartimento delle Politiche Europee e Internazionali e dello Sviluppo Rurale (Department of European and International Policies and Rural Development)
Direzione generale delle politiche internazionali e dell'Unione europea (Directorate-General for the European Union and International Policies)
スペイン Secretaría de Estado de Comercio (Secretariat of State for Trade) Dirección General de Política Comercial y Competitividad (Directorate-General for Commercial Policy and Competitiveness)
Subdirección General de Inspección, Certificación y Asistencia Técnica del Comercio Exterior (Sub-Directorate-General for Inspection, Certification and Technical Assistance for International Trade)
輸入ライセンス
野菜・果実は輸入ライセンス対象セクターですが、にんにくなど以外の青果に関して、規則(EU)No 2016/1237のANNEXにより規定されていないため、輸入ライセンスは求められません。
その他、一部のスプラウト製品に課される認定施設由来要件に関しては、輸入規制「1.輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」を確認してください。

2. 輸入通関手続き(通関に必要な書類)

調査時点:2022年2月

日本から青果を輸入するにあたっては、次の書類が必要になります。

  1. 価格申告書(Customs Value Declaration) CIF価格が2万ユーロを超える場合、単一管理文書 (SAD : Single Administrative Document)とあわせて価格申告書の提出を求められます。様式は規則 (EU)2016/341 ANNEX 8に記載されています。
  2. 通関申告書(単一管理文書 (SAD : Single Administrative Document)) 2万ユーロ以上の輸入品EU域外の第三国とのすべての輸出入手続きに必要な共通申請書。様式は委員会実施規則(EU) 2016/341 ANNEX 9 Appendix B1に記載されています。
  3. インボイス(商業送り状)
  4. パッキングリスト(包装明細書: P/L)
  5. 船荷証券(Bill of Lading: B/L)/航空運送状(Air Waybill: AWB)その他、貨物海上保険(Freight insurance)などの船積書類
  6. 植物検疫証明書/ 共通衛生入域文書(Common Health Entry Documents: CHED-PPまたはCHED-D)その他、必要に応じて公的証明書や事業者による私的宣言書など。
    EUが植物検疫証明書に求める記載事項は規則(EU)2016/2031 第76条およびANNEX Vに記載されています。

2019年12月14日から適用開始された、公的管理の新規則(EC)2017/625により、貨物の到着1日前までに共通衛生入域文書(CHED : Common Healthy Entry Document)に必要な情報をTRACES などの電子システム経由で国境管理所(BCP:Border Control Post)に事前通知する必要があります。
詳細はCHED-D(非動物由来食品・飼料)およびCHED-PP(植物など)のTRACESマニュアルで確認することができます。

かんきつ類などの特定販売基準が定められている場合はインボイス、送り状、注文書などに包装に記載が課されている義務次項を記載する必要があります。

EU域内にかんきつ類を輸入する際に必要な適合証明書については「1.施設登録、商品登録、輸入ライセンス等(登録に必要な書類)」を参照してください。

また、残留農薬などに関するサンプリング検査の対象となった場合には、関係資料・データなどの提出を求められることがあります。
「食品規格」で述べたとおり、産業加工用など販売基準が求められない青果の場合、その旨を申告する必要があります。フランスの場合、輸入申告の際にコード2879 「Fruits et légumes frais non soumis à normes de commercialisation à l’importation/exportation」と記入または選択する必要があります。

有機食品の場合に必要な情報は「その他」の「有機食品に関する規制」を参照してください。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 食品・農業・漁業(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 植物・植物製品(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
仏税関ポータルサイト(仏語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EU)No 2016/341(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU)2019/2072(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EU) No 2016/2031(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 543/2011(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC) 2017/625(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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その他参考情報
欧州委員会「CHED-Dマニュアル」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会「CHED-PPマニュアル」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

3. 輸入時の検査

調査時点:2022年2月

「輸入規制」の「3.動植物検疫の有無」に記載のとおり、本サイト対象品目の青果輸入時には、公的管理の対象となるため、輸入元国での植物検疫が課され、国境管理所(BCP Border Control Post)において書類検査または同一性検査、あるいは現物検査が行われます(見本市の展示品、科学的・研究目的など市場に投入されないものは除外)。
実施規則(EU)2019/66第5条にあるとおり、EU域内 への輸入に際して植物検疫証明書の添付が求められる植物に対して実施される同一性検査(identity check)と現物検査(physical check )の頻度は、最低でも貨物 全体の1%とする旨が定められています。

なお、国境管理所(BCP)で実施される輸入品に対する公的管理(輸入検疫)には、関係当局から、当該公的管理の対象となった事業者(輸入品の場合は当該貨物に責任を有する者)に対して一定の手数料が課されます。手数料については、公的管理の新規則(EC)2017/625 のANNEX IV (VIII)に記載されています(書類検査 7ユーロ、同一性検査7ユーロ〜14 ユーロ、その他リスクに応じて現物検疫検査となった場合はアイテム・重量により変動)

また、公的管理の強化期間中に同じ業者または国からの貨物が同じ違反を3回した場合は、欧州委員会は第三国の発送国の当局に対して、必要な調査と是正が要請されます。

フランスにおいては、税関に植物検疫証明書が必要な植物や植物製品が到着するとともに、植物検疫検査がservice d'inspection vétérinaire et phytosanitaire aux frontières(SIVEP)により行われ、書類確認または、現物チェック、検疫検査が終わると(あるいは、フランスの検疫当局と協定を結んでいるほかの加盟国の検疫検査当局による検査が終了している場合は)、「防疫移動書類(Document Phytosanitaire de transport)」が検査終了までに発行され、「Laissez-Passer phytosanitaire(植物通行許可証)」が発給されると通関を切ることができます。到着した税関とは別の税関局を通った場合に、さらに検査が必要と判断された場合は追加の検査が行われます。

フランスにおける植物などの国境管理所のある港や空港、管理所は、2020年2月19日付アレテのANNEX IIに記載にされています。

ただし、公的管理の規則(EU)No 2017/625第44条および第47条に基づき、リスクに応じた適切な頻度で定期的に、残留農薬基準など、EUの食品衛生基準に適合しているか、消費者を誤認させる可能性があるかどうかのサンプリング検査をしており、書類検査または、同一検査あるいは現物検査が実施される場合があります。
検査に要した費用は請求されます。

関連リンク

関係省庁
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根拠法等
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実施規則 (EU) 2019/66 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC) 2017/625(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
実施規則(EU)2019/2072(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
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動植物国境管理所のリストを定める2020年2月19日付アレテ (フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会「EU域外からの植物・植物製品の貿易」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
国境管理所(BCP Border Control Post)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

4. 販売許可手続き

調査時点:2022年2月

取引業者の登録

EUでは、規則(EU) 2016/2031の第65条に基づき、植物検疫証明書や植物パスポートが必要とされる植物を輸入する事業者や物流業者は、「専門事業者の登録(Professional Operator)」として各加盟国の当局への登録が義務付けられています。従来からあるシステムですが、「隔離病害虫を発見した場合、ただちに関係当局に通知する」、法的責任が強化されました。本事業者には、栽植 (planting)や生産 〔育成 (growing)、増殖 (multiplying)、管理 (maintaining)を含む〕だけでなく、EU への導入(輸入)、保管、収集、発送、加工(processing)する事業者も含まれます。

「取引業者の登録」に関する手続きは各国で異なるため、仕向け地の当局に確認してください。 その他、植物パスポート取得の対象の詳細については、EUのポータルサイト「花き」で確認してください。フランスの場合、フランス農業・食料省管轄の地域食品農林局(DRAAF:Direction Régionale de l'Alimentation, de l'Agriculture et de la Forêt)が管轄で、「専門事業者の登録」手続きは電子システムでの登録申請に統一されています。ただし、技術的な問題でうまくいかない場合は紙(「Cerfa n°16024*01」)での申請も可能です。事前に、フランスの企業としての登記(SIRET番号の入手)が必要です。
新制度以前に農業食糧省の食品総局 (DGAL)、フランス・アグリメール 、全国種苗業種間連合会(GNIS-SOC)により、発給された登記番号INUPPを取得済みの場合、新たな登録は不要です。フランスまたはEU域内で植物などの生産や販売に関わる場合は、毎年4月30日より前に申し出る必要があります。
木材の専門事業者については別様式です。

関連リンク

関係省庁
フランス農業・食料省 ホームページ「植物専門事業者の登録手続き」(フランス語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EU)No 543/2011(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EU) No 2016/2031(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
フランス農業・食料省専門事業者登録(仏語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロレポート「EUにおける新しい公的管理・植物衛生・動物衛生制度に関する調査(2021年3月)」

5. その他

調査時点:2022年2月

なし

EU内の輸入関税等

1. 関税

調査時点:2022年2月

EUは域外共通関税制度の下で、域外からの輸入品の関税率は域内各国で一律となっています。

関税および統計的分類表ならびに共通関税率に関する理事会規則(EEC)No 2658/87では、共通関税を設定するために合同関税品目分類表(CN)とよばれる物品の分類表を設定しており、これはHSコードに相当します。そのため、当該合同関税品目分類表のCNコードの中から該当する品目の関税率を特定する必要があります。

また、2019年2月から、日本からEUへの輸出品は、日EU経済連携協定(以下「日EU・EPA」)の適用対象となります。日EU・EPA適用後の関税率は、表のとおりです。

日EU・EPAの適用を受けるには、当該輸出品の原産地が日本である旨を証明する原産地証明が必要となります。日EU・EPAでは、自己申告による原産地証明制度が採用されており、輸出者、輸入者または通関業者のいずれかが、自ら原産地を証明することになります。原産地証明に関する詳細は、税関のウェブサイトで確認することができます。また、商品に非日本産原料が含まれており、原産地の判断が困難な場合は、事前教示の制度により、税関当局に照会することができます。

生鮮のごぼう、わさび、山芋およびかんきつ類の青果が該当するCNコードと関税率
CNコード/品目 関税率:通常 関税率:EPA適用
0706.90.90
生鮮および冷蔵の食用の根・塊茎野菜のうち、人参、カブ、サラダ用ビートルート、ホースラディッシュ(セイヨウワサビ)、セルリアクをのぞく、サルシファイ(セイヨウゴボウ)、大根およびその他の類似のもの
13.60% 非課税
(0%)
0805.21.1010
かんきつ類の果実のうちうんしゅうみかん(生鮮)
117.70.0% ※ 非課税
(0%)※
0805.29.0091
かんきつ類の果実のうちタンジェリン、うんしゅうみかん、クレメンタイン、ウイルキング、タンジェロを除く、その他のマンダリンもしくはその交配種(生鮮)
117.70.0% ※ 非課税
(0%)※
0805.90.0000
生鮮および乾燥のオレンジ、マンダリン(タンジェリン、うんしゅうみかんを含む)、クレメンタイン、ウイルキング、およびこれらの同様の交配種、グレープフルーツ、ぶんたん、レモン、ライムを除くその他のかんきつ類の果実
12.8% 非課税
(0%)

※CNコードは参考として記載していますが、変更になることがあるため、必ず欧州委員会の関税検索サイトまたは、仕向け地の税関に最新のコードを確認してください。

※かんきつ類の果実のうち、うんしゅうみかんおよびその他のマンダリン、クレメンタイン、タンジェリンおよびオレンジなどについては、参入価格制度(entry price system)が採用されており、いずれも28.6ユーロ/100kgの参入価格が設定されています。輸入価格が参入価格以上の場合、追加関税は発生しません。 具体的な数値例を示すと、次のとおりです。

  • 輸入価格が30ユーロ/100kgの場合:
    「輸入価格≧参入価格」のため、追加関税は発生しません。
  • 輸入価格が28ユーロ /100kgの場合:0% + 0.60 EUR / 100 kg
  • 輸入価格が27.5 ユーロ /100kgの場合:0% + 1.10 EUR / 100 kg
  • 輸入価格が26.90 ユーロ /100kgの場合:0% + 1.70 EUR / 100 kg
  • 輸入価格が26.30 ユーロ /100kgの場合:0% + 2.30 EUR / 100 kg
  • 輸入価格が0 ユーロ /100kgの場合:0% + 10.60 EUR / 100 kg
    の追加関税が発生します。

EPAの適用後は、表のかんきつ類の通常関税は0%になりますが、参入価格制度は維持され、輸入価格が参入価格を下回る場合の追加関税は、EPA適用後も課税されます。

関税率は、欧州委員会通商総局が提供する「Access2Markets」や税制・関税同盟総局が提供する「TARIC Consultation」などで検索できます。さらに、日EU ・EPAの原産地ルールや税率に関しても、「Access2Markets」で確認することができます。

2. その他の税

調査時点:2022年2月

EUへの輸入には、輸入関税に加え、各国が独自に定める付加価値税(VAT)や物品税が課されます。これらの税率は国によって異なるため、最終消費国ごとに確認する必要があります。なお、VATに関する共通システムに関しては欧州理事会指令2006/112において規定されています。各国のVATは次のとおりです。

ドイツ:7%
フランス:5.5%
イタリア:4%
オランダ:9%

関連リンク

根拠法等
指令2006/112(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
その他参考情報
欧州委員会Access2Markets (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会TARIC Consultation (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

3. その他

調査時点:2022年2月

なし

その他

調査時点:2022年2月

有機食品に関する規制
EU域内で有機食品を第三国から輸入、販売するための要件およびそのラベル表示に関する規制は、欧州理事会規則(EC)No 834/2007および規則(EC)1235/2008で規定されていますが、新公的管理の規則(EU)No 2017/625に照らし合わせ、新規則 (EU) 2018/848が2022年1月1日から適用されています。
現行では、日本の有機JAS制度は、EUの有機制度との同等性を有するとみなされており、EU域内で「有機」として販売が可能な国のリスト(第三国リスト)に掲載されているため、同リストに掲載された有機JAS登録認定機関が発行する証明書を添付することにより、有機食品としてEU加盟諸国に輸出することが可能です。輸出時には当該証明書を、有機JAS食品に添付しなければなりません。なお、当該証明書は、2017年10月19日からTRACESシステムを用いて電子的に提出することが義務付けられており、証明書を発行する登録認定機関がTRACESに登録されている必要があります。
また、食品に「organic」などの語句を表示してEU域内で販売する際には、有機JAS登録認定機関の認証機関コード番号もラベル表示(事前包装されていない場合は当該商品に言及したボードなど)に記載しなければなりません。また、任意でEUの有機ロゴ(ユーロリーフ)の使用もできますが、日本から輸入した有機JAS認定食品の場合は「non-EU Agriculture」の表示もあわせて記載する必要があります。生産国が日本のみの場合は、「non-EU」を国名で代替・補足することも可能です。
日本の有機JAS制度はEUの有機制度との同等性が認められていますが、日本の有機JAS制度においては一部農薬(無機銅など)の使用が認められており、かつ残留農薬基準が日本よりEUのほうが低く設定されている場合があります。その場合は有機JAS農産物であってもEUの残留農薬基準を満たさない可能性があることについて留意が必要です。
欧州理事会規則(EC)No 834/2007および欧州委員会規則(EC)No 889/2008に基づき、EU域内に有機食品を輸入・流通させるにあたっては、EU側の輸入者・販売者にも当局への登録、査察の受け入れ、証明書の保持などが義務付けられています。このため、輸出に際してはEU域内の相手方事業者がこれらの要件を満たす事業者であるかどうかについて確認を行うことも必要です。
他方で、前述のとおり、2022年1月1日から施行せれている新規則 (EU) 2018/848が適用されると有機の第三国との同等性の規則が失効されることが示唆されています。規則 (EU) 2020/1693によると、EU有機と日本の有機JASの同等性の失効期限は2026年12月31日までとなっているため、有機JAS制度を利用したEUへの有機食品の輸出ができなくなる可能性があります。
なお、本項目に関して、主要加盟国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ)において、EU規制に上乗せで課される独自規制は確認されていませんが、国によってEU規制の運用が異なる場合があることに留意が必要です。

関連リンク

関係省庁
欧州委員会 食品・農業・漁業(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
根拠法等
規則(EC)No 834/2007(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EC)No 889/2008(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EC) 1235/2008 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則(EU)No 2017/625 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
規則 (EU) 2018/848 (英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
規則 (EU) 2020/1693(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
※関連リンクに示したEU法のリンクは、全て制定時の条文へのリンクとなっています。最新の条文を確認するには、ページ左側の「Document information」を選択し、「Relationship between documents」の「All consolidated versions」の中から最新時点のものを選択してください。
欧州委員会「有機食品と有機生産」(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
その他参考情報
農林水産省 有機JASに基づく有機食品の輸出入方法などの変更についてPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(79KB)
農林水産省 有機食品の検査認証制度 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
農林水産省 有機登録認定機関一覧 PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(148KB)
欧州委員会 農業農村開発総局 Import/Export: Trade in organic products(英語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
欧州委員会 TRACES(英語) 外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
ジェトロ 欧州における有機食品規制調査(2018年3月)