外国企業の会社設立手続き・必要書類

最終更新日:2025年08月20日

外国企業の会社設立手続き・必要書類

外国企業がチェコ市場に参入し事業活動を行うためには、多くの場合、チェコ営業許可管理局で必要な営業認可証を登録しなければならない。
チェコ営業許可管理局にて外国企業として営業認可証の登録をするためには、チェコでの法人設立が必要となり、この場合の法人としては、会社(一般的には「有限会社」または「株式会社」)あるいは支店が考えられる。

有限会社

主な特徴

有限会社は、次の特性を備えた法的能力を有する法人である。

  • 1人以上の出資者により設立(出資者は、個人または法人。出資者が法人である場合、株主の所在地はチェコ国内でも外国でも可。出資者が個人である場合、チェコ国籍に限らず、外国籍でも可)。
  • 出資者は有限責任である(出資者は有限会社の負債について、債権者から弁済を求められた時点における商業登記簿の登記内容に基づき、出資金未払込額の範囲内で連帯して責任を負う)。
  • 有限会社は、総会にて会社の法的な経営責任者(取締役)を1人もしくは複数人任命する。取締役は有限会社の経営に対して法的責任を負い、会社代表権限をはじめとして取締役に関する詳細は、商業登記簿に記載されていなければならない。
  • 出資者1人当たりの出資金の最低金額は、1コルナ(つまり、出資者1人の有限会社の場合、最低資本金額は1コルナ)であり、出資金額に上限なし。

設立手続き

  1. 設立手続き概要

    有限会社の設立手続きには2週間程度必要だが、外国企業が有限会社を設立する場合、翻訳作成、アポスティーユ付与、追加書類提出などのため、通常およそ1~3カ月掛かる。手続き内容は次のとおり。

    1. 会社を設立する株主(発起人)が、公正証書の形式にて定款を作成。
    2. 特定住所に所在地を構えるため、所在地を置く不動産の使用権を法的に証する書類の取得。
    3. 資本金払込目的で開設された特別口座への登録資本金払い込み(商業登記簿登記申請書提出までに、各現金拠出額の最低30%が払い込まれていること)。
    4. 事業目的に必要な営業認可証を登録。事業活動を営む上で別の許可が必要な場合は、当該許可を取得。
    5. 商業登記簿に登記。

    有限会社設立に必要な書類は、一般的に次のとおり。

    1. 公正証書の形式にて作成される定款。
    2. 株主に関する書類(株主が法人の場合):発行日から3カ月以内の最新の商業登記簿抄本。
    3. 最初の取締役に関する書類:発行日から3カ月以内の無犯罪証明、あるいは同様の書類、および取締役がその条件を満たしている旨を述べた宣誓供述書(要署名認証)。
    4. 会社の登録所在地に関連する書類:所在地を置く不動産の使用権を法的に証明する書類(例:所在地登録する不動産の所有者が発行した同意書または賃貸借契約書)。
    5. 事業活動を営むために必要な書類:通常は、営業認可証取得に必要な書類。有限会社の業種により、追加書類の提出を求められる場合がある。
    6. 登録資本金全額またはその一部の払い込みが完了したことを証明する書類:銀行の払込確認書および出資金管理人の宣言書。

    実際の設立手続き上、前記以外の書類が追加で要請される可能性あり。

  2. 設立関連費用
    有限会社の設立関連費用は次のとおり。
    1. 定款の公証人認証費用:手数料は、資本金額により異なる。資本金1億コルナ以上の有限会社の場合、手数料の最高額は約9万5,000コルナ(VAT別)。
    2. 商業登記手数料:管轄の登記裁判所にて登記申請書を直接提出する場合は、6,000コルナ(VAT込)。公証人に登記手続きを依頼する場合は、約4,000コルナ(VAT込)。
    3. 営業許可管理局にて、営業認可証取得にかかる手数料として、1,000コルナ(VAT込)。
    4. その他の費用(例:翻訳費用、原本証明手数料など)。
  3. 書類に関する形式的要件
    チェコの有限会社設立に必要な書類は、すべてチェコ語に翻訳しなければならない(日本語から翻訳する場合は、チェコ司法通訳士の認証印を受けた公式翻訳が必要)。
    日本で発行された署名認証・発行当局公印のある書類は、アポスティーユを付与。

会社設立後の手続き

  1. 会社設立前に代理で行った行為の有効性確認
    有限会社が設立する以前、つまり、商業登記簿登記完了前で有限会社がまだ法律上存在しない期間に有限会社として行った行為は、設立後3カ月以内にその有効性を確認しなければならない。
  2. 当座預金口座の開設
    資本金払込専用の銀行口座は、登録資本金払い込みのみを目的として開設された口座であるため、通常事業のための利用は不可。そのため、各銀行の規定に基づき、登録資本金払込専用口座を当座預金口座へ変更、または別途、口座を新規に開設する。
  3. 税務関係の登録
    該当する税(法人税、道路税、源泉所得税、給与税、付加価値税など)について、有限会社として納税者登録する。
  4. データボックスのアクティベーション
    チェコ国内で設立される会社には、データボックスの所有が義務付けられている。データボックスとは、チェコの公共機関(税務署、営業許可管理局、商業登記関連当局、社会保障局など)が文書の電子送付を行うシステム。セキュリティのかかった「電子メールボックス」であり、ユーザーはログインして、データボックスに送付されてきたメッセージを受け取る。データボックスへ送付した日より10日後に、受取人が通知を受理したものとみなされる。重要な期限を見逃してしまう可能性があるため、データボックスへの通知送付状況を定期的にチェックすることが非常に重要。以上の事情から、データボックスは、会社設立後すぐにアクティベートする必要あり。

株式会社

主な特徴

チェコの株式会社は、次の特性を備えた法的能力を有する法人である。

  • 1人以上の株主により設立(株主は、個人または法人。株主が法人である場合、株主の所在地はチェコ国内でも外国でも可。株主が個人である場合、チェコ国籍に限らず、外国籍でも可)。
  • 株式会社の資本金を特定の株式分に配分(異なる権利が付随した種類株式の発行も可)
  • 会社の構成機関は、2つの企業内機関、すなわち監査役会と取締役会、または、理事会および単独経営者のいずれかを選択することが可能。定款で定めた場合に限り、理事会を1人で形成し、経営者を兼任することができる。
  • 資本金は、最低200万コルナ。資本金の上限金額に制限なし。

設立手続き

  1. 設立手続き概要

    株式会社の設立手続きには2週間程度必要だが、外国企業が株式会社を設立する場合、翻訳作成、アポスティーユ付与、追加書類提出などのため、通常およそ1~3カ月掛かる。手続き内容は次のとおり。

    1. 会社を設立する株主(発起人)が、公正証書の形式にて定款を作成。
    2. 特定住所に所在地を構えるため、所在地を置く不動産の使用権を法的に証する書類の取得。
    3. 資本金払込目的で開設された特別口座への登録資本金払い込み(商業登記簿への登記申請書提出までに、引受株式の名目価格または帳簿価格総額の最低30%が払い込まれていなければならない。未払込金額相当の株式は「仮証書」と呼ばれる有価証券にて代替し、株式は引受株式の名目価格または帳簿価格が全額払い込まれた時点で発行)。
    4. 事業目的に必要な営業認可証を登録。事業活動を営む上で別の許可が必要な場合は当該許可を取得。
    5. 商業登記簿に登記。

    株式会社設立に必要な書類は、一般的に次のとおり。

    1. 公正証書の形式にて作成される定款。
    2. 株主に関する書類(詳細は、有限会社の項目参照)
    3. 最初の取締役会または単独経営者に関する書類(詳細は、有限会社の項目参照)
    4. 最初の監査役、または理事会に関する書類(詳細は、有限会社の項目参照)
    5. 事業活動を営むために必要な書類:通常は、営業認可証取得に必要な書類。株式会社の業種により追加書類の提出を求められる場合がある。
    6. 所在地登録に関連する書類(詳細は、有限会社の項目参照)
    7. 登録資本金の払い込みに関連する書類(詳細は、有限会社の項目参照)

    実際の設立手続き上、前記以外の書類が追加で要請される可能性あり。

  2. 設立関連費用
    株式会社の設立関連費用は次のとおり。
    1. 定款の公証人認証費用:手数料は登録資本金額により異なる。資本金1億コルナ以上の株式会社の場合、手数料の最高額は約9万5,000コルナ(VAT別)。
    2. 商業登記手数料:管轄の登記裁判所にて登記申請書を直接提出する場合は、1万2,000コルナ(VAT込)。公証人に登記手続きを依頼する場合は、約1万コルナ(VAT込)。
    3. 営業許可管理局にて営業認可証取得にかかる手数料として、1,000コルナ(VAT込)。
    4. その他の費用(例:翻訳費用、原本証明手数料など)。
  3. 書類に関する形式的要件
    株式会社設立に必要な書類の形式的要件は有限会社の場合と同様のため、有限会社の項目を参照。

会社設立後の手続き

株式会社の設立後に必要となる手続きは有限会社の場合と同様のため、有限会社の項目を参照。

支店

主な特徴

チェコの支店は、設立者とは独立した会計制度にて営まれるものの、法的な主体としては分離していないため、支店独自で契約関係を結ぶなどの法律行為を履行する行為能力はない。また、次の特性を備えている。

  • 登録資本金はない。
  • 支店長を任命する必要あり(支店長に就任できるのは個人のみ。支店長の国籍はチェコだけではなく、外国籍でもよい)。
  • 経営上の決定は、本社(外国企業の場合、本店所在地は外国)が下し、支店長がその決定内容を履行する。

設立手続き

  1. 設立手続き概要

    支店設立の設立手続きには2週間程度必要だが、外国企業が支店を設立する場合、翻訳作成、アポスティーユ付与、追加書類提出などのため、通常およそ1~2カ月掛かる。手続き内容は次のとおり。

    1. 支店は、設立者の決定書に基づいて設立される。決定書には、設立者の代表(1人または複数人)が署名したものであればよいとされているが、署名認証を受けることが望ましい。
    2. 特定住所に所在地を構えるため、所在地を置く不動産の使用権を法的に証する書類の取得。
    3. 有限会社や株式会社とは異なり、支店に登録資本金はないため、資本金払込専用の銀行口座の開設は不要。
    4. 事業目的に必要な営業認可証を登録。事業活動を営む上で別の許可が必要な場合は当該許可を取得。
    5. チェコ商業登記簿へ登記。

    支店登記に必要な主な書類は次のとおり。

    1. 設立者に関する書類:必要に応じて、発行日から3カ月以内の商業登記簿抄本
    2. 支店設立を決めた設立者の決定書
    3. 支店長に関する書類(詳細は、有限会社の項目参照)
    4. 営業認可取得に必要な書類(支店が取得希望する業種により異なる)。通常は、営業認可証取得に必要な書類。支店の業種により追加書類の提出を求められる場合がある。
    5. 支店の所在地に関する書類(詳細は、有限会社の項目を参照)

    実際の設立手続き上、前記以外の書類が追加で要請される可能性あり。

  2. 設立関連費用
    支店の設立関連費用は次のとおり。
    1. 商業登記簿登記手数料として、合計6,000コルナ(VAT込)。
    2. 営業許可管理局にて営業認可証取得にかかる手数料として、1,000コルナ(VAT込)。
    3. その他の費用(例:翻訳費用、原本証明手数料など)。
  3. 書類に関する形式的要件
    支店設立に必要な書類の形式的要件は有限会社と同じであるため、有限会社の項目参照。

会社設立後の手続き

支店登記の際の税務登録およびデータボックス関連手順は有限会社の場合と同じであるため、有限会社の項目参照。

外国企業の会社清算手続き・必要書類

会社解散の決議と同時に、清算人を指名する。清算人は、当該企業が清算中である旨を商業登録に反映させた上で、関係機関に報告する。

会社の清算、支店の解散の手順

別段の記載がない限り、以下の手順は、会社(有限会社および株式会社)および支店の両方に適用される。

  1. 清算開始の決定/支店解散の決議
    1. 会社:清算手続きは、会社の株主(または株主総会)による会社解散の正式な決議から始まる。この決議は公証人による証書(公証証書)として作成する必要がある。通常、この決議には清算人の選任も含まれる。
    2. 支店:設立者による支店解散の決議から手続きが始まる。この決議には公証は不要で、署名のみで足りる。
  2. 清算人の選任(支店には適用されない)
    会社の定款等に基づき、所定の機関が清算人を選任する。
  3. 清算開始日/支店解散の効力発生日
    1. 会社:清算開始日は、会計上の要件に合わせて月初とすることが一般的であり、この日から清算手続きが開始される。この日以降、会社は事業活動を縮小し、社名に「v likvidaci」(清算中)という表記を追加する必要がある。清算人は、この日より前に商業登記簿への清算開始登録申請を行う。
    2. 支店:解散効力発生日は設立者による解散決議で定められ、その後、商業登記簿への抹消申請に反映される。

    電子媒体で申請(地方裁判所):Ministerstvo spravedlnosti外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(法務省:登記関連サイト)

  4. 財務諸表と会計義務
    1. 会社:少なくとも2つの臨時(監査済み)財務諸表が必要。
      (i)清算開始直前日付のもの、(ii)清算完了日付のもの。通常の(監査済み)財務諸表の作成義務には影響しない。清算人は、開始貸借対照表および会社の資産・負債目録も作成する必要がある。
    2. 支店:解散効力発生日付の最終(監査済み)財務諸表の作成が必要。
  5. 債権者への通知(支店には適用されない)

    清算人は、会社の清算開始を公告し、すべての既知の債権者(サプライヤーや顧客など)に宛てて通知する。また、同内容を商業公報(Obchodní věstník)に2回、2週間以上の間隔を空けて公告する。公告では、債権者(契約当事者)に対し、2回目の公告から少なくとも3カ月以内に債権届出をするよう呼びかける必要があり、この期間が経過するまでは清算を終了できない。清算人は、届出された正当な債権をすべて弁済した後でなければ、残余財産(清算剰余金)を分配できない。従業員の債権は他の債権に優先して弁済される。その他の債権については、清算によってその支払期日が影響を受けることはなく、債権の期日に従い支払いを行う。

    公告発注フォーム “Obchodní Věstník外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  6. 資産の換価・債務整理・事業活動の終了
    1. 会社:清算人は、会社のすべての債権回収、債務弁済、オフバランスや条件付き権利義務の終了、訴訟・行政手続きの完了、雇用などの関係の終了、残余財産(無形資産含む)の処分、賃貸借契約の終了、会社所有資産の返還など、必要な措置を講じる(特に会社が休眠状態でない場合)。事業活動終了後、清算人は営業許可の抹消申請を営業許可局に提出する。
    2. 支店:同様の措置が必要だが、これらは清算人ではなく、通常は支店長が設立者を代表して実施する。
  7. 書類の保存

    会社または支店に関する重要書類(法令で定められたもの)は、清算完了後最大45年間(書類の種類ごとに異なる)保存する義務がある。通常、書類は株主(または支店設立者)または外部の保管サービスにより保管される。一部の書類は、国立公文書館に提出し、保存の要否を確認してもらう必要がある。

    清算人向けの案内ポータル ”Státní oblastní archiv v Praze外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  8. 清算報告書および清算剰余金分配案(支店には適用されない)

    清算終了時、清算人は最終清算報告書および清算剰余金分配案を作成する。関連する(監査済み)財務諸表も同日付で作成される。これらの書類は、清算人を選任した会社の機関の承認が必要である。

  9. 税務当局の同意

    会社または支店が商業登記簿から抹消される前に、清算人は所轄税務当局から同意を得なければならない。税務当局は2カ月以内に決定を下すが、通常は1カ月以内に決定される。もし同意が得られない場合は再申請が必要となり、手続きが遅延することがある。

    税務当局の同意を求める申請書 ”Žádost o souhlas správce daně s výmazem právnické osoby z veřejného rejstříku外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  10. 利益分配および清算剰余金(支店には適用されない)

    清算中は、株主への利益や資本分配はできない。すべての債務が弁済され、清算が完了した後にのみ、残余資産を株主に清算剰余金として分配できる。分配方法は株主が決定し、通常は課税対象となる。清算剰余金は、承認された分配案に基づき、清算人から銀行振込等で株主に支払われる(場合によっては現物分配も可能)。株式会社を清算する場合、剰余金分配前に株主は株券を清算人に提出し、清算人がこれを廃棄する(記名株式の場合は、清算人の指示により証券登録簿から抹消される)。

  11. 確定と登記抹消
    会社または支店は、商業登記簿から登録抹消された日をもって法的に消滅する。

内務省(電子官報サイト):

その他

特になし。