水産物の輸入規制、輸入手続き
品目の定義
本ページで定義する水産物のHSコード
- 030191~030299:
- 魚(活魚・生鮮・冷蔵品)
- 030311~030399:
- 魚(冷凍品)
- 030431~030499:
- 魚のフィレ、その他の魚肉(冷蔵・冷凍品)
- 030520~030579:
- 魚(乾燥・塩蔵・塩水漬け)、くん製した魚
- 030611~030695:
- 甲殻類(活魚・生鮮・冷蔵・冷凍・乾燥・塩蔵・塩水漬け)、くん製した甲殻類、蒸気または水煮による調理をした殻付きの甲殻類
- 030711~030799:
- 貝類・軟体動物(活魚・生鮮・冷蔵・冷凍・乾燥・塩蔵・塩水漬け)、くん製した軟体動物
- 030811~030890:
- 貝類・軟体動物以外の水棲無脊椎動物(活魚・生鮮・冷蔵・冷凍・乾燥・塩蔵・塩水漬け)、くん製した貝類・軟体動物以外の水棲無脊椎動物
- 030910:
-
人間の消費に適した、魚、甲殻類、軟体動物、その他の水生無脊椎動物の小麦粉、食事、ペレット
貝類・軟体動物以外の水棲無脊椎動物(活魚・生鮮・冷蔵・冷凍・乾燥・塩蔵・塩水漬け)、くん製した貝類・軟体動物以外の水棲無脊椎動物
2019年4月1日より、農食品・獣医庁(AVA)が解体、シンガポール食品庁(SFA)が新設されたことで、AVAが所管していた輸入食品及び動植物の管理・検疫業務が三つの組織へ分割移管されました。食品関連はSFAが、非食品関連は国立公園局(NParks)の管轄となり、非食品のうち動物・家畜部門はNParks内の組織である、動物・獣医サービス(AVS)が担当となっています。
輸入食品の品質・安全管理を所管するSFAは、輸入管理品目である食品のHSコードをさらに細かく分類したSFA独自の商品コードを規定(HSコードは、6桁まで世界共通)しており、輸入者は輸入許可申告の際に、HSコードとともにこの商品コードをシンガポール税関およびSFAに申告することが求められます。
シンガポールの輸入規制
1. 輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)
調査時点:2024年1月
シンガポールの法令により輸入が禁止・制限されている品目
水産物の輸入は、シンガポール食品庁(SFA)が所管する食肉・魚介類法および食品販売法により規制されています。シンガポールへ輸出しようとする水産物は、食品販売法の付属規程である食品規則で定められている食品規格を満たしていなければなりません。水産物の食品規格は食品規則の第IV部(食品規格と個別ラベル表示要件)第71~75項(水産品・水産製品)に記載されています。
次の「ハイリスク」に分類される品目については、輸入が禁止・制限されています。
- 輸入禁止品目
- 冷蔵の殻なし生きたカキ、冷蔵ザル貝(トリ貝)、調理済み冷蔵エビ・小エビ、冷蔵カニ肉の4品目の輸入は食品安全上の理由で禁止されています。
- 原産国制限品目
- 生きたカキはSFAの貝類衛生プログラム基準(National Shellfish Sanitation Programme、養殖海域の水質検査分類、養殖海域での監視・検査体制、食中毒起因菌が検出された際の危害防止計画などを含む)を満たす国からのみ輸入が許可され、2024年1月時点で当該輸入が認められている国はオーストラリア、カナダ、フランス、アイルランド、日本(三重県、福岡県、広島県、北海道、宮城県、大分県)、オランダ、ニュージーランド、英国、米国の9カ国となっています。
- 輸出国の衛生証明書が必要な品目
- 生きたカキ(上記9カ国からの輸入)および冷凍カキ、冷凍ザル貝(トリ貝)、調理済み冷凍エビ、生および調理済み冷凍カニ肉の輸入は、積送品ごとに輸出国の食品衛生管轄官庁より発行された、SFAが求める食品安全基準を満たしていることを証明する衛生証明書(Health Certificate)を提出しなければなりません。
- 輸入業者に条件が課せられる品目
-
冷凍アコヤ貝肉(貝柱)のシンガポールへの輸出は、輸入業者が以下を条件に、どの国または地域からでも許可されます。
- サプライヤーと連絡を取り、アコヤ貝肉製品が以下の輸入要件を満たすことを確認するための手順が講じられたことを示す証拠書類を入手することが必要です。
- アコヤ貝の肉製品は、輸出国/地域の所轄官庁によって規制されている施設によって収穫および加工されていること。
- アコヤ貝肉製品は、衛生的な条件下で加工されていること。
- アコヤ貝の肉製品は、シンガポールの食品規則とSFAの輸入要件を満たしていること。
- SFAは、検査チェックの一環として、これらの証拠書類の提出を求める場合があるため、輸入業者は証拠書類の適切な文書記録を維持しなければなりません。
また、フグ(天然フグおよび養殖フグの筋肉と養殖フグの皮(ヒレを含む。子のみ)と精巣に関しては2022年8月31日より、SFA認定の加工施設からのみ輸入可能となりましたが、輸入者は、輸入する前に次の要件に注意する必要があります。
- フグ製品の輸入は、その国/地域のSFA認定のフグ加工施設からのみ許可されています。
輸入される積荷には、それぞれ輸出国/地域の食品衛生管理を管轄する部署が発行した衛生証明書を添付する必要があります。
日本においては、『「農林水産業の輸出力強化戦略」に基づく対応』(平成28年6月3日付け生食発0603第1号厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)に基づき、政府間の取決めによらない証明書の発行は各自治体の判断に委ねられています。
シンガポールの食品安全基準は非公開であり、衛生証明書に記載すべき内容については事前にSFAへの確認が推奨されます。
なお、次の水産物を輸出する際の衛生証明書については、次の内容の記載が求められることが確認されています(2024年1月時点)。 - サプライヤーと連絡を取り、アコヤ貝肉製品が以下の輸入要件を満たすことを確認するための手順が講じられたことを示す証拠書類を入手することが必要です。
- 生きたカキ
-
- 認可された海域で養殖され、認可された加工施設で衛生的な方法によって処理されていること。
- 化学保存料や人体に有害な添加物が処理に使用されていないこと。
- 食用に適していること。
- 冷凍カキ
-
1~2は前記同様。
- 検査の結果、ノロウイルスに感染していないことが判明していること(検査結果を当証明書に添付しなければならない)。
- 食用に適していること。
- 調理済み冷凍エビ/生および調理済み冷凍カニ肉
-
- 認可された施設・工場で衛生的な方法によって処理されていること。
- 加害保存料や人体に有害な添加物が処理に使用されていないこと。
- 食用に適していること。
東京電力福島第一原子力発電所事故にかかる輸入規制
東京電力福島第一原子力発電所事故の発生により、シンガポール向けに輸出される福島県産の食品について、放射性物質検査報告書等を求められる規制措置がとられていましたが、シンガポール政府より、2021年5月28日付けで撤廃する旨通知がありました。しかし、輸入者より引き続き商用インボイス等により都道府県名の確認を求められる場合があります。
ワシントン条約(CITES)該当品目の輸入規制
次の水産物(部位または派生品を含む)の輸入は、ワシントン条約(CITES)の附属書リストに含まれているので、輸出国および輸入国双方のCITES許可を取得しなければなりません。
- (1)CITES 附属書II類
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- チョウザメ(Sturgeon)
- ジンベイザメ(Whale Shark)
- ウバザメ(Basking Shark)
- タツノオトシゴ(Seahorses)
- ホオジロザメ(Great White Shark)
- メガネモチノウオ(Humphead wrasse)
- 地中海イシマテ貝の一種(Mediterranean date mussel)
- モウカザメ(Porbeagle Shark)
- アカシュモクザメ(Scalloped Hammerhead shark)
- ヒラシュモクザメ(Great Hammerhead shark)
- シロシュモクザメ(Smooth Hammerhead shark)
- ヨゴレザメ(Oceanic Whitetip shark)
- オニイトマキエイ属全種(Mobuild rays)
- 欧州ウナギ(European eel)
- (2)CITES 附属書III類
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- エクアドル原産ロックナマコ(Rock Sea Cucumber)
- CITESリストに掲載されたあらゆる動植物の輸入には、事前に「CITES輸入許可」を国立公園局(NParks)のライセンス・許可申請サイト、GoBusinessを通じて取得しなければなりません。また、輸入申告には輸出国の管轄官庁が発行した「CITES輸出・再輸出許可」を事前に取得していることが条件となり、同許可のコピーをオンライン申請時に提出することになります。輸入者は貨物が到着する少なくとも10営業日前に申請しなければならず、CITES輸入許可の取得には申請後、通常7営業日を要します(必要な書類がすべて揃っている場合)。なお、「CITES輸出・再輸出許可」の原本は貨物の通関手続き後、ただちにNParksへ提出しなければなりません。
- CITES輸出入許可にかかる手数料は次のとおりです。
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- CITES輸入・輸出・再輸出許可:1種ごとに12シンガポール・ドル(以下、Sドル)、最低60Sドル
- CITES附属書III掲載種の原産地証明:29.40Sドル
関連リンク
- 関係省庁
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シンガポール税関(英語)
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)
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シンガポール国立公園局(英語)(NParks)
/ 第6章(Miscellaneous)第42(u)項(Rules)にSFAが規則を制定する権限について掲載
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厚生労働省
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農林水産省
- 根拠法等
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食品規制 (Food Regulations)(英語)
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食肉・魚介類法(Wholesome Meat and Fish Act)(英語)
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食肉・魚介類(輸出入・積み替え)規則(Wholesome Meat and Fish (Import, Export and Transhipment) Rules)(英語)
-
絶滅の恐れのある種(輸出入)法(NParks)Endangered Species (Import & Export) Act
- その他参考情報
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シンガポール食品庁(SFA)(英語)Licensing & Registration of Traders
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)Conditions for Specific Types of Food for Import
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)Approved List of Countries/Regions
(58.6 KB)
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)Revised Requirements for Inport of Pufferfish
(137 KB)
-
シンガポール国立公園局(英語)Conditions for Importing & Exporting CITES Species (Animals)
-
厚生労働省(日本語)「輸出力強化戦略」を受けた対応について
(19.7 KB)
-
農林水産省(日本語)シンガポール向け輸出水産食品の取扱要綱
(230 KB)
-
農林水産省(日本語)「シンガポールによる日本産食品の輸入規制の撤廃について」
(113 KB)
2. 施設登録、輸出事業者登録、輸出に必要な書類等(輸出者側で必要な手続き)
調査時点:2024年1月
ワシントン条約(CITES)該当品目である水産物を輸出する場合は、日本政府が発行した「CITES輸出・再輸出許可」を事前に取得する必要があります。
また必要に応じて、輸出国発行の衛生証明書が発行となります。衛生証明書の記載事項については、事前にシンガポール食品庁(SFA)への確認が推奨されます。詳しくは、「1.輸入禁止(停止)、制限品目(放射性物質規制等)」も併せて参照してください。
なお、フグ・カキについては、日本からの輸出の際に次の要件を満たしていなければなりません。
- フグ
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- 局長通知に規定された、「処理等により人の健康を損なうおそれがないと認められるフグの種類及び部位」のうち筋肉並びに養殖されたフグの皮(ヒレを含む。)及び精巣(しらこ)のみであること。ただし、養殖されたフグの皮(ヒレを含む。)及び精巣にあっては、「ふぐの取扱い及びふぐ処理者の 認定に関する指針(ガイドライン)について」(令和2年5月1日付け生食発第0501第10号)に基づくガイドラインを踏まえ都道府県知事等が 認定したフグ処理者により処理されたものに限ります。
- 局長通知及び各自治体の条例又は要綱等に基づく事項について、適正に処理されたものであること。
- 各自治体の条例又は要綱等により都道府県知事等が認める者(以下「フグ処理者」という。)及び施設により、処理、加工されたものであること。
- 日本においてヒトが消費するための食品として販売することが可能であること。
- これらの要件を満たしていることを前提に、シンガポールにフグを輸出するフグ処理者は、フグ処理者およびフグを処理した施設を管轄する都道府県等衛生主管部局に対して、衛生証明書の発行を申請する必要があります(電子メールや輸出・港湾関連情報システム(NACCS)経由での申請可)。
- カキ
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- カキの生産海域を管轄する都道府県が次の5つの事項を含む貝類衛生プログラムを策定し、農林水産省を通じてシンガポール食品庁へ提出し、シンガポール食品庁による承認を受けていること。
- 生産海域
- 生産海域の水質の状況、モニタリング及び検査の方法
- 貝毒が確認された場合の対応(出荷規制、解除等)
- 回収プログラム及び手続
- 衛生証明書の様式、発行機関及び発行方法
- aの貝類衛生プログラムに基づき生産されたカキであること。
- カキの生産海域を管轄する都道府県が次の5つの事項を含む貝類衛生プログラムを策定し、農林水産省を通じてシンガポール食品庁へ提出し、シンガポール食品庁による承認を受けていること。
- これらの要件を満たしていることを前提に、シンガポールにカキを輸出する輸出業者は、輸出しようとするカキの生産海域を管轄する都道府県水産部局に対して、衛生証明書の発行を申請する必要があります(電子メールや輸出・港湾関連情報システム(NACCS)経由での申請可)。
3. 動植物検疫の有無
調査時点:2024年1月
水産物の輸入規制は、食肉・魚介類法で定められています。水産物は、どの国からでも輸入が認められており、原則、検疫は不要です。しかし、次のハイリスク製品に分類される品目は輸出国が発行する衛生証明書の提示が求められています。
- 冷凍カキ
- 冷凍ザル貝(トリ貝)
- 調理済み冷凍エビ
- 生および調理済み冷凍カニ肉
- 生きたカキ(三重県産、福岡県産、広島県産、北海道産、宮城県産、大分県産)
関連リンク
- 関係省庁
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)
- 根拠法等
-
食肉・魚介類法(Wholesome Meat and Fish Act)(英語)
/ 第2部(Control of Import, Export and Transhipment of Meat Products and Fish Products)第10項(Inspection of meat products and fish products upon import or prior to export)に食肉・魚介類の輸入時検査規定について掲載
-
食肉・魚介類(輸出入・積み替え)規則(Wholesome Meat and Fish (Import, Export and Transhipment) Rules)(英語)
/ 第5項(Licensee importing or transhipping meat products and fish products to submit certain documents)に食肉・魚介類の輸入ライセンス規定について掲載
- その他参考情報
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)Conditions for Specific Types of Food for Import
-
シンガポール食品庁(SFA)(英語)Commercial Food Exports
シンガポール内の輸入関税等
1. 関税
調査時点:2024年1月
水産物は関税の課税対象品目ではありません。
関連リンク
- 関係省庁
-
シンガポール内国歳入庁(IRAS)(英語)
-
シンガポール税関(英語)
/ 第2項(Duties to be levied)および第1付表に諸税の税率が掲載
- 根拠法等
-
税関法 (Customs Act)(英語)
-
税関(諸税)指令 (Customs (Duties) Order)(英語)
- その他参考情報
-
シンガポール税関 Establishing the Customs Value(英語)
-
シンガポール税関 Duties & Dutiable Goods(英語)
- ジェトロ 世界各国の関税率(World Tariff)
- ジェトロ 国・地域別-シンガポール―関税制度
2. その他の税
調査時点:2024年1月
物品税
水産物は物品税の課税対象品目ではありません。
財・サービス税(GST)
あらゆる商品の輸入者は輸入申告の際にCIF価額(FOB価額+保険料+運賃)に関税、物品税、手数料を足した合計に9%の税率をかけた財・サービス税(GST、日本の消費税に相当)をシンガポール税関に納付しなければなりません。
輸入者は、シンガポール内国歳入局(IRAS)にGSTを登録しておくと、3カ月ごとに売上税額(売上時に販売先から回収するGST)と仕入税額(輸入時に税関に支払ったGST)とを相殺(仕入税額控除)し、その差額をIRASに納付することになります。
関連リンク
- 関係省庁
-
シンガポール内国歳入庁(IRAS)(英語)
-
シンガポール税関(英語)
- 根拠法等
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税関法 (Customs Act)(英語)
-
税関(諸税)指令 (Customs (Duties) Order)(英語)
/ 第2項(Duties to be levied)および第1付表に諸税の税率が掲載
-
財・サービス税法 (Goods and Services Tax Act)(英語)
- その他参考情報
-
シンガポール内国歳入庁(IRAS) GST Guide on Imports(英語)
/ 「GST on Imports」項
-
シンガポール税関 Import Procedures(英語)
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シンガポール税関 Establishing the Customs Value(英語)
-
シンガポール税関 Duties & Dutiable Goods(英語)
-
シンガポール税関 List of Dutiable Goods(英語)
- ジェトロ 世界各国の関税率(World Tariff)
- ジェトロ 国・地域別-シンガポール―関税制度
- ジェトロ 少額輸入品へのGST適用免除措置が廃止に(2023年02月13日)
3. その他
調査時点:2024年1月
なし
その他
調査時点:2024年1月
なし