少額輸入品へのGST適用免除措置が廃止に

(シンガポール)

シンガポール発

2023年02月13日

シンガポールでは2023年1月1日から、シンガポール国内事業者との競争の公平性の観点から、少額輸入品に関しても物品・サービス税(Goods & Services Tax:GST)が課された。従来、400シンガポール・ドル(約4万円、Sドル、1Sドル=約100円)以下の航空貨物、郵便貨物へのGST適用は免除されていた。なお、GST課税業者として登録していない事業者が取り扱う400Sドル以下の貨物については引き続きGST適用が免除される。

また、GSTの税率は、従来の7%から、2023年1月1日以降8%となった。政府は2022年3月10日、2022年の国家予算の発表と併せて、少子高齢化による福祉予算増大への財源としてGSTの税率改定を公表していた。さらに、2024年1月1日以降は9%へ増税される。

越境EC(電子商取引)事業者など、400Sドル以下の少額輸入品をシンガポールに輸出している海外事業者は、以下の「(1)見込み基準」、もしくは「(2)実績基準」のいずれかの条件を満たす場合、シンガポールの海外ベンダー登録(Overseas Vendor Regime:OVR)制度を通して、GSTの課税事業者として登録後、販売時にGSTを課す必要がある。

まず、(1)見込み基準については、今後12カ月の総売上高が100万Sドルを超える見込みで、かつ今後12カ月で、GSTを登録していないシンガポールの最終顧客に対するリモートサービスおよび少額輸入品の売上高の合計が10万Sドルを超える見込みの場合だ。

次に、(2)実績基準については、過去1~12月の総売上高が100万Sドルを超え、かつ過去1~12月で、GSTを登録していないシンガポールの最終顧客に対するリモートサービスおよび少額輸入品の売上高の合計が10万Sドルを超えている場合だ。

なお、海外事業者がプラットフォームを使用してシンガポールの最終顧客に直接販売せず、(1)プラットフォーム運営会社、輸送業者、商社などに直接販売した後、(2)プラットフォーム運営会社や輸送業者などがシンガポールの最終顧客に販売する場合には、(1)はB2B取引のため、プラットフォーム運営会社や輸送業者がシンガポールのGST登録会社であれば、GST課税事業者の登録義務を判定する数値から除くことができる。

現地にGST申告できる者がいない場合は、納税代理人を選任することで対応

GST課税事業者登録していれば海外事業者であっても、原則、自社でGSTを申告しないといけない。シンガポールの子会社、会計事務所など納税代理人を選任することも可能だ。

なお、OVR制度によりGST課税事業者登録した海外事業者については、簡易的な申告が認められる。海外事業者は通常、シンガポールの顧客から徴収したGSTを申告、納税するだけで、控除できる仮払いGSTなどが発生しない場合が多いため、仮受けGSTなどのみを申告する制度(Simplified Pay-only Regime)を利用することが可能になっている。

GSTの申告ならびに納税期限は四半期ごとの決算期から1カ月以内となっており、海外の口座からシンガポールの税務当局である内国歳入庁(IRAS)の銀行口座へ送金する必要がある。

(玉置仁)

(シンガポール)

ビジネス短信 5700d91f9a217f72