サクセスストーリー

Whoscallの日本での成功を後押しした信頼とパートナーシップ

電話やSMS、URLを利用した迷惑行為が横行するこのデジタル時代において、台湾のTrustTechスタートアップ企業であるGogolookが開発したWhoscallアプリは、まるで頼れる門番のような役割を果たす。迷惑電話をブロックし、SMSを利用した詐欺メッセージや悪意のあるURLを検出・通知することで、世界中で1億人を超えるユーザーに安心をもたらしているのだ。2010年のローンチ以降、AI技術を活用し、世界的なリーチの拡大によって獲得した膨大なデータベースを持ったこのツールは、通信詐欺に対抗する強力な武器となった。

Whoscall の日本でのローンチが決定されると、Gogolookの共同創設者兼CEOであるジェフ・クオ氏は、効果的な市場進出の土台を築くため、市場調査、インサイトの提供、および関係機関との仲介をジェトロに依頼した。そのクオ氏とWhoscall の⽇本事業責任者、ロー・ウェイチェン氏に、コロナ禍にどのように海外市場に進出し、パートナーシップと協働を成功させて信頼を築いたのか、また今後の計画についても話を伺った。

設立年月
2020/11
進出先
九州・沖縄・福岡市

  • デジタル・AI
  • 台湾

掲載年月 : 2024/03

日本への戦略的な進出を決めたきっかけと狙い

GogolookがWhoscallの日本進出を決めたきっかけは、コロナ禍で浮かび上がった課題と機会に大きく関連していた。「福岡市が2020年6月に開催した概念実証(PoC)イベント、『Beyond Coronavirus』実証実験プロジェクトに参加しました」とクオ氏は説明する。このイベントでは、コロナ禍にデジタル詐欺の迷惑電話が急増していたこと、そして、Whoscallのようなソリューションが早急に必要であることが強調されていた。

その市場規模の大きさから、Gogolookにとって日本進出は魅力的な選択肢だったという。「日本進出には大きな課題もありました。しかし、その経済規模や人口の多さは非常に魅力的でした」。ジェトロは、市場調査、インサイトの提供、そして関係機関との仲介を通してGogolookの市場進出に大きく貢献した。ジェトロの支援の恩恵についてクオ氏は次のように述べた。「ジェトロの支援のおかげで日本市場への進出に必要な情報を首尾よく収集し、自治体や民間企業との間に人脈や関係性を構築することができました」

Whoscall株式会社 代表取締役 ジェフ・クオ氏

日本法人設立にかけた強い想い

2020年11月の⽇本法⼈「Whoscall株式会社」の設立は、Gogolookにとって大きなステップとなった。コロナ禍という状況もあり、市場進出の障害を解決するためには柔軟な対応力はもちろん、戦略的なパートナーシップが不可欠だった。ジェトロや福岡市との連携は、Gogolookを現地の人材やネットワークと繋ぐ重要な役割を担っていたのだ。

日本法人の設立には慎重な計画が求められた。厳しい移動制限が設けられ、入国には15日の隔離が義務付けられていたため、1か月の出張でも主要業務に取り掛かれる期間は実質7日間しかなかった。「コロナ禍での法人設立は大胆な挑戦でした」とクオ氏は振り返る。「それでも、日本市場に向けて私たちの強い気持ちを示すことが非常に重要だと確信していました」

スタートアップに優しい福岡市に事業進出の足場を築く

福岡市をWhoscallの日本拠点に選んだ理由はいくつかある。「福岡市はスタートアップ支援に積極的で、イノベーションハブとしての評判もありました。補助金や助成金、減税措置などの支援政策も多く、日本での事業運営には理想的かつ魅力的な場所だったのです」とクオ氏は語る。

当時、福岡市が詐欺行為の急増に対処しようと取り組みを進めていたこともあり、Gogolookのサービスを展開するには最適な場所であったとクオ氏は言う。都市が抱える直近のニーズに自社の製品やサービスを関連付けることで、Whoscallの必要性を効果的にアピールできたのだ。

福岡市実証実験フルサポート事業の活用は、Whoscallを地域のニーズに合わせて改良するうえで非常に重要なステップであり、「SMSアシスタント機能」などの新機能の開発にも貢献した。

迷惑電話を瞬時に識別しブロックするWhoscallの機能

進む自治体との連携

福岡市での事業の成功を受け、Gogolookは日本国内の他の自治体にも連携範囲を広げようと計画中だ。「私たちの目標は、さらに多くの地方自治体とパートナーシップを確立し、社会問題となっている詐欺行為を当社のテクノロジーを活用して解決することで、すべての人が安心・安全に暮らせる社会を作ることです」とロー氏は話し、また次のように付け加えた。「福岡市との連携で前向きな反応が得られたことで、日本全国に同様のパートナーシップを広げていく自信になりました」

Whoscallはサービスの提供以外にも、デジタルセキュリティのリスクに関する人々の理解や意識の向上も図っており、自社を、公共の安全とデジタルリテラシーの積極的な推進者と位置付ける。ワークショップやセミナーの開催に留まらず、APIを介して膨大なデータベースを共有することで企業が通信チャネルを効果的に保護できるよう支援している。

Whoscall株式会社 日本事業責任者 ウェイチェン・ロー氏

革新的なテクノロジーと啓発活動、そして戦略的なパートナーシップを組み合わせたこのアプローチは、日本への市場進出の課題を解決するうえでも重要な役割を果たした。Gogolookが日本進出に成功したのは、イノベーション、品質、そして顧客中心のアプローチを徹底的に重視した結果だ。今回の成功は、単なる事業拡大戦略の勝利ではなく、地域社会に焦点を当てた統合型の事業モデルの有効性を示している。

新たな章の幕開け―Whoscallで日本のデジタルトラストの未来を開く

Gogolookは将来を見据え、BtoB向けサービスを中心とした戦略による日本での事業規模の拡大を目指している。BtoBは、信頼こそが最大の価値となる領域だ。クオ氏は、「BtoB戦略の強化が今後の焦点となります」と語り、日本市場に、Whoscallが提供する高度な詐欺防止機能への大きな需要があることを強調する。

Gogolookの日本進出の成功には、2つの重要な要因がある。それは、信頼の構築と、市場ニーズに合わせたBtoBサービスのカスタマイズだ。クオ氏は、将来的にはWhoscallが、デジタルセキュリティにおける包括的なサービスを提供する役割を担っていくことを期待している。「Whoscallをワンストップの詐欺防止ソリューションに進化させたいと考えています。企業や個人が安心して通信ツールを利用できる環境の実現に向けて尽力していきます」

Gogolookは、今後もWhoscallの日本におけるリーチ拡大と機能性の充実化を計画しており、引き続きデジタルセキュリティの向上と新たなテクノロジーの創出に取り組んでいく予定だ。

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