swissQprint Japan株式会社
業務用大判インクジェットプリンター(フラットヘッドタイプ)の製造・販売を行うスイス企業swissQprintAGは2017年2月、日本での技術サポートと販路拡大を目的に日本法人swissQprint Japanを横浜市に設立した。2018年1月にはアジアの技術者向けの研修施設を兼ねたショールームを開設し、日本を拠点にアジア市場の開拓も目指す。本社アジア地区営業責任者のアドリアーノ・グット氏と、日本法人の代表取締役社長である大野透氏に聞いた。
本社のあるザンクトガレン州は東スイスの中心であり、精密産業やICT産業の集積地としても知られる。同州のアルトシュテッテンの高機能デジタルカッターメーカーのプリンター部門で働いていた3人の技術者が、ハイエンドの大判プリンターを作る志を共有して独立し、2007年にswissQprintを創業した。最高経営責任者のレト・エイシャー氏を含む3人の創業者は今も事業運営に携わっている。
大判ながらも高速かつ高精細な印刷が可能な高機能UVフラットベッドプリンターを強みに売り上げを伸ばし、現在では3つの子会社(日本、ドイツ、米国)とセールスパートナーを介して約40カ国に展開、従業員数は全世界で120名と、地域を代表する企業に成長した。
プリンター界のロールスロイス
swissQprint製のプリンターは、高速、高精細、拡張性と信頼性の高さで「プリンター界のロールスロイス」と評されており、次の3つの製品ラインを揃える。
swissQprintの製品ライン
製品 | フラットベッドサイズ(メートル) | 最大印刷速度(時速、平方メートル) |
---|---|---|
エントリーモデル「Oryx」 | 2.5×2 | 65 |
ハイパフォーマンスモデル「Impara」 | 2.5×2 | 317 |
多様な機能オプションを備えた「Nyala」 | 2.5×2 | 370 |
同社の販売台数の約半数を占める「Nyala」は、欧州で販売された13~50万ユーロの価格帯の大型フラッドヘッド・ハイブリッドプリンターの中で、2015~17年に3年連続で最大の販売台数だったという。ユニット化された機器を自由に組み合わせられるため(モジュール方式)、顧客ニーズに応じた設定や機能拡張が可能だ。これにより、紙、フィルム、アクリル板、木材、金属、ガラスなど幅広い素材に印刷できる。インクの色の自由な組み合わせや厚盛りも可能だ。主な顧客はサイン・ディスプレイ業界、印刷業界だが、今後は、建材・家具メーカーなどへの顧客拡大を見込む。
問題発覚からわずか2カ月で日本法人を設立
日本市場には2012年より総代理店を通じて販売を開始し、順調に販売台数を伸ばし約30台の納入実績を有していた。しかし2016年12 月に総代理店に問題が発覚し、突然事業を停止するとの報が入った。アジア地区営業責任者のアドリアーノ・グット氏は同月ジェトロ・ジュネーブ事務所に相談。既存顧客を安心させるためすぐに日本へ赴き事情を説明するようにとのアドバイスを受けた。それを踏まえ、グット氏はその数日後に訪日し、顧客を1社1社回り彼らの不安払拭に努めた。
同社は、既に相当数いる日本の顧客へのメンテナンスサポートの必要性や、将来の潜在的市場規模を考慮すると、日本で新たな代理店を探すよりも自社法人を立ち上げ直接参入に切り替えたほうがよいと判断。日本法人設立については、ジェトロ、神奈川県、横浜市から、拠点設立に係るコンサルテーション、サービス・プロバイダー紹介、インセンティブ情報の提供を受けた。「全ては、とても早く進んだ」とグット氏は語る。
2017年2月、swissQprintは日本市場における技術サポート・営業・サービス活動、および消耗品の販売を本格的に開始するため、神奈川県横浜市に100%出資の日本法人swissQprint Japanを設立した。2018年1月にはより交通の便の良い新横浜駅近くにショールーム・倉庫・オフィスを兼ねた新拠点を開設、移転した。
本社アジア地区営業責任者のグット氏(右)と、日本法人代表取締役社長の大野氏(左)
日本に加え、アジア太平洋でも市場開拓めざす
swissQprint Japanの代表取締役社長・大野透氏は、新拠点から日本における営業活動を本格化し、プリンターの拡販・サービスの全国展開を進めていくと語る。初年度目標は20%のマーケットシェアの獲得で、順調に受注している。また、新拠点では同社のセールスパートナーであるアジアの技術者に向けた研修の実施を予定しており、アジア太平洋市場の開拓も目指しているという。
グット氏は「日本には業務用プリンターで世界に知られたメーカーが沢山あるが、だからこそ、日本市場の開拓をしようと思った。日本でうまく行けば、アジア市場にも展開できる。日本はプリンターメーカーにとってフラッグシップとなる市場だ。日本の顧客の要求レベルは高いが、一度信頼を得れば長期的な取引ができる」と語った。
新設のショールームで、「Nyala」の製品見本を手にする大野社長
ジェトロの支援内容
ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター(IBSC)では、同社の日本拠点設立に際し、テンポラリーオフィスの提供(IBSCかながわ)、会社設立手続き支援(登記、税務、労務)、自治体(横浜市)の紹介などの支援を提供した。
同社は、日本の総代理店の問題発覚直後にジェトロ・ジュネーブ事務所の助言を受け速やかに行動したことで、顧客の信頼を損なうことなく、スムーズに日本での活動を継続させる基盤を整えることに成功した。「最初の助言から法人設立まで、ジェトロのサポートには非常に感謝している」とグット氏は述べた。
(2018年5月取材)
同社沿革
- 2007年
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スイス・ザンクトガレン州にswissQprintを設立
- 2017年2月
-
アジア初の拠点として、神奈川県横浜市にswissQprint Japanを設立
- 2018年1月
-
新横浜駅近くにショールーム・倉庫・オフィスを兼ねた新拠点を開設
swissQprint Japan株式会社
- 設立
-
2017年2月
- 事業概要
-
インクジェットプリンター及びインク・消耗品の輸入、販売、サービスサポート
- 資本金
-
1,000万円(2017年8月現在)
- 親会社
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swissQprint AG(スイス)
- 住所
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〒222-0033 横浜市港北区新横浜 3-2-6
- URL
ジェトロの支援
- テンポラリーオフィス(IBSCかながわ)の提供
- 日本での法人設立に関するコンサルテーションサービスの提供
- 自治体(横浜市)との面談アレンジ
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