サクセスストーリー

株式会社フィリップス・ジャパン

19世紀の事業開始以来、世界100ヵ国以上に展開し、時代と共に変化し続けてきたフィリップス。IoT時代においても世界のヘルステック分野の最先端を走り、業界をリードする。高齢化が急速に進む日本市場において、様々な課題解決のソリューションを提供し、世界から注目されている同社の取り組みについて、株式会社フィリップス・ジャパンの堤浩幸代表取締役社長に話を聞いた。

設立年月
1953
進出先
東京都

  • ICT
  • オランダオランダ

掲載年月 : 2018/04

「つなぐ」をキーワードに進化

2025年までに、自社の製品・サービスを通じて全世界で30億人の生活を向上させることを目標とするフィリップス。2017年10月、日本法人は社名を株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンから、株式会社フィリップス・ジャパンに変更し、ヘルステック企業として世界No.1となることを目指し、大きく舵を切った。

同社は、音響・TV、照明といった、これまで築いてきたエレクトロニクス企業の冠を捨て、「つなぐ」をキーワードに、モノを売る企業からIoTを駆使してヘルスケアに関するソリューションを提供する企業へと変革を遂げようとしている。「つなぐ」ものは、機器、病院、コミュニティ、遠隔地域と広く、実現すれば人々の生活を大きく変えるものとなる。健康な生活のサポートから、予防、治療、診断、ホームケアまで、全てのライフサイクルにおいて「健康」をサポートするため、自社独自のクラウドプラットフォーム(Philips HealthSuite Digital Platform、HSDP)を整備したことからも、そのIoT化にかける本気度が見て取れる。

日本も健康人口を増やすための「予防」が重要

日本は、世界第3位の規模を有する医療市場であるが、フィリップスにとっても世界3位の重要な市場である。都市化、過疎化が進み、地域によっては医療従事者の不足が顕著であり、現場ではITやデジタル技術を駆使した効率化が不可欠になっている。堤社長は、「世界トップクラスのITインフラが整っている」と日本を評価しており、大いに今後の市場成長が期待できると考えている。 堤社長は、日本は特に「予防」によって「健康な人」を増やすことが必要と強調する。病気の発生リスクを軽減するだけでなく、それによる政府の医療費削減、予算健全化効果も大きいと見ている。

例えば、口腔ケア分野で、フィリップスには音波電動歯ブラシがある。欧米では、電動歯ブラシの使用率は70~80%だが、日本では20~30%程度。電動歯ブラシの日本での普及率をもっと上げたいと話す。

そして、この電動歯ブラシも「つなぐ」化が進んでいる。2017年9月から、主力製品であるソニケアをBlue ToothでPCやスマートフォンと繋ぐことで、磨き残しの確認、歯科治療時のデータ活用などが可能となった。また、子供向けのアプリを使うと、楽しみながら正しい歯磨きの指導を、モニターを見ながら受けることができる。

株式会社フィリップス・ジャパン 堤浩幸 代表取締役社長

同様に、睡眠時無呼吸症候群についても、つなぐ化による予防が図られている。フィリップスの睡眠呼吸障害治療装置(CPAP)は、日本国内に400万人の患者がいるこの病気の在宅での治療に役立つ。2018年1月からは、在宅での睡眠時のデータを全てHSDPに蓄積し、的確な情報を患者、医師に提供することができるようになった。

日本企業はパートナー

フィリップスは日本において販売のみではなく、調達も行っており、日本の中堅・中小企業との取引も多い。それらはPHILIPSブランドの製品の一部となり、日本から世界に輸出されている。例えば、一般社団法人「日本医工ものづくりコモンズ」によるマッチングを通じ、有望な日本の中小企業を積極的に発掘し、取引を行ってきた。

また、同社は日本で新たなソフトウェアの開発も行っている。MRI用のアプリケーションもその一つで、日本で基礎開発の3割を行い、海外で実用化している。

このようにフィリップスは、日本企業とのパートナシップを重視しており、堤社長は、「今後は、ジェトロにも提携候補となる日本企業を紹介してもらいたい」と期待を示す。また、「日本企業には、もっとフィリップスを利用して欲しい」という。フィリップスのブランド、ネットワークを使い、海外展開を加速してもらえれば、日本企業とのWin-Winの関係が築ける、日本のものを世界に羽ばたく製品にするため一緒に取り組んで行きたいと語った。

日本政府の補助金を活用しプロジェクトを前進

2016年度、フィリップスは経済産業省とジェトロが募集した「グローバルイノベーション拠点設立等支援事業」に採択され、日本政府の補助金を受けて二つの研究開発を実施した。その一つ、「遠隔集中治療患者管理プログラム」では、昭和大学病院の中に研究開発拠点を設置し、複数の病院の集中治療室(ICU)をネットワークで接続。同社が目指す、遠隔からネットワークを通じて複数のICU患者の状態や生体情報、投薬履歴などをモニタリングできるシステムの実現に役立てる実証実験を行った。

もう一つは、複数の病院間をネットワークで接続し、「遠隔病理支援(デジタル・パソロジー)」を行うシステムである。患者から採取された癌などの病変組織や細胞を顕微鏡で観察して診断する「病理専門医」は日本国内で絶対的に不足しており、深刻な問題となっているが、このシステムにより、地域医療連携の促進や複数の病理医が関与することによる医療の質の向上などが期待できる。

堤社長は、「世界的に見ると、両分野とも米国が進んでいるが、日本のやり方は米国とは違い、日本で開発したものを世界に展開していける可能性がある。日本が遅れているという意味ではなく、相互補完が可能」と考えており、今回の補助事業を通じて、その実現を目指している。

デジタル・パソロジーについては、プロジェクトが順調に進み、2017年12月に薬事法の承認が下りた。実際の病理診断業務に関わる病理専門医の数は全国で1,700人とも言われているが、このシステムは病理医の業務負担軽減に多いに役立つため、医療現場からの期待が高い。

日本での課題は人材採用

日本で苦労していることの一つは人材の採用だという。特に、関連会社のフィリップス・レスピロニクス合同会社を含めると全国74ヵ所に展開し、1,500台の車をリースするほど地方に拠点を広げているフィリップスにとって、地方での医師、看護師、放射線技師、IT人材の雇用は不可欠であるが、簡単には進んでいない。人材の東京一極集中が進んでおり、新規採用の難しさを日々感じているという。No.1ヘルステック企業として、サステイナブルな事業を行い、日本発のイノベーションを行うべく、人材育成、開発にも力を注いでいきたいという。

(2017年11月取材)

同社沿革

1891年

炭素フィラメント電球の製造で事業開始

1912年

オランダにて株式公開

1952年

フィリップス白熱電球製造株式会社(オランダ本社)と松下電器産業株式会社が合弁会社、松下電子工業株式会社を設立

1953年

日本電子開発株式会社がフィリップス製品の日本への輸入販売を開始、日本でのフィリップスがスタート

1990年

日本フィリップス株式会社とフィリップス株式会社が合併し、日本フィリップス株式会社となる

2005年

日本フィリップス株式会社とフィリップス メディカル システムズ株式会社が合併し、株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンに変更

2010年

フジ・レスピロニクス株式会社が社名をフィリップス・レスピロニクス合同会社に変更

2017年

株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパンの社名を株式会社フィリップス・ジャパンに変更

株式会社フィリップス・ジャパン

設立

1953年

親会社(グループ)

Royal Philips

資本金

30億円

住所

〒108‐8507 東京都港区港南2-13-37 フィリップスビル

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