サクセスストーリー

GBS株式会社

GBS株式会社は、ドイツのアウグスブルグに本社を置くスタートアップ、GBS German Bionic Systems GmbHの日本法人だ。同社は、次世代エクソスケルトン/パワースーツを開発・製造している。2018年に設立され、日本のみならず、東アジアおよび東南アジア市場の統括拠点として位置づけられている。労働単価の高い地域は特に安定的な生産性の維持・確保が大きな課題であり、パワースーツは注目を集めている。また、コロナ禍により、産業現場でもより少ない人員での作業が求められている。同社は、IoT対応のパワースーツ、それを実現するソフトウェア技術を基に、サービスとしてのロボティクス(RaaS)業界を先導する。同社の取り組みと日本でのビジネスについて、代表取締役社長の山下英夫氏に聞いた。

設立年月
2018/12
進出先
東京都・神奈川県

  • ICT
  • 機械・半導体
  • ドイツ

掲載年月 : 2021/04

パワースーツによる労働環境改善で一石三鳥の効果を期待

産業現場における労働者の作業不能や休業の主因の一つとして、腰部筋骨格障害(MSD)が挙げられる。MSDは、作業時に脊髄に不均等な圧力がかる不安定な持ち上げ方や、継続的な持ち上げ動作などが原因となる。日本のような高齢化社会では、MSDに伴う労働稼働日の減少が7兆円の経済的損失につながるなど、大きな社会問題となっている。

このMSDの防止のために開発されたのが、エクソスケルトン/パワースーツ(注1)だ。German Bionic Systems GmbH(以下、German Bionic)は、ドイツのロボティクス企業「KUKA」出身の技術者により2016年に創業された。German Bionicのパワースーツ「Cray X」は、腰部をまっすぐに保つとともに、モーターで作業員の身体をサポートすることで、持ち上げ時に腰の負担を最大28キログラム低減する。また、交換可能な標準バッテリー1つで最大8時間まで利用が可能である。競合製品と比較し、負担の軽減は3~5倍、作動時間は2倍の効率化を実現している。

  1. (注1)

    エクソスケルトン/パワースーツ:フレームが露出されるパワースーツの一般的形態の1つ。その他には、フレームが見えない衣類型などがある。

「Cray X」はパワースーツとしての機能の他に、産業現場で様々なセンサーとつながる産業用IoT機器としても機能する。「Cray X」搭載のWiFi/LTEモデムにより、OTA(Over the Air、注2)によるソフトウェアの更新、予知保全を可能とする。更に現場の作業状況をデータで見える化することで、従業員の健康管理や現場の効率性などに関するデータの取得、分析、更新ができる。また、専用バイザーと組み合わせることで、作業員の頭部を保護するとともに、バイザーに搭載されたディスプレイを通じて、作業管理者は、作業員に対して作業に関連する指示や工場内情報を視覚的に通知することもできる。

  1. (注2)

    Over the Air: サーバーと機器間で信号や情報を無線で送受信すること。データ送受信を空中で行うという意味。

パワースーツ向けIoTソフトウェアは同社が世界で初めて開発し、「German Bionic IO」と名付けられた。GBSはパワースーツとIoTの組み合わせを月額8万4,000円からのサブスクリプションで提供するRaaS(Robotics as a Service)のビジネスモデルを展開する。

第4世代の「Cray X」。パワースーツ機能に加え、OTA機能を搭載することで、SW更新、産業現場でのデータ・作業員の健康情報などの取得・分析が可能。

幅広い産業で利用できることも「Cray X」の特徴だ。利用実績分野は、製造、物流、航空、建設、災害復旧など多岐にわたり、IKEA、BMW、DBシェンカー、シュトゥットガルト空港など、世界的に多くの企業で実際に採用されている。山下氏は、「「Cray X」の導入により、現場では職員の身体的負担の軽減、経営では高齢者や女性など雇用範囲の拡大による人手不足の解消、社会的には経済活動層の拡大の一石三鳥の効果がある」と話す。優れた技術力とこれまでの実績は、2020年12月のサムスン電子の米国CVC「Samsung Catalyst Fund」とドイツの有力ベンチャーキャピタルのMIG AGなどからの2,000万USドルのシリーズAの資金調達につながった。

「Cray X」は、製造、物流、災害復旧など多岐にわたる産業現場で活用されている。


ロボティクス産業の中心地「日本」からアジア市場を攻略

German Bionicの日本法人であるGBS株式会社(以下、GBS)は、2018年に東京に設立された。GBSは、2019年10月に日本電産シンポ株式会社との協業発表しており、国際ロボット展2019に共同展示した。また同年、ビックカメラとの共同プロモーションを実施するとともに、同社の物流倉庫にパワースーツを導入している。

GBSは、東京だけでなく川崎市の新川崎・創造のもり「AIRBIC」に研究開発オフィスを構えており、進出当時より自治体からも積極的な支援を受けている。山下氏はこのAIRBICについて、「スタートアップから大企業まで、バイオ、ロボティクスなど様々な分野の企業のR&D拠点が揃っており、オフィススペースの利用のみならず、セミナーや交流会などで定期的に情報交換が行われるため、日本でのビジネス戦略を立てる際にも非常に役立っている」と述べた。

また、「GBSがアジア進出の統括拠点として日本を選んだ理由は、ロボティクス産業全体を見回すと、産業全体をリードしている企業として、日本企業の名前が多く挙げられたこと。また、パワースーツ市場でも、日本企業がキープレイヤーとして位置し、最も成熟していることが魅力的だった」と山下氏は語る。GBSは、日本をアジア市場の統括拠点として、特に国際物流のハブでありながら労働単価の高い、日本、シンガポール、韓国などを主要マーケットにしつつ、更に東アジア、東南アジアも管轄している。日本以外のアジア諸国でも導入が進み、実績が増えつつある。

GBS株式会社 代表取締役社長
山下英夫氏


ウィズ/アフター・コロナ時代の産業現場における課題解決に貢献

コロナ禍による在宅勤務の拡大、自宅での消費の急増に伴い、量販店、物流事業者やそのサプライヤーの中には、需要の急増に対応するために新規採用などにより増員を行うなど、急激な需要の増加への対応を迫られている企業が多くみられる。

一方、ソーシャルディスタンス確保の必要性により、産業現場ではこれまでよりも少ない人数でのオペレーションの遂行が求められる。従来よりも少ない人員でこれまで以上の作業量への対応が必要となる中、パワースーツという製品が一つの解決策になり得ると同社は信じている。また、山下氏は、「アフター・コロナ時代にも、労働力の確保が課題となっている地方での産業現場などにおいて、GBSのパワースーツやサービスは安定的な労働力の確保、女性や退職後の高齢者の社会進出の実現、効率的な作業管理に貢献し得るものであり、日本市場の可能性は大きい」と期待する。

ジェトロのサポートについて

ジェトロのサポートについて山下氏は、「GBSが日本を含むアジア地域の統括拠点として活動していく中で、日本国内のみならず、海外に関しても有益な情報提供やビジネスチャンスの提案をいただいている。今後も積極的に活用しながら、ビジネスを展開していきたい」と述べた。

同社沿革

2016年

ドイツのアウグスブルクに設立。(ドイツ初のエクソスケルトン/パワースーツの製造企業)

2018年

Automatica Award 2018、Land der Ideen 2018 受賞
エルメス賞2018 ノミネート

2019年

German Entrepreneur Award 2019、Bavarian Entrepreneur Award 2019 受賞

2020年

GOOD DESIGN AWARD 受賞(日本)

GBS 株式会社

設立

2018年12月

事業概要

装着ロボット機器(エクソスケルトン/パワースーツ)の研究、開発、販売

親会社

GBS German Bionic Systems GmbH

住所

東京都中央区銀座6-10-1 Ginza Six オフィス棟13F

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