サクセスストーリー

フリットジャパンが日本市場に見い出したポテンシャルとは

多様な翻訳サービスを提供するアジア最大級の言語データプラットフォームとして注目されているFlitto。

ローカライズ事業とデータソリューション事業を主軸に、テキスト、音声、イメージなどのさまざまな言語データをマイクロソフトや百度、テンセントなどのトップクラスのグローバル企業を含む国内外の顧客にカスタマイズ販売している。

現在、173ヵ国、1,000万人以上のユーザーと400万人以上の翻訳家がFlittoの翻訳プラットフォームを活用し、BtoB事業では2,500社以上のグローバル企業が利用しており、2023年には韓国初のリアルタイム会話型翻訳ソリューション「Chat Translation」サービスをリリースした。この日本法人であるフリットジャパン株式会社の代表取締役社長・冨山亮太氏に、同社が快進撃を続ける理由についてお話を伺った。

設立年月
2018/07
進出先
関東・東京都

  • ICT
  • サービス
  • 韓国

掲載年月 : 2024/04

英語を母語としない地域でますます高まる言語データ需要

2012年に韓国で設立され、2019年には同国の証券市場KOSDAQにも上場するなど、世界最大級の言語サービス企業として急成長を遂げてきたFlitto Inc。もともとクラウドソーシングによる翻訳業務を皮切りに、専門翻訳やAI翻訳など、さまざまな言語データサービス領域で事業を拡大してきた。同社の日本法人フリットジャパン株式会社代表の冨山氏に、同社の成長ぶりを伺った。

「言語翻訳プラットフォームで構築した膨大な言語AIデータをベースに、国内外の企業に言語データを提供しています。現在、173ヵ国、1,000万人以上のユーザーがFlittoの翻訳プラットフォームを利用しています」

Flitto Incが日本の拠点としてフリットジャパン株式会社を設立したのは2018年。同社は日本の市場にどのような可能性を見出していたのだろうか。

冨山 亮太 氏 代表取締役 フリットジャパン株式会社

「弊社は世界中で言語ビジネスを提供しています。特に日本、中国、韓国といった英語を第一言語としない地域において、同じ課題があると考えていました。そのため、本社のある韓国で創業した当初から、日本で事業展開をすることは視野に入っていました。もちろん、日本が世界有数の経済規模を持つ市場であるという点も見逃せません」

Flittoが提供する翻訳プラットフォーム

Flittoにとって日本進出は必然だった

もちろん、Flittoが日本で事業展開を行いたいと考える必然性はそれだけではなかったようだ。冨山氏は続ける。

「弊社は日本に本格的な拠点を設立する前から、日本の大手企業との関係を築いてきました。もともとアメリカで開催されていたスタートアップの展示会で知り合ったことがきっかけで、NTTドコモさんとの関係がはじまり、2016年にパートナーシップを締結するに至りました。当時は機械翻訳ができる翻訳エンジンを開発している企業が限られており、弊社のようなグローバルユーザーの言語データを豊富に持っていて共同開発ができるパートナーが求められていました」

また、日本のデジタルコンテンツに対する言語データニーズの高まりも、同社にとっては大きな追い風になったようだ。

「特に、エンタメコンテンツの言語データ翻訳への需要は、ますます高まっていると感じています。たとえばポップミュージックの歌詞や、最新の漫画やアニメなどがそうです。豊富に生み出されつづけているコンテンツの量に対して、きちんとローカライズされたものがまだまだ世界中の人々に届いていないという現状があります」

言語データ企業にとっての日本市場の可能性と魅力とは

また、生成AIをはじめとするテクノロジーが進化することで、エンタメ業界に新たなイノベーションが起こりつつあるようだ。

「フランスで開催されたジャパンエキスポで、サイマル出版という方法が紹介されました。これは紙媒体の書籍と電子書籍を同時に刊行・配信するというもの。日本初の漫画やアニメなどのユニークなコンテンツが、各国の言語にローカライズされた形で本国での発売とほぼタイムラグなくリリースされます。まだ日本には世界に紹介されていないエンタメコンテンツが豊富にありますから、ここはAIやテクノロジーの力を使って効率化しなくてはいけないと考えています」

また冨山氏は、Flittoのようなグローバル言語データを持つ企業にとって日本でのビジネスチャンスは大きく、企業向けやコンシューマー向けのものだけにとどまらないと言う。

「たとえばBtoG(Business to Government)の領域にも、大きな可能性があります。私たちの事業のもう一つの柱であるデータソリューション事業においては、政府や自治体などがクライアントです。オリンピックや万博、国際会議などのイベントでの需要をはじめ、私たちのような言語データを扱う企業への官公庁からの期待は高まっています」

ただし、BtoGの領域においては、日本国内の大手企業と協業して事業を提案することが大事になってくると冨山氏は続ける。

「やはり官公庁であることから、情報セキュリティの面でこれまでの実績がある国内企業に発注したいという意識が働いてしまうように思います。その意味でも、日本のドメスティックな大手企業と協業して提案していくことも重要です。この点を意識したことは、日本でBtoG関連の事業を継続して取引していくことにつながりました」

日本は外資のスタートアップもサポートが得やすい環境にある

そもそもFlittoのようなスタートアップにとって、日本市場はビジネスをしやすい環境なのだろうか。日本でビジネスを展開していくうえでの支援体制について冨山氏に話を伺った。

「拠点設立時から現在に至るまで、日本の公的な支援機関であるジェトロさんからは大きな支援をいただきました。行政書士などの専門家をご紹介いただいたり、法務や税務などバックエンドの業務で必要な情報をいただいたりと、非常にきめ細やかでハイレベルなサポートを受けました。それこそ、“これ、本当に無料でいいの?”という印象を抱いたくらいです」

では、日本への進出を考えている外資系のスタートアップにとって、日本市場で成功するためのポイントはどこにあるのだろうか。「海外から見ると、日本は文化や商習慣が違うと思われがちです。だが、政府などの公的なサポート体制は非常に厚いと感じます」

最後に、冨山氏はこう続けた。

「日本のような大きな規模の市場で急激にスケールしようと思うと、自分たちの力だけではなかなか難しい。その一方で、我々のような技術と意欲を持つスタートアップと協業したいと考えてくれる日本企業も多い。こうした企業とパートナーシップを組みながら、同時にスタートアップならではのスピード感で仕事に取り組み、自分たちの強みを発揮することが大事なのではないでしょうか」

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