サクセスストーリー

CELLINKのバイオツールで未来の健康を創造する

CELLINK(セルインク)は最先端の3Dバイオプリンティング製品、サービス、そして生物学を研究・解明するうえで必要な技術を提供する3Dバイオプリンティング分野のリーディングカンパニーだ。2016年にスウェーデン・ヨーテボリで設立された同社は、3Dバイオプリンティングを普及させる技術を開発、未来の創薬に必要なツールを研究者に提供している。

数々の賞を受賞した同社の技術について、また、同社が京都を中心に勢いづく日本のバイオテック分野にいち早く進出し、創薬プロセスのスピードアップに欠かせないツールとなるべく有意義な産学連携を図りながら、いかに日本市場参入を成功させたのかについて、CELLINK営業統括部長 アジア太平洋地区、ビールンド智子氏に話を伺った。

設立年月
2020/02
進出先
京都府・近畿

  • バイオテクノロジー・ライフサイエンス
  • スウェーデン

掲載年月 : 2024/03


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3Dバイオプリンティングの普及を目指して

CELLINKは、組織や臓器、疾患の生体模倣モデルの作製に用いられる3Dバイオプリンティングが可能な、細胞を含む生体材料「バイオインク」の世界初のメーカーとしてスタートした。しかし、その将来性にもかかわらず、当時非常に高価だった3Dバイオプリンターを利用できる研究者はごくわずかだった。

CELLINK営業統括部長 アジア太平洋地区、ビールンド智子氏

そこで同社は、手の届く価格で使いやすい独自の3Dバイオプリンターを設計・開発し、3Dバイオプリンティングを普及させることをその使命とした。「直感的に操作できるシステムの開発に重点を置きました。それが、BIO X6バイオプリンターが名誉あるレッド・ドット・デザイン賞を受賞することにつながったのです」とビールンド氏は言う。(レッド・ドット:Red Dot GmbH & Co. KGが主催する国際デザインコンペティション)

バイオプリンター「BIO X6」

ヨーテボリから京都へ

創業からわずか1年あまりの2017年、CELLINKはすでに母国スウェーデンの枠を超えた事業展開を視野に入れ、進出先としてバイオテクノロジー先進国として知られる日本を検討していた。ビールンド氏は、「日本は研究開発、特に創薬や治療、再生医療の分野で優れています。ですから、より広範なアジア市場への参入の第一歩として、日本はまさにうってつけの市場だと考えたのです」と語る。

ちょうどその頃、京都大学医学研究科はイノベーションハブ京都という、CELLINKのようなスタートアップ企業のためのインキュベーション・センターを設立しようとしていた。「このイノベーションハブの担当者は、地元のスタートアップ企業を支援していたヨーテボリ市にすでに働きかけていました。それをきっかけに、同センターのスペースを提供してもらうことになりました」とビールンド氏は振り返る。この偶然のつながりのおかげで、CELLINKは比較的スムーズに日本進出を果たすことができたのだ。

京都を日本の拠点に選んだのは、京都大学を中心とした強力な研究コミュニティを考慮した戦略的な決断からだった。「京都に拠点を置くことでビジネスチャンスが広がり、我々にとって大きな意味を持つ技術革新をリードする研究者たちと、連携する機会も増えると考えたのです」とビールンド氏は言う。

こうして決定した日本拠点設立にあたり、同社はJETRO京都に支援を求めた。横浜で開催された業界パートナリングイベント「BioJapan」に参加したことがきっかけになり、同社にはすでにJETRO京都とのつながりがあった。ジェトロ京都は、日本での法人設立に際して、会社登記の手続きや労務・税務に関するコンサルテーションなど、新事業を円滑に進めるためのサポートを提供した。

しかし、CELLINKの日本進出に課題がなかったわけではない。顧客の期待や顧客サポート、一般的な商習慣などにおいて、日本とアメリカやヨーロッパの間には文化的に大きな違いがあり、そのため日本で確固たる地位を確立することが極めて重要であった。ビールンド氏はこう続ける。「日本市場における成功の鍵となったのは、現地に拠点を置いたことでした。そのおかげで、日本で人材を採用することが可能となりました。そして現地に常駐することで、日本国内の研究者にサポートを提供することができ、結果的に当社の存在感を示すことにもつながりました」

日本法人設立以来、同社の3Dバイオプリンターシステムの導入実績は大幅に伸びている。日本進出以前には、導入していた研究施設は30ほどであったが、わずか3年で導入台数は100台を超え、日本はアメリカ、イギリスに次ぐ第3の市場となっている。

オフィスでの作業風景

京都大学とのコラボレーションで実現したアカデミアと産業界の架け橋

当初から、CELLINKの日本事業の極めて重要な側面として、京都大学との連携があった。ここで言う連携とは、単に技術を提供するだけではなく、研究者と積極的に関わり、彼らのニーズを理解することである。「実際の科学は科学者が行うものです。我々の業界では、彼らのニーズをよりよく理解し、彼らの研究開発活動に貢献する技術を開発するために、研究者と連携しています」とビールンド氏は説明する。

日本で見据える未来の展望

日本での地位を確立しつつある同社が見据えているのは、医薬品業界で重要な役割を果たすことだ。ビールンド氏は次のように語る。「我々の技術は、創薬プロセスをスピードアップさせる有用なツールになると確信しています。従来の薬物検査法に代わる方法を提供し、医薬品業界の発展に貢献するため、CELLINKの3Dバイオプリンティング技術の導入と実用化を目指しています」

CELLINKの日本進出を振り返り、ビールンド氏は日本市場を視野に入れる他のバイオテック企業にこうアドバイスする。「飛び込んでみれば、チャンスはいくらでもあります。まずは日本市場のニーズを熟知したチームを立ち上げること。このチームこそが、日本で真の存在感を示す、成功の鍵を握るのですから」

「BIO X6」の操作中の様子

CELLINKの歩みは、技術革新、戦略的市場参入、そして実りある連携に支えられたものだ。バイオテクノロジーの世界を大きく変えつつある同社の日本におけるストーリーは、最先端科学、産学連携、そして革命的技術の普及への取り組みが、見事に調和した好例と言えるだろう。

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