アミカス・セラピューティクス株式会社
Amicus Therapeutics社は、患者への貢献を第一に掲げるバイオテクノロジー企業。患者さんの生活を根本から変えるような新しい治療薬を届けるため、画期的な科学技術を用いて医薬品の研究、開発、販売に取り組んでいる。
アミカス・セラピューティクス株式会社は、同社の日本法人である。今年、設立3周年を迎え、事業の拡大を見越して、東京の中心部にあるオフィスへの移転を果たした。
Amicus Therapeutics社 (以下、アミカス) は、薬理学的シャペロン療法*による「ガラフォルド®」(ミガーラスタット塩酸塩)を開発、商品化した。「ガラフォルド®」は同社が開発した初めての製品であり、ファブリー病の治療に用いられる経口低分子薬である。
ファブリー病は、細胞内のライソゾーム中に存在するα-ガラクトシダーゼA(加水分解酵素)の欠乏によって引き起こされる遺伝性のライソゾーム病である。心臓、腎臓、皮膚などを含む組織中に特定の糖脂質が蓄積し、臓器機能の悪化が進行して、臓器不全や死亡にいたる場合がある。
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薬理学的シャペロン療法とは
ファブリー病患者のα‐ガラクトシダーゼがはたらきにくい原因のひとつに、細胞内で作られたα‐ガラクトシダーゼが不安定で壊れやすいということがある。 薬理学的シャペロン療法は、不安定なα‐ガラクトシダーゼを安定させる薬を服用し、細胞内にあるα‐ガラクトシダーゼが蓄積物を分解するという酵素のはたらきをサポートする治療法。
難病の子どもを救うための“Extraordinary measures(驚くべき方法)”
アミカスのはじまりは、同社のCEOであるジョン・クラウリーの二人の子どもがポンぺ病を発症し、余命5年と宣告されたときにさかのぼる。子どもたちの命を救うため、ジョンはポンぺ病の治療法を研究していたバイオテクノロジー企業の会長兼CEOとなった。幾多の紆余曲折を経て、ジョンの子どもたちは臨床試験に参加できることとなり、治療を受けることが出来た。その結果、子どもたちは生き延び、現在では成人期を迎えている。
2002年、ジョンはアミカスの執行役員に就任し、のちに同社の会長兼CEOとなった。2010年に公開されたハリウッド映画『Extraordinary measures (邦題:小さな命が呼ぶとき) 』は、クラウリー家の物語が元になっている。この映画は、難病を持つ患者とその家族を世界中で勇気づけた。 日本では2010年7月にテレビの人気番組『奇跡体験!アンビリバボー』でクラウリー家の物語が取り上げられ、ポンぺ病とその家族のストーリーが広く知られるようになった。
希少疾病の画期的な治療法を求め、開発の最先端を走る
2018年11月、アミカスは2つの賞を受賞した。
1つ目は英国ガリアン賞である。2018年の最高賞2つのうちの1つが、「ガラフォルド®」に授与された。隔年で授与されるこの賞は、患者にとって最も革新的で非常に高い影響を与える新しい治療法に贈られるものであり、英国保健大臣オーショネッシー卿によって、賞が授与された。
2つ目は、アミカスの共同研究に対するものである。
産学連携を促進するペンシルバニア大学のPenn Center for Innovation(PCI)は、アミカスと同大学の共同研究に対しthe Deal of the Yearを授与した。
(ファブリー病治療薬「ガラフォルド®」)
広がる希少疾患治療の新しい可能性
「ガラフォルド®」に加えて、ポンぺ病を対象とする新薬AT-GAAの臨床試験を実施中である。ポンぺ病はグリコーゲン(多糖)が体内細胞中に蓄積する遺伝性疾患である。体内でグリコーゲンを分解する役割を持った酸性α-グルコシダーゼ酵素(GAA)の欠乏によって、グリコーゲンの蓄積が起こる。
アミカスは、希少疾患に悩まされる患者の生活がよりよいものとなるよう取組を行ってきた。現在では、バッテン病やムコ多糖症などを含む疾患に対しても治療薬の研究と開発を進めている。
クリストファー・ハーツ氏(アミカス・セラピューティクス株式会社代表取締役社長/以下、ハーツ氏)は、「私たちにとって成功とは、どれだけの人の生活にインパクトを与えることができたかであると信じています。だからこそ、継続的な進化と絶え間ない革新を推し進めていくのです」と話す。
日本法人設立による日本市場への参入
2016年、アミカスは日本法人を設立し、2019年6月にはオフィスの拡大を行った。
設立当時について、ハーツ氏は以下のように振り返る。「日本のパートナー企業と連携することなしに、単独で日本に法人を立ち上げることは、私たちのような若い企業にとっては非常に大きな挑戦でした。日本法人が立ち上がったとき、初めての製品である「ガラフォルド®」は、EUで半年前に承認を受けたばかりでした。しかしながら、独自の企業文化と自社の製品を日本の患者さんにお届けするためには、直接日本市場へ参入することが最もよい方法だと信じていました」。
薬理学的シャペロン療法は、日本人の研究者である鈴木義之氏の研究が起源となっている。ハーツ氏は、「日本のファブリー病患者のみなさまが私たちの薬を使用されることで、鈴木先生の研究の恩恵を受けることができることを、誇りに思います。同時に、今後も日本において希少疾患と生きる方々に新しい薬をお届けできる機会に恵まれることを願っています」と述べた。
経験を積み上げ、希少疾患へのコミットメントを強化していく
2019年8月、アミカスはUltragenyx Pharmaceuticals Inc.(以下Ultragenyx社)とムコ多糖症7型治療薬「Mepsevii™」の日本における開発と商品化のライセンス契約を結んだことを発表した。
Ultragenyx社は米国、EU、ブラジルでは同薬の販売を行っているが、日本では販売を行っていない。今回の契約に対しハーツ氏は、「この薬を日本の患者様にお届けする事が私たちの責任の一つであると考えます」と語った。
クリストファー・ハーツ氏
(アミカス・セラピューティクス株式会社代表取締役社長)
世界に羽ばたくアミカス
2019年2月、アミカスはフィラデルフィア(米国ペンシルバニア州) に遺伝子治療の研究開発拠点を設立した。この研究所は、世界レベルの科学技術を用いて希少な代謝性疾患を抱える人々の生活をよりよいものにするという、同社のコミットメントを推し進めるものである。
2019年5月、アミカスとペンシルバニア大学ペレルマン医学部は、遺伝子治療の共同研究の拡充を発表し、ライソゾーム病に加えて12の希少疾患を新たに研究の対象に加えた。ポンぺ病、ファブリー病、CDKL5欠損症、ニーマンピック病C型、サンフィリッポ症候群としても知られるムコ多糖症3B型、3A型を含んでいる。
この発表により、同社の希少疾患に対する遺伝子治療のポートフォリオは、世界最大となった。
ジェトロのサポート
アミカスの日本法人設立に際して、ジェトロ対日投資・ビジネスサポートセンター (IBSC)は、日本の市場や規制制度などの情報に関してコンサルテーションを行った。また、医療業界に特化したバイリンガル人材紹介会社のあっせん、市場情報を提供した。
ジェトロのサポートについて、ハーツ氏は「ジェトロは非常に高いレベルの情報を提供し、日本法人設立のために必要なサポートを行ってくれました。私たちのような外資のスタートアップ企業にとって、迅速に物事を進めることは非常に大切です。ジェトロの支援によって、時間や資源を節約することができました」と話してくれた。
(2019年10月取材)
同社沿革
- 2002年
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米国ニュージャージー州にて創業
- 2005年
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ジョン・クラウリーが会長兼CEOに就任
- 2007年
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米国NASDAQへ新規株式公開
- 2016年
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「ガラフォルド®」EUにて発売
- 2016年
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アミカス・セラピューティクス株式会社を日本に設立
- 2018年
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「ガラフォルド®」日本・米国にて発売
- 2018年
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米ペンシルバニア大学と遺伝子治療の共同研究開発を開始
- 2019年
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27ヵ国で事業を展開し、600人の従業員を抱える
アミカス・セラピューティクス株式会社
- 設立
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2016年11月
- 事業概要
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医薬品の収集・作製、包装、輸入、配送及び販売業務、その他これに付帯する業務
- 親会社(グループ)
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Amicus Therapeutics UK Ltd.
- 住所
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〒100-0005 東京都千代田区丸の内一丁目6番2号 新丸の内センタービルディング19階
- URL
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- 市場や規制制度に関するコンサルテーション
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