ジェトロ対日投資報告2018(要約)3. 対日投資の動向 ―イノベーション創発に寄与する外資

第4次産業革命分野のイノベーションを通じて日本で新たな価値創造を図る外資

(1) 「つなぐ」 ことで見えない情報を「見える化」するIoT

  • シーメンス(ドイツ):作業時間や稼働情報を「見える化」し、工場の生産性向上や設備の故障予知につなげる。
  • フィリップス(オランダ):医療機器等から取得したデータを活用しヘルスケアに関するソリューションを提供。
  • ネクストドライブ(台湾):家庭の電力使用状況を「見える化」し、スマートエネルギー・マネジメントを提供。

(2) 日本の金融サービスに変革をもたらすフィンテック

  • QRコード決済サービス:アリババ(中国)、テンセント(中国)
  • 生体認証を活用したキャッシュレス決済サービス:クールペイ(シンガポール)
  • AIで不正な疑いのある保険金請求を検知するサービス:シフトテクノロジー(フランス)
  • 海外送金サービス:トランスファーワイズ(英国)、ワールドレミット(英国)、フライワイヤー(米国)

(3) 既存企業と組み日本独自のシェアリングサービスを生み出す外資

  • 民泊:エアビーアンドビー(米国)、ホームアウェイ(米国)、途家(トゥージア、中国)、自在家(ジザイケ、中国)、キーカフェ(カナダ)
  • ライドシェア:ウーバーテクノロジーズ(米国)、滴滴出行(ディディチューシン、中国)、台湾大車隊(台湾)、ヴィア(米国)
  • シェア自転車・スクーター:モバイク(中国)、ゴゴロ(台湾)

(4) 日本企業を中心に発展してきた産業にも採用される外資の技術

  • ベッコフ(ドイツ):産業用オープン通信規格がトヨタ自動車の工場のIoT化に採用
  • メルメック(イタリア):線路設備診断システムがJR西日本の山陽新幹線の軌道に試行導入

オープンイノベーションにより、日本でのイノベーション創発に取り組む外資

(1) 研究シーズを活用して事業化や社会課題解決を目指す

  • J&Jイノベーション(米国)×大阪大学
  • 日本ロレアル(フランス)×国立研究開発法人物質・材料研究機構

(2) データを活用して社会課題解決を目指す

  • フィリップス・ジャパン(オランダ)×東北大学
  • フィリップス・ジャパン(オランダ)×国立循環器病研究センター
  • GEヘルスケア・ジャパン(米国)×国立循環器病研究センター

(3) 日本のスタートアップ育成を通じてシーズを活用する

  • バイエル薬品(ドイツ):バイオ分野のスタートアップ支援等のためのインキュベーションラボを神戸市に開設。
  • VISA(米国):スタートアップ・コンペティション・プログラムを日本で開催。
  • メットライフ生命保険(米国):ヘルス・ウェルネス分野で革新的なアイデアをスタートアップと協業

(4) 双方の得意分野を融合して新製品開発に取り組む

  • NTQソリューション(ベトナム):PCのログイン・ログオフを自動で行うセキュリティシステムを日本企業と共同で開発。
  • アジリス(米国):日本企業との合弁により、神奈川県川崎市に遺伝子治療薬の研究開発拠点を設置。

日本のスタートアップ・エコシステム形成に参画する外資

近年、海外における豊富な経験と実績を有し、その強みを活かして日本に進出する外資系企業が相次いでいる。

(1) 日本のスタートアップ・エコシステム・マップ(参画する外資を中心にまとめた図)

第3章で事例として挙げた外資系企業を代表的要素に着目してジェトロが分類・作成。円の中心に位置する「スタートアップ」を、エコシステムの構成要素(アクター)が取り囲んでいる。各アクターは上から順に右回りに「アクセラレーター」はプラグ・アンドプレイ(米国)、「ベンチャーキャピタル(VC)」はYCombinator(米国)、500 Startups(米国)、「クラウドファンディング」はKickstarter(米国)、「金融機関」は銀行、「エンジェル投資家」は個人投資家、「専門家」は法律事務所等、「イベント・メディア」はSlush(フィンランド)、Tech Crunch(米)、Tech in Asia(シンガポール)、「大学・研究所」は大学、研究機関、「公的機関・支援団体」は政府、自治体、第3セクター、「大企業・コンサル」はAWS(米国)、コンサルティングファーム、大企業、「コワーキング・スペース」はウィーワーク(米国)、レンタルオフィス事業者、「インキュベーター」はVenture Café、「メンター」はメンター。

〔注〕第3章で事例として挙げた外資系企業を代表的要素に着目してジェトロが分類・作成。

(2) 最近の進出事例

  • WeWork(米国)
    • コワーキングスペース大手。2018年2月に日本第1号オフィスを開設以降、半年で計6拠点を次々に展開。
    • 世界の約300カ所(2018年6月時点)に拠点を設け、26万人以上のメンバーをグローバル規模で繋げ、相互に刺激し合い、新たなビジネスやイノベーションを生む機会を提供。
  • Plug and Play(米国)
    • 2017年7月に東京・渋谷に進出した世界最大のテクノロジーアクセラレーター兼VC。
    • フィンテック、IoTなどを主軸に、国内のトップ企業とアクセラレーションプログラムを運営。
    • 3カ月間のプログラムを通じてスタートアップの成長に必要なノウハウの提供などを実施。
    • 2020年までに日本のスタートアップ50社に投資することなどを視野に。
  • 500 Startups(米国)
    • 日本のスタートアップに対する投資を通じた起業家育成を手掛けるベンチャーキャピタル。
    • 2016年より神戸市とパートナーシップ契約を締結し、起業家育成プログラムを毎年開催。
    • 同プログラムに参加した起業家の中には、VCからの資金調達や、企業との提携に結びついたケースも。
  • Venture Café(米国)
    • 2018年3月に東京に拠点を設立し、スタートアップ企業間のネットワーキングイベントやセミナーを開催。
    • イベント開催を通じてイノベーター同士の交流の輪を広げ、事業のヒントを得る機会等を提供。
    • 官民連携によるスタートアップ集中支援プログラム「J-Startup」等、政府機関や自治体の取組とも連携。

地域のイノベーション創出と外資

(1) 福岡市:特区と海外連携で目指す「創業都市」

  • 国家戦略特区制度の下、2015年に国内初の取組としてスタートアップビザを開始。
  • 「Fukuoka Growth Next」を2017年に開業し、海外スタートアップの活動を支援。
  • 世界の10カ国地域・14拠点と連携し、スタートアップの双方向の進出を支援。

(2) 大阪市:国際会議が示すイノベーションと社会課題解決の最前線

  • イノベーション創出支援拠点「大阪イノベーションハブ(OIH)」を設置し、起業家を支援。
  • 国際イノベーション会議「Hack Osaka 2018」ではピッチコンテストに海外スタートアップ8社を招聘。
  • 「Hack Osaka 2019」は、地域への対日直接投資カンファレンス(RBC)にも採択。

(3) 神戸市:外資とのタッグで起業家に挑戦の場を

  • 世界的なVC・アクセラレーターである米500 Startupsとアクセラレーションプログラム「500 Kobe Accelerator」を実施。
  • 地域・行政課題に対する解決手法を広くスタートアップから募る「Urban Innovation KOBE」では、ビッグデータやAIを用いた経営支援を手がける米フライデータを採択。

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