ジェトロ対日投資報告2018(要約)2. ビジネス環境の改善に向けて

ビジネス環境の改善および投資促進に資する新たな動き

(1)プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度の創設

  • 革新的な技術・ビジネスモデルについて、既存の規制にとらわれず実証を行える環境を整備し、取得したデータを基に規制緩和につなげる仕組み。
  • 2018年6月に政府一元的総合窓口を開設し、事前相談・申請の受付を開始。

プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度と各規制改革スキームとの関係

ジェトロを通じて寄せられた外国・外資系企業からの相談に対し、内閣官房一元的窓口にて(1)各制度への適切な割り振り、(2)各主務省庁との事前調整、(3)申請書作成サポート(新技術等該当性の確認、実証の内容の具体化、主務大臣確定、規制法令確認)を行う。プロジェクト単位で「実証」を行う場合は、生産性向上特別措置法に基づくプロジェクト型「規制のサンドボックス」制度に、プロジェクト単位で「事業」を行う場合は、グレーゾーン解消制度または新事業特例制度にそれぞれ割り振られる。プロジェクト型「規制のサンドボックス」制度は、(1)革新的な技術等が対象、(2)参加者や期間を限定、(3)法令改正を前提としないことが特徴である。グレーゾーン解消制度では、事前に法の解釈や適合性を確認することができる。また、新事業特例制度は、規制の特例措置を整備した上で実施する制度である。他方、プロジェクト単位でなく地域単位で実施する場合には国家戦略特区のスキームで、また、全国単位で実施する場合には、規制改革推進会議にてそれぞれ規制改革の検討を行う。

〔出所〕革新的事業活動評価委員会(第1回)会議資料より作成

(2)世界銀行Doing Businessランキング改善に向けた動き

  • 2019年度中にオンラインによる法人設立手続の24時間以内の処理を実現
  • 裁判手続等の全面IT化、裁判におけるウェブ会議等の導入
  • 貨物の滞留時間の短縮化等による港湾物流の改善

日本の総合ランキング(2019年)(全190カ国)

順位 国・地域
1 ニュージーランド
2 シンガポール
3 デンマーク
4 香港
5 韓国
6 ジョージア
7 ノルウェー
8 米国
9~31 (中略)
順位 国・地域
32 フランス
33 ポーランド
34 ポルトガル
35 チェコ
36 オランダ
37 ベラルーシ
38 スイス
39 日本

日本のランキングの内訳

日本の総合ランキングを構成する10の評価項目について、項目ごとに日本のランキングを示したレーダーチャート。「法人設立」は93位、「建設許可取得」は44位、「電力事情」は22位、「不動産登記」は48位、「資金調達」は85位、「投資家保護」は64位、「納税」は97位、「貿易」は56位、「契約執行」は52位、「破綻処理」は1位。

〔注〕数字はランキング。外縁が1位、中心が190位
〔出所〕「Doing Business 2019」(世界銀行)

(3)行政手続コストの2割削減

  • 各省庁の「簡素化のための基本計画」を点検・改定
  • 重点分野の行政手続コストの削減効果は7,315万時間(1,860億円、マイナス22.3%)の見込み

分野別の行政手続コストと削減時間の見通し

分野別の行政手続コストと削減時間の見通し
分野 基本計画策定対象
総手続件数
(手続項目数)
コスト計測対象
総手続件数
(手続項目数)
作業時間
(金額換算)
1件
当たり
削減時間
(金額換算)
1件
当たり
削減率
営業の許認可 651万9,196件
(786本)
525万3,226件
(330本)
1億4,173万時間
(3,604億円)
27.0時間 2,960万時間
(753億円)
5.6時間 20.9%
社会保険 6,271万6,706件
(105本)
5,680万6,812件
(28本)
1億2,211万時間
(3,105億円)
2.1時間 2,922万時間
(743億円)
0.5時間 23.9%
調査・統計 716万9,681件
(153本)
681万1,452件
(98本)
2,393万時間
(609億円)
3.5時間 562万時間
(143億円)
0.8時間 23.5%
労務管理 330万4,726件
(71本)
301万3,296件
(15本)
1,514万時間
(385億円)
5.0時間 306万時間
(78億円)
1.0時間 20.2%
補助金 29万7,660件
(74本)
29万2,598件
(56本)
1,100万時間
(280億円)
37.6時間 230万時間
(58億円)
7.9時間 20.9%
商業登記 99万8,850件
(33本)
59万5,272件
(2本)
853万時間
(217億円)
14.3時間 171万時間
(43億円)
2.9時間 20.0%
就労証明書 246万件
(1本)
246万件
(1本)
556万時間
(141億円)
2.3時間 164万時間
(42億円)
0.7時間 30.0%
8,346万6,819件
(1,223本)
7,523万2,656件
(530本)
3億2,800万時間
(8,341億円)
4.4時間 7,315万時間
(1,860億円)
1.0時間 22.3%

(4)外国人材の受入れ拡大

  • 外国人起業家の受入れ拡大-起業準備のための在留期間を最長1年に
  • 就労を目的とする新たな在留資格の創設
  • コワーキングスペースなどでの在留資格「経営・管理」の取得が可能に

(5)地域への対日直接投資拡大に向けた取り組み

  • 地域への対日直接投資サポートプログラム
  • 地域への対日直接投資カンファレンス(Regional Business Conference)

地域への対日直接投資サポートプログラムのイメージ

地方公共団体等の誘致計画策定のサポートやコンサルテーション、有効な施策の利活用促進を実施し、地方公共団体等の対日直接投資に関する取組をブラッシュアップするプログラム。地方公共団体等からの支援依頼に対し、ジェトロ、経済産業省を中心に、対日直接投資推進会議構成省庁および対日直接投資総合案内窓口設置省庁(計14府省庁)が連携して支援する。施策を連携し有効活用することで、例えば、A省に対する補助金申請、B機構に対する支援メニュー相談、C省地方紙分極に対する規制・行政手続相談を行う。これにより、地域への対日直接投資を集中支援する。なお、ジェトロは「外国企業パーソナルアドバイザー制」等の導入により、各省施策のワンストップ相談窓口も実施中である。

〔出所〕対日直接投資推進会議(第6回)会議資料

(6)税制改正に向けた動き

  • 情報連携投資等の促進に係る税制(コネクテッド・インダストリーズ税制)の創設
  • 自社株式を対価とした株式取得による事業再編の円滑化措置の創設

自社株式を対価とした株式取得による事業再編の円滑化措置のイメージ

税制改正前は、買収の対象会社の株主(売り手)が対象会社の株式を譲渡する際に課税負担があったため、対価として取得した買収会社株式の一部売却等による納税資金の確保が必要であった。また、買収会社は、自社株式が売却されることによる株価下落の懸念があった。これらにより、実務上、自社株式を対価とした買収は困難であった。しかし、今回の税制改正により、買収会社が事業再編の計画について主務大臣の認定を受けることにより、対象会社株主(売り手)は、課税の繰り延べが可能となり、納税資金の確保が不要となった。また、買収会社は株価下落リスクへの懸念もなくなった。これらにより、自社株式を対価とした事業再編が円滑化された。

〔出所〕「平成30年度 経済産業関係 税制改正について」(経済産業省)

(7)コーポレートガバナンスの強化

  • コーポレートガバナンス・コードの改訂版を公表(2018年6月1日)

これまでのビジネス環境改善に向けた取り組み

2013年から2018年までのビジネス環境改善に関する取組について、「対日投資促進のための施策」、「法人実効税率」、「岩盤規制改革等」の3つのカテゴリーに分類して時系列に記載。具体的には、対日投資促進のための施策として、2015年の「外国企業の日本への誘致に向けた5つの約束」(1.日常生活における言語の壁の克服、2.インターネット接続環境の向上、3.地方空港のビジネスジェット受入れ、4.海外から来た子弟等の教育環境の充実、5.外国企業からの相談への対応強化)、2016年の「グローバル・ハブを目指した対日直接投資促進のための政策パッケージ」(1.規制・行政手続の改善、2.グローバル人材の呼び込み、3.外国人の生活環境の改善)、2017年の「規制・行政手続見直しワーキング・グループとりまとめ」(1.外国人の株式会社設立が容易に、2.在留資格がオンラインで申請可能に、3.高度人材の永住許可申請に必要な期間を大幅短縮、4.外国語での情報発信を強化、5.輸入関係の手続きを簡素化、6.東京開業ワンストップセンターの機能拡充)を記載。法人実効税率については、2013年に37.00%、2015年に32.11%、2016年に29.97%、2018年に29.74%となったことをそれぞれ記載。岩盤規制改革等としては、2013年に国家戦略特区の創設、2014年に日本版スチュワードシップ・コード策定および再生医療早期認証制度の導入、2015年にコーポレートガバナンス・コードの適用開始、2016年に電力小売市場の全面自由化、2017年にガス小売市場の全面自由化を記載。

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