カナダ・カーニー首相、アルバータ州に連邦残留を呼びかけ、州民投票を前に

(カナダ)

調査部米州課

2026年10月16日

カナダ・アルバータ州で、連邦からの分離や自治権の拡大を巡る州民投票が10月19日に実施されるのを前に、マーク・カーニー首相は10月15日、同州カルガリーを訪問し、カナダ残留への支持などを呼びかけた。カーニー氏は残留派の支持者が集まった会場で演説し、「アルバータ州民は、より強いアルバータ州とより良いカナダを築いて次世代に引き継ぐのか、それとも、長年にわたる深刻な分断と大きな不確実性を背負わせるのか、選択を迫られている」と述べた。今回の州民投票に法的拘束力はないが、結果はその後の州政府の政策や連邦政府との関係に大きな影響を与える可能性がある。

州民投票の背景には、連邦政府の政策がアルバータ州の財政負担を増大させ、州の政策決定の自由を制約しているとの州政府の認識がある。州政府は、連邦政府の移民政策に伴う人口増加が教育、医療、社会サービスを圧迫しているほか、州に対する憲法上の権限配分が不明確であるとして、憲法改正によって自治権を拡大し、同州が直面する課題を独自に解決できるようにすると主張している。

州民投票では、計10問が提示される。このうち、第1~5問は移民政策の見直しを、第6~9問は州と連邦政府の権限配分に関する憲法制度の見直しを、それぞれ取り上げる。州政府には、投票結果を連邦政府や他州との交渉に向けた政治的な後ろ盾とする狙いがあるとみられる。第10問では、アルバータ州がカナダに残留するか、同州の分離の是非を問う法的拘束力のある住民投票実施に向けた憲法上の手続きを開始するかを問う。

連邦政府にとって、アルバータ州はカナダの経済・エネルギー政策を進める上で欠かせない存在だ。カーニー首相は、カナダを「エネルギー超大国」とし、2035年までに米国以外へのエネルギー輸出を倍増させる目標を掲げている。その実現には、アルバータ州のエネルギー資源や同州へのインフラ投資に大きく依存している。例えば、7月にはクリーンエネルギー関連インフラへの投資が発表され(2026年7月14日記事参照)、10月にはアジア向け原油パイプライン計画が国益プロジェクトに指定された(2026年10月5日記事参照)。また、カーニー首相自身がアルバータ州出身であり、円滑な政権運営のためにも、カナダ残留への支持を確保し、連邦・州政府間関係の安定を図ることが重要となる。

一方、アルバータ州のダニエル・スミス首相は、期日前投票で移民政策や憲法制度の見直しを支持する中で、カナダ残留に投票したと表明した。これには、同州与党・統一保守党(UCP)の一部からは、州民の判断に委ねるためにも公表すべきではなかったとして批判が出ている(政治専門紙「ポリティコ」10月15日)。カナダの調査会社レジェが10月8日に公表した世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)では、カナダ残留への支持が70%となり、分離の是非を問う法的手続きを開始することへの支持は22%にとどまっている。

(注)実施時期は10月2~4日で、対象者は18歳以上のアルバータ州民1,001人。

(木村勇翔)

(カナダ)

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