カナダ、アジア向け原油パイプライン建設計画を国益プロジェクトに指定

(カナダ、米国、日本)

調査部米州課

2026年10月05日

カナダのマーク・カーニー首相は10月1日、7月に発表した原油パイプライン「パシフィック・リンク」の敷設計画(2026年7月6日記事参照)を、カナダ建設法に基づく国益プロジェクトに正式に指定したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今後、主要プロジェクト局(MPO、注1)とカナダエネルギー規制庁(CER)が、所有権や先住民族の権利、環境保護、地域住民の雇用などを含む条件面での審査や利害関係者との協議を進め、2027年9月1日までに事業実施の条件を文書にまとめる方針だ。

パシフィック・リンクは、アルバータ州ブルーダーハイムからブリティッシュ・コロンビア州デルタを結ぶ全長約1,250キロメートルのパイプラインで、日本、韓国、中国などアジア市場への輸出向けに日量100万バレルの原油を輸送する。同パイプラインのルートは、既存のトランス・マウンテン・パイプラインに沿う予定だが、正確なルートの策定は今後実施する。パイプラインの敷設に加え、アルバータ州ブルーダーハイムに原油の受け入れ・貯蔵施設、沿岸に超大型原油タンカー用積み出し施設を建設するほか、沿線に11カ所程度のポンプ場を設置する。

建設期間中は、民間企業のペンビナ・パイプラインが10%の権益を保有し、残りを連邦政府傘下のトランス・マウンテン・コーポレーション(TMC)とアルバータ州傘下のアルバータ・ペトロリアム・マーケティング・コミッション(APMC)が均等に保有する。商業運転開始後、ペンビナは最大10%の権益を追加取得できる。また、先住民族コミュニティーには最低10%の所有権の出資機会を提供し、連邦・州政府の先住民族向け融資保証制度を通じて所有権の取得にかかる資金調達を支援する。

カナダ政府の試算によれば、同計画で14万人の雇用を創出し、年間200億カナダ・ドル(約2兆2,200億円、Cドル、1C=約111円)超のGDP押し上げ効果と、2060年までに1,000億Cドルの政府歳入をもたらす。カナダを「エネルギー超大国」とする目標に向けて、カナダ政府は今後10年間で米国以外への輸出を倍増させる方針を掲げており、パシフィック・リンクをエネルギー輸出先の多角化(注2)と経済の強靭(きょうじん)性強化を担う主要事業と位置付けている。

(注1)重要インフラや資源開発などの主要プロジェクトについて、関係機関との調整や規制手続きの効率化を通じて迅速な推進を図る連邦政府の専門機関。カナダ政府は、主要プロジェクトの審査を2年以内に完了できるよう、規制プロセスの改革を進めている。

(注2)カナダ政府は、原油輸出を米国に依存していることが、カナダ産重質原油の価格を押し下げる構造的要因だと指摘している。輸出先の多角化で買い手間の競争が強まれば、カナダ産重質原油の指標価格WCSと米国産原油の指標価格WTIとの価格差が縮小すると分析している。政府の試算によれば、価格差が1バレル当たり1ドル縮小するごとに、既存の原油生産全体で年間約20億Cドルの増収が見込まれる。

(木村勇翔)

(カナダ、米国、日本)

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