イタリア・ピレリ、ジョージア州工場に約10億ユーロ投資、コネクテッドタイヤの米国内供給体制を構築

(米国、イタリア)

アトランタ発

2026年10月07日

イタリアの大手タイヤメーカーのピレリは9月22日、米国ジョージア州ローム工場の拡張に向け、2033年までに約10億ユーロ(約12億ドル)を投資する計画を承認したと発表した。投資後の生産能力は年間約600万本となり、約1,000人の新規雇用を見込む。ローム工場は2002年の操業開始以来、同社独自のロボット生産システム「MIRS(Modular Integrated Robotized System)」を導入した先進製造拠点として、主に高付加価値品や特殊な開発品を製造してきた。一方、北米市場向けの量産は主にメキシコ工場が担っており(年間約900万本を生産)、今回の投資は米国内での供給能力を大幅に引き上げる計画と位置付けられる。

投資は2段階で実施し、MIRSを活用した生産ラインと、プレミアム製品向けの完全自動化工場を新設する。ローム市政府によると、ローム工場の現在の従業員数は234人、生産能力は年間約45万本とされており、計画が実現すれば大幅な能力拡大となる見込みだ(9月23日コンストラクション・レビュー)。工場では車両と通信するコネクテッドタイヤ「サイバー・タイヤ」も生産し、米国内供給体制を構築する。

米国ではコネクテッドカーに対する規制の具体化が進んでおり(2025年6月11日付地域・分析レポート参照)、連邦議会では関連法案が審議されている(2026年9月25日記事参照)。サイバー・タイヤはタイヤ内蔵センサーを通じて車両データを取得・送信するコネクテッド技術であり、米国におけるコネクテッド車両規制の影響を受ける可能性が指摘されている。

今回の発表によれば、2026年にイタリア政府がゴールデン・パワー制度(注)に基づき、中国国有企業系株主CNRC(シノケム傘下)の取締役指名権や経営関与を制限する措置を講じた後、米商務省産業安全保障局(BIS)からサイバー・タイヤの米国市場展開に必要な認可を取得したという。

今回の事例は、米国内供給能力強化という事業戦略に加え、米国のコネクテッドカー関連規制や経済安全保障政策への対応を完成車メーカーだけでなく、タイヤなどの自動車関連部品メーカーも投資判断の一要素としている可能性を示唆している。また、米国市場へのアクセス確保のためには、生産拠点の現地化だけでなく、中国系株主の影響力やデータ管理を含むガバナンス体制の整備も重要になっていることがうかがえる。

(注)イタリアの国家安全保障やエネルギー、運輸、通信など、特定分野の株式または資産の取得の取引に関して、政府が拒否権の行使や特別な条件の付加ができるイタリア独自の投資規制。2026年4月には、ピレリのコネクテッドタイヤ技術「サイバー・タイヤ」の保護などを目的として、中国国有企業系株主CNRC(シノケム傘下)の取締役指名権や経営関与を制限する措置が講じられた。

(紀井寿雄)

(米国、イタリア)

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