欧州委、北極戦略を改定、安全保障・経済安保を強化

(EU、米国、カナダ、ロシア、グリーンランド、デンマーク、ノルウェー、中国)

ブリュッセル発

2026年10月23日

欧州委員会は10月20日、EU外務・安全保障政策上級代表と共同で、安全保障と経済安保に重点を置いた新北極戦略を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。新戦略は、温暖化に伴い北極圏へのアクセスが容易になる中で、ロシアが軍事拠点の再整備を進めるとともに、中国の影響力も強まっていると指摘する。ウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、北極圏はEUの一部であり、北極圏の地政学的な変化はEUの安全保障と経済的繁栄に直結すると強調。「われわれは戦略的な姿勢を転換し、志を同じくするパートナーとともに、行動しなければならない」と訴えた。

新戦略は、気候変動対策や環境保護を主軸とした2021年の旧北極戦略を踏まえつつ、ロシアによるウクライナ侵攻後の安全保障環境の変化を受け、安全保障と経済安保を前面に打ち出した。EUは北極圏への関与を強めており、グリーンランド向け投資(2026年9月16日記事参照)もその一環だ。

まず、安全保障分野では、EUは、北極圏に適応した二重用途・多目的運用能力を強化する。安全保障・防衛分野向けの地球観測サービスを開発しており、2027年には北極圏の海洋状況把握能力を強化するパイロット事業を立ち上げる。また、情報共有を担う海洋安全保障ハブの構築を加盟国やパートナーと進める。その第1段階として、北大西洋-北極圏の海底ケーブルを監視、保護する北極ケーブルハブの設置に向け、加盟国やパートナーを支援する。

また、EUは、北極圏での再生可能エネルギーや重要原材料の開発に向けた投資を拡大する。北極圏には、EUが重要原材料に指定する鉱物資源の多くが存在しており、重要原材料法に基づき、既に複数の戦略的事業(2025年3月27日記事参照)が進行中だ。今後もカナダやグリーンランド、ノルウェー、米国との重要原材料分野での協力を進めるとしている。

一方で、エネルギー開発については、EUは、北極圏での水力、地熱、風力発電やグリーン水素の製造への支援に意欲を示すものの、天然ガスや石油の採掘については、温暖化対策や環境保護の観点から反対の立場をとっており、旧北極戦略の姿勢を崩していない。ただし、旧北極戦略に盛り込まれていた、北極圏での新たな化石燃料開発や同地域産化石燃料の購入を認めない国際的枠組みの形成を目指す方針は削除された。政治専門誌ポリティコは、EUの主要な天然ガス供給国であるノルウェーが北極圏での採掘を継続している点に言及している。

(吉沼啓介)

(EU、米国、カナダ、ロシア、グリーンランド、デンマーク、ノルウェー、中国)

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