カナダ首相が欧州議会で演説、EUとの戦略分野の協力強化を訴え

(カナダ、EU)

調査部米州課

2026年09月25日

カナダのマーク・カーニー首相は9月17日、欧州議会で演説した(演説全文外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、和訳外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が、カナダがEU初の「準加盟国」となる可能性に言及したこと(注1)を歓迎した上で、地政学的な変動や貿易の武器化に対応するため、重要鉱物、防衛産業、人工知能(AI)、エネルギー安全保障などの分野で、カナダと欧州の連携を一層強化するよう呼びかけた。

カーニー首相は、地政学的対立やリスクの高まりに伴い、主権の維持と市場の開放性を両立させることが難しくなっていると指摘した。その上で、AI、半導体、重要鉱物、決済システム、クリーンエネルギー技術、ワクチン、宇宙通信などの戦略分野では、単一のサプライチェーンに過度に依存せず、カナダとEUが強みを補完し合う「集団的レジリエンス」の構築が重要だと強調した。さらに、地理的な区分に基づく従来型の協力体制にとどまらず、戦略分野ごとに連携する枠組みの必要性を訴えた。

エネルギー安全保障では、カナダの北極圏や東海岸の新たな港湾インフラを活用し、液化天然ガス(LNG)や水素を欧州に供給する一方、カナダは欧州のクリーンエネルギー技術を活用できるとした。また、EUが設立を表明した「欧州重要原材料公社」(注2)に言及し、34種類以上の重要鉱物資源を有するカナダが、EUとともに採掘から加工までのバリューチェーン構築に向けて協力できるとした。こうした関係強化により、「主権を強化し、国民の生活コストを下げ、機会と安全保障を拡大しながら、自らが望む生き方を選ぶ自由を守ることができる」と述べた。

一方、カーニー首相は、大国間対立における「第3のブロック」の形成を目指しているのではなく、他国・地域に市場を支配されずに、主権や領土の一体性、自由や民主主義、法の支配を脅かされないためのレジリエンスを追求しているとの考えを示した。

EUとカナダは、2017年9月から包括的経済貿易協定(CETA)を暫定適用しているほか、2025年6月には安全保障・防衛パートナーシップを締結した。また、カナダは2026年6月、「欧州安全保障行動(SAFE、注3)」に非欧州国として初めて参加した。米国への依存リスクを踏まえ、共通の価値観を共有する両者の関係強化が進んでいる。

カナダの調査機関アバカス・データがカーニー首相の欧州訪問前に実施した世論調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注4)では、カナダがEUに加盟しないまま、貿易、移動、安全保障などの分野で統合を進めることについて、81%が支持し、10%が反対した。一方、EUへの正式加盟については、49%が支持し、30%が反対と回答した。

(注1)欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は9月16日の一般教書演説で、カナダがEU初の「準加盟国」となる可能性について言及した(2026年9月24日記事参照)。

(注2)電気自動車や半導体などに必要な資源の確保と備蓄のために新設することを、フォン・デア・ライエン委員長が一般教書演説で発表した。

(注3)EUの防衛産業強化を目的とした資金調達制度(2025年9月16日記事参照)。

(注4)実施時期は9月4〜9日で、対象者はカナダの成人1,479人。

(木村勇翔)

(カナダ、EU)

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