欧州委、防衛産業強化向け新融資制度の加盟国の暫定融資枠を発表

(EU、ウクライナ、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)

ブリュッセル発

2025年09月16日

欧州委員会は9月9日、「欧州の安全保障行動(SAFE)」に関心を表明した加盟国に対する暫定的な融資枠を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。SAFEは、EUの新たな防衛白書「準備2030」(2025年3月21日記事参照)に基づく防衛投資策「欧州再軍備計画(ReArm Europe Plan)」(2025年3月21日記事参照)の柱の1つとして設置された、1,500億ユーロ規模の加盟国向け融資制度だ。各加盟国の暫定的な融資枠は添付資料表を参照のこと。

防衛投資の早期拡大に向け迅速に進む融資手続き

EU理事会(閣僚理事会)は、欧州委による2025年3月のSAFE設置法案の提案以降、審議を迅速に進め、5月には同法を採択した。これを受け、欧州委は直ちにSAFEに基づく融資の実施に向けた手続きを開始。7月末時点で18加盟国が融資申請に関心を表明していた(2025年8月13日記事参照)。その後8月には、デンマークも関心を表明したことで、申請が見込まれる加盟国数は19となった。

これらの19加盟国は、融資により調達する軍事物資や軍事目的の関連物資などをまとめた欧州防衛産業投資計画を策定した上で、11月30日までに欧州委に正式に融資を申請する。欧州委による同計画の審査を経て、EU理事会は2026年1月に融資の実施決定を採択。同年2月以降に前払い分となる融資枠の最大15%の融資開始を見込む。残りの融資については、欧州委が加盟国による同計画の進捗を審査した上で段階的に実施する。

融資の対象となるのは、原則として複数の加盟国や対象国が共同で実施する調達だが(注)、迅速性の観点から2026年5月末までに締結した調達契約に限り、加盟国が単独で実施する調達も対象となる。

(注)SAFEに基づき融資を受ける加盟国と、他の加盟国やノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン、ウクライナが共同で実施するもの。加盟候補国、加盟申請国や、日本をはじめ、EUと安全保障・防衛パートナーシップを締結した国(アルバニア、カナダ、モルドバ、北マケドニア、ノルウェー、韓国、英国)も参加できる。

(吉沼啓介)

(EU、ウクライナ、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)

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