カナダ、米国との貿易交渉決裂、9月8日から報復措置
(カナダ、米国)
調査部米州課
2026年08月24日
カナダのマーク・カーニー首相は8月21日、米国との貿易交渉を停止し、交渉団に帰国を命じたと発表
した。実質的な交渉決裂とみられる。米国のドナルド・トランプ大統領が7月20日、1930年関税法338条に基づき一部のカナダ産品に追加関税を課す措置を発表したこと(2026年7月21日記事参照)を受け、両国は交渉を続けていた。カーニー首相は、交渉終盤に米国側が修正して提示した合意条件が「不公平で経済的合理性を欠き、いかなる合意の信頼性を損なう」ものだったことを、交渉停止の理由に挙げた。
これに伴い、米国は約280億カナダ・ドル(約3兆2,000億円、Cドル、1Cドル=115円)相当の一部のカナダ製品に対し、338条に基づく50%の追加関税を発動した(2026年8月24日記事参照)。一方、カナダは9月8日から、同額規模の報復措置を導入する方針を示した。
カーニー首相は声明で、米国との貿易交渉の目的として、(1)カナダ企業の大半について米国市場への無関税アクセスを維持すること、(2)2国間の貿易関係に一層の安定をもたらすこと、(3)カナダの主要産業に対する米国の関税を大幅に引き下げること、(4)新たな関税導入の差し迫った脅威を取り除き、中小企業を保護すること、(5)カナダの柔軟性・独立性・主権を維持すること、を掲げていた。その上で、米・カナダ関係がかつての関係には戻らないと認識しつつ、カナダにとって米国市場への最良のアクセスを確保するため、公正な合意を目指したが、交渉で得られた進展はカナダ側の目標達成には不十分だったと述べた。カナダ政府は、9月8日までに、米国の関税措置で影響を受ける国内の労働者や企業に対する追加支援策を発表する。
カーニー首相は8月22日の記者会見
で、一連の経緯を説明した。交渉団の帰還を命じた理由について「米国は多くのことを要求し、わずかな妥協にとどまった」と述べ、「米国の提示内容は受け入れられず、米国の要求にも応じられない」とした。
米国が土壇場で修正した合意条件の具体例として、カーニー首相は、(1)自動車分野の関税措置について、関税引き下げの対象を乗用車・小型トラックに限定し、中・大型トラックを含めないこと、(2)第三国・地域との貿易協定を制限する措置を設けようとしたこと、(3)英語とフランス語を公用語とする原則や多文化主義、カナダの主権を守る姿勢に反する要求が含まれたこと、を挙げた。また、米国との重要鉱物分野での協力について、今回の関税措置により両国の協力機会が失われたとし、「米国に独占的なアクセスを認めることは決してない」と述べた。
貿易交渉は、ドミニク・ルブラン・カナダ-米国貿易・州政府間関係・国内貿易・ワンカナダ経済担当相と米国通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表らの間で行われた(2026年8月14日記事参照、注1)。両国は8月13日の4回目の閣僚級協議後も複数回にわたって交渉し、8月18日に3日間の交渉期限延長を発表していた(2026年8月19日記事参照)。8月20日には、アニータ・アナンド外相とマルコ・ルビオ国務長官が米国首都ワシントンで会談し、貿易を巡る建設的な対話継続と両国の経済関係の強化を確認した。さらに同日、カーニー首相はメキシコのクラウディア・シェインバウム大統領と電話会談を行い、カナダ・米国・メキシコ協定(CUSMA、注2)の見直しについて協議した。米・カナダ間や北米全体の貿易交渉の妥結に向けた機運が高まっていた中、土壇場で交渉が決裂したかたちだ。
(注1)貿易交渉ではほかにも、米国が7月24日に課した1974年通商法301条の追加関税措置(2026年7月24日記事参照)や、7月1日に行われたCUSMAの見直しに向けた3カ国協議で合意に至らなかった点(2026年7月3日記事参照)なども議題になったとみられる。
(注2)米国ではUSMCA、メキシコではT-mecと呼ばれる。
(木村勇翔)
(カナダ、米国)
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