トランプ米大統領、カナダの乳製品、アルコール、自動車部品に50%の追加関税、338条に基づく初めての措置
(米国、カナダ、メキシコ)
ニューヨーク発
2026年07月21日
米国のドナルド・トランプ大統領は7月20日、1930年関税法第338条に基づき、カナダの乳製品
、アルコール飲料
、自動車部品
に対し、米国東部時間8月19日午前0時1分以降に輸入通関される製品を対象として、50%の追加関税を課す大統領布告を発表した。同日、ファクトシート
も発表した。今後の米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の見直し協議に影響する可能性がある。
338条は、外国の差別的措置または不平等な課税によって米国の通商に負担や不利益が生じていると大統領が判断した場合に対し、当該国からの輸入品に最大50%の追加関税を課す権限を認めている(注1)。大統領布告によれば、(1)USMCAでは小売業者に対してチーズに対する関税割り当て(TRQ)が認められていないのに対し、EU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA)では小売業者にTRQが認められていること、(2)カナダが2025年3月から米国産アルコール飲料の購入、流通、小売りを停止したこと、(3)カナダが2025年4月以降、USMCAに基づく特恵関税の対象外となる米国製自動車に対し、25%の追加関税を課していること、などが差別的だと判断した。
338条に基づく追加関税の対象となる具体的な米国関税分類番号(HTSUS)は、各大統領布告の付属書IIに記載されている。ただし、1962年通商拡大法232条に基づく追加関税の対象となる品目や、無人航空機を除くWTOの「民間航空機貿易に関する協定」の対象となる品目などには課されない。一方、今回の338条措置は、USMCAの原産地規則を満たす製品も追加関税の対象となる。相互関税や1974年通商法122条に基づく10%の追加関税などは、USMCAの原産地規則を満たす場合、追加関税の対象外としていた(2026年2月24日記事参照)。
今回の措置の背景として、米国の政府高官は「この1年間、米国が再工業化、生産の国内回帰、および製造業支援のために貿易措置を講じる中、カナダは米国に対して相当な報復措置を維持してきた。カナダは、この継続的な差別について責任を問われなければならない」と述べている(米通商専門誌「インサイドUSトレード」7月20日)。米通商代表部(USTR)のジェミソン・グリア代表は、カナダに対して、「中国と並び、米国の関税措置に対して報復措置を講じた国」だと度々批判していた(2026年5月29日記事参照)。
米国は、7月1日に行われたUSMCAの共同見直しにて、USMCAが抱える欠点などの改善が必要だとして、USMCAの延長に合意しなかった(2026年7月2日記事参照)。USTRはカナダの欠点として、今回問題視した「米国乳製品に対する不平等な市場アクセス」や「米国のアルコール飲料流通に対する州レベルの禁止措置」を挙げていた。7月1日の見直しで延長に合意できなかったため、今後、3カ国はUSMCAの見直し会合を継続する。今回のカナダに対する追加関税措置は、USMCAの見直し協議に関する米国とカナダの2国間協議にも影響するとみられる(注2)。
(注1)議会調査局(CSR)によると、338条は、関税を課すための前提条件として、1974年通商法301条や1962年通商拡大法232条と異なり、行政機関による調査や決定を要求していない。また、これまでに338条を基に関税を課した大統領はおらず、仮にカナダに対して8月19日以降に追加関税を課せば、トランプ大統領が338条に基づいた関税を課した初の大統領となる。
(注2)USMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後の2026年7月1日に見直し会合を実施し、3カ国が延長に合意すれば、失効期限は合意時点から16年後に延長される。3カ国は延長に合意できなかったため、今後も見直しを継続する。合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。USMCAの見通しのポイントなどについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。
(赤平大寿)
(米国、カナダ、メキシコ)
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