ジェトロ、米国東海岸のライフサイエンス市場に関するウェビナー開催
(米国、日本)
ニューヨーク発
2026年07月01日
ジェトロは6月9日、「米国進出を成功に導くビジネスストラテジー:米国東海岸ライフサイエンス市場進出に向けて」と題したウェビナーを開催した。化学・医薬品分野の製造業をはじめ、法律・会計事務所、金融関係者など、80人以上が参加した。同ウェビナーは、ジェトロの「中小企業海外展開現地支援プラットフォーム事業」の一環として開催し、同事業のライフサイエンスコーディネーターの星場勉氏〔キーヴィット・サイエンティフィック(Kievit Scientific)代表取締役〕が講師を務めた。
星場氏によれば、米国ライフサイエンス市場では、米国国立衛生研究所(NIH)の予算は維持されているものの、研究助成の申請に対する採択率は低下傾向にある。2027会計年度(2026年10月~2027年9月)予算教書でも、NIHの予算減額や間接経費上限の引き下げが再提案されるなど、今後もトランプ政権下で同予算の不確実性が継続するとの見方を示した。こうした環境変化は、研究機関やスタートアップを含むエコシステム全体での意思決定や計画の遅れにつながっているという。一方で、米国は依然として世界で最大のライフサイエンス市場であるため、環境の改善を待つのではなく、個別の研究機関や研究者レベルで機会を見極めて柔軟に対応する重要性を強調した。さらに、バイオセキュア法(2025年12月24日記事参照)を背景に、中国系企業との取引制限や供給網の見直しが進む中、日本企業にとっては品質・供給安定性や地政学的信頼性を強みに代替需要を取り込む機会が拡大していると指摘した。
米国東海岸では、ボストン(研究・起業)、ニューヨーク(資本・事業開発)、フィラデルフィア(臨床実装)、首都ワシントン(政策・規制)、ノースカロライナ(製造・供給)といった州・都市が機能を分担しながら、地理的に続く世界最大のサイエンスクラスターを形成している。各都市の強みや特徴を踏まえ、研究開発、臨床検証、資金調達、規制対応、量産化といった目的に応じたエコシステムを選択することで、効率的な事業展開が可能となる。
米国進出にあたっては、米国食品医薬品局(FDA)規制対応や知財の早期整備、展示会やピッチを活用した市場アプローチ、需要形成後の代理店契約という順序立てた戦略設計が不可欠とした。FDA対応に関しては、ワシントン近郊など規制コンサルタントが集積する東海岸で体制を構築することで、当局との面談機会を得やすいと指摘した。知財に関しては、日本での権利整備を前提に米国では専門家と連携し、知財管理を戦略として事業計画と一体で管理する重要性を強調した。また、代理店選定および契約の際には、顧客へのアクセス、物流・在庫・請求能力や競合他社を確認した上で、製品の独占権や契約解約条項の設定が重要とした。契約をスムーズに進めるための米国法人の設立に関しては、最小体制から開始し、事業の進展に応じて段階的に拡大する手法が現実的とした。製品評価は高いものの流通に課題を抱えていた日系企業が、米国法人設立により契約主体や運用体制を明確にすることで、代理店からの初回受注につながった事例も紹介した。
星場氏の講演に続いて、ジェトロから、2026年3月にメリーランド州で実施したライフサイエンス投資ミッションの概要を紹介した(注)。併せて、今後、同分野のミッションを米国内で継続的に実施していく予定と説明した。
ウェビナー参加者からは、「各都市の目的別のメリットが参考になった」「各企業がそれぞれの段階で取り組むべき戦略などがわかりやすかった」「今後の米国内物流拠点展開策を考える際の参考にしたい」など、エコシステム単位での掘り下げや分野横断的な戦略的アドバイスを評価する声が寄せられた。
本ウェビナーは、ジェトロのウェブサイト(ウェビナー/WEBセミナー)でアーカイブ動画を配信。
(注)ミッションについては、2026年3月31日記事、2026年3月31日記事、2026年4月7日記事を参照。
(堀田基、奥修平、井原紗奈、部谷亜里香)
(米国、日本)
ビジネス短信 4eeaa36a92d129b8





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