米メリーランド州ライフサイエンスミッション、医療機器・技術の事業化支えるエコシステムを視察
(米国)
ニューヨーク発
2026年04月07日
ジェトロが3月23~25日に派遣した、米国メリーランド州ライフサイエンス産業ミッション(2026年3月31日記事参照)では、ライフサイエンス企業の州内での起業から事業化、製造移行、規制対応などを包括的に支えるエコシステムの現状を視察した。
3月23日に訪問したボルチモア市のローンチポート(LaunchPort:LP)
は、医療機器・技術系スタートアップの事業化や製造移行を専門的に支援するインキュベーション・パイロット製造拠点であり、同市のエコシステムの象徴的存在だ。2026年3月現在、22社が入居している。
同施設はISO13485に準拠した(注1)設備を備え、品質管理やサプライチェーン構築、患者向け個別出荷にも対応し、企業が臨床・市場参入に集中できる環境を提供している。また、同社が拠点を置くシティ・ガレージ(City Garage)
は、元自動車修理工場を改修した複合イノベーション兼インキュベーション拠点で、LPのほか、研究成果の事業化を支援するライフサイエンス系アクセラレーターであるブラックバード・ラブス(Blackbird Labs
)、米国を代表する大手臨床検査サービス企業であるクエスト・ダイアグノスティクス(Quest Diagnostics
)などが入居し、地域のライフサイエンス産業を牽引している。
LPのマネージングパートナー、ロバート・ストーリー氏は「ボルチモア、ワシントンDC、フレデリックへと広がる州内ライフサイエンス・トライアングルは、臨床・研究・規制機能が全て地理的に密集する点において、米国でも非常にまれな地域である」と説明する。また、その中核をなすシティ・ガレージの拠点では、「ブラックバード・ラブスの参入などにより、治療・診断・デバイスが融合するコンバージェンス型の技術創出も加速している」とも述べた。
ロバート・ストーリー氏による説明(ジェトロ撮影)
外国企業に対する伴走型の市場参入支援
LPのエドマンド・ペンドルトン氏は、同氏が担う外国企業向けの米国市場参入支援スキーム「Landing Pad Program」について説明した(注2)。
同プログラムは、次の3段階で構成される。
- 母国での市場仮説構築・顧客理解を徹底するディスカバリートレーニング。
- LPがコンシェルジュとして、メリーランド州での米食品医薬品局(FDA)や米国立衛生研究所(NIH)、臨床関連機関、投資家などとの個別面談を仲介する。
- 拠点設置後6~12カ月の市場開拓、製造移行、臨床、資金調達などの事業化実務を長期伴走支援する。
ペンドルトン氏は、スタートアップ失敗の多くは「市場ニーズの読み違い」によるものであり、それを防ぐため、顧客の声を体系的に検証し理解を深める「ディスカバリー」訓練の重要性を強調した。さらに、人工知能(AI)を使ったインタビュー訓練など支援手法の高度化も進めているという。
一連のプログラムの最大の特徴について、同氏は「企業に『自分で会いに行け』とは言わず、われわれが先方との面会の機会を開く。ネットワークを実行力によって活用する点こそが、最大の価値だ」と述べた。
(注1)医療機器の設計・製造・品質管理に関する国際規格。
(注2)同プログラムの詳細について、ウェブサイトなどで一般公開されているものはなく、記載は今回のミッションに対する口頭説明内容に基づく。
(伊藤博敏)
(米国)
ビジネス短信 673bb83127cd02fa





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