ジェトロ、米メリーランド州にライフサイエンスミッションを派遣

(米国)

ニューヨーク発

2026年03月31日

ジェトロは32325日、米国メリーランド州のライフサイエンス産業エコシステムの実態把握を目的とするビジネス・投資環境調査ミッションを派遣した。日本企業・団体関係者約15人が参加した。

同ミッションは、323日、ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)の産学連携ハブであるジョンズ・ホプキンス・テクノロジー・ベンチャーズ〔Johns Hopkins Technology Ventures(JHTV外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕を訪問。同大学の研究成果の事業化や企業との共同研究の現場を視察した。JHTVJHUの全10学部を横断し、1.技術移転、2.企業連携・産学共同研究、3.起業家育成・スタートアップ支援、を統合的に推進する機関であり、学術研究成果の社会実装を一手に担う。

写真 JHTV外観(ジェトロ撮影)

JHTV外観(ジェトロ撮影)

JHTVシニアディレクターのリズ・バーガー氏によれば、2014年以降、JHTVが支援したスタートアップは累計約48億ドルの資金調達を実現し、MAや新規株式公開(IPO)などにより45件のエグジット(注)を達成するなど、大学発イノベーション拠点として存在感を高めている。また、これまでに60社・機関の産業パートナーから、27,660万ドルの研究助成金を受けたほか、累計39,500万ドル、近年では年間約6,000万ドルのライセンス収入を獲得するなど、学術研究の商業化の側面でも国内で中心的役割を果たしている。

JHUの工学教育と先端研究を担う工学大学院ホワイティング・スクール・オブ・エンジニアリング(Whiting School of Engineering)のディレクター、セス・ソニーズ氏は、JHUによる近年最大規模の戦略的研究投資プロジェクトであるデータサイエンス&人工知能(AI)インスティテュート(Data Science & AI Institute:DSAI外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を紹介。DSAIでは今後数年で、150人規模のAI研究教員を採用し、約46,000万平方メートルのAI研究棟を建設する。「全学部横断型の最新AI研究開発拠点として、企業との共同研究の新たな受け皿になる」という。

写真 工学部に関する説明の様子(ジェトロ撮影)

工学部に関する説明の様子(ジェトロ撮影)

また、企業との連携に関しては、「企業の技術課題に基づき、学内研究者をマッチングする戦略的共同研究モデルを採用」している。日本企業との間でも医療用画像の解析や創薬などの分野で複数の企業と共同研究開発が進んでいるという。また、バイエル(眼科領域)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、米国アマゾン(音声認識・機械学習)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどの主要グローバル企業とも多様な共同研究の実績を有する。また、2024年には核酸合成・製造に卓越した技術を持つ米国のトライリンク・テクノロジーズと提携しmRNAセンターを設立、RNA治療薬およびRNA創薬を目指している外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。企業連携部門のディレクターを担うトム・ン氏は、これらの共同研究による企業側のメリットについて、「研究設備や大学トップ研究者へのアクセス」だけでなく「高度人材と次世代研究開発シーズの継続確保」が可能となる点を強調した。

写真 JHTV内施設見学の様子(ジェトロ撮影)

JHTV内施設見学の様子(ジェトロ撮影)

ミッションに参加した日本企業からは、「連邦政府から大学への補助金や助成金が縮小する中、大学側がこれまで以上に民間企業との連携を重視している姿勢が理解できた」との声が聞かれた。また、「JHTVが提供する多様な事業化支援や企業連携の仕組みを初めて体系的に理解した。将来的な共同研究や人材確保を見据えた協業の可能性を検討する価値がある」との評価も寄せられた。

(注)「出口」を意味し、スタートアップにおいては創業者、投資家が保有する株式を売却し、投資資金を回収して利益を獲得すること。

(伊藤博敏)

(米国)

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