カナダ9州、酒類の州間取引規制を緩和、米国関税圧力下で州間経済連携を強化
(カナダ、米国、日本)
調査部米州課
2026年07月30日
カナダの9州(注1)は7月21日、国内で生産された酒類について、各州の専売公社を介さず州境を超えて販売できる「消費者直接取引(DTC)」制度の導入に向けた最終合意に署名したと発表
した。DTC制度により、カナダ国内の消費者は他州の酒類製造者から商品を直接購入することができる(注2)。
カナダでは、酒類の輸入・販売について州政府公社による専売制度が敷かれており、州間取引も各州の専売公社を介した販売が主流となっていた。特に中小規模の酒類製造者にとっては、州外販売の際の手続きが大きな負担となっていた。今回の合意により州間取引に関する規制が緩和され、酒類製造者は他州の消費者へ直接販売することができる。
オンタリオ州のダグ・フォード首相は、「カナダ全土の生産者や消費者に新たな市場や選択肢、利便性をもたらすとともに、国内の貿易障壁によって阻害されている2,000億カナダ・ドル(約23兆2,000億円、Cドル、1Cドル=約116円)超の経済機会の創出につながる」と述べ、米国による追加関税措置を念頭に、州間の経済連携を強化する必要性について強調した。米国のドナルド・トランプ大統領は7月20日、酒類を含むカナダ産品に対し、1930年関税法338条に基づき50%の追加関税を課すと発表していた(2026年7月21日記事参照)。
今回の合意の対象となる酒類はカナダ国内で製造されたものに限られるため、日本酒などの外国産品には適用されない。また酒類製造者が販売する場合のみに適用され、リテーラーや再販業者は対象外となる。このため、日本からカナダへ輸出される日本酒などには、引き続き各州の専売公社による規則が適用される(2024年10月17日付地域・分析レポート参照、注3)。一方、日本からカナダへの日本酒の輸出総額は過去10年間で約3.4倍に増加している(添付資料図参照、注4)。今後、州間取引の自由化がカナダにおける酒類の流通市場全体に与える影響が注目される。
(注1)アルバータ州、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州、サスカチュワン州、マニトバ州、オンタリオ州、ニュー・ブランズウィック(NB)州、ノバスコシア州、プリンス・エドワード・アイランド州、ニューファンドランド・ラブラドール州が含まれる。ケベック州とユーコン準州は、今後署名する見込みだ。
(注2)マニトバ州とNB州は既に全ての酒類を対象としたDTC制度が導入されている。また、ノバスコシア州とBC州では、カナダ産ワインを対象としたDTC制度が導入されている。BC州は2027年2月までに全ての酒類を対象としたDTC制度を導入する予定だ。
(注3)オンタリオ州の酒類の市場概況などについては、ジェトロの調査レポート「カナダ・オンタリオ州における日本産酒類および酒器の流通に関する調査(2024年3月)」参照。
(注4)カナダで開催された日本酒に関するイベントについては、2026年2月19日記事、2025年10月20日記事、2025年2月20日記事を参照。
(木村勇翔)
(カナダ、米国、日本)
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