トランプ米大統領、税関執行の強化を指示する大統領令発表

(米国)

ニューヨーク発

2026年06月05日

米国のドナルド・トランプ大統領は6月3日、税関執行を強化する大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同日、ファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも公表した。記録輸入者(IOR、注1)に対する要件の厳格化、情報開示義務の追加、外国のIORによる簡易輸入手続きの禁止などを指示している。

大統領令では、輸入品の価額の過少申告や関税の支払い回避などを防ぐ必要性について言及し、「税関改革は長く待ち望まれてきた」とした。その上で、「違法かつ危険な物品の輸入を防止し、IORを適切に特定し、納付すべき関税について確実に責任を負わせること」を本大統領令の目的とした。

大統領令の主な内容は次のとおり。

〇IORに対する措置:国土安全保障省(DHS)長官は、以下を実行するための規則の改定などを行う。

  • 本大統領令の発令から180日以内に、IORに対し一定程度の米国内の有形資産、税関保証金(注2)を常に維持することを義務付け、かつ保証金の最低限度額を引き上げる。また、税関・国境警備局(CBP)に対する予想輸入量や企業の設立年、事業提携関係などの情報提供を義務付ける。
  • 外国のIORによる略式輸入(注3)を禁止する。外国のIORに対し、CBPのテロ対策税関貿易パートナーシップ(CTPAT、注4)の認証を受けるか、CTPATの認証を受けた通関業者を通じた輸入申告を義務付ける。
  • 180日以内に、全てのIORに対し、CBPと「良好な状態」の維持を義務付ける。CBPは今後、IORの法令順守状況などに基づき「良好な状態」を定義する。例えば、フェンタニルなどの違法薬物を輸入した場合は、「良好な状態」にあるとみなさない。
  • 180日以内に、外国のIOR、IORの関連会社、通関業者、保税貨物の保管者、運送業者を含む、輸入に直接関連する活動を行う全ての個人・事業体に対する、定期的な審査手続きを確立する。

〇輸入開示に関する措置:DHS長官は、輸入品のサプライチェーンおよび製造方法に関する情報開示など、輸入における情報開示要件を確立する。また90日以内に、外国の輸出者が米国へ輸出する際、輸出国税関に提出する全ての書類を米国へも提出するよう義務付ける。

〇執行・罰則:DHS長官は、デューディリジェンスを実施しない、CBPからの情報提供要請に協力しない場合などに対する罰則を強化する。

〇立法措置:DHS長官は、45日以内に、税関執行強化のための立法措置に関する勧告を、通商・製造担当上級顧問を通じて大統領に提出する。

今回の大統領令について、ピーター・ナバロ通商・製造担当上級顧問は、「米国市場へのアクセスは特権であり、抜け穴ではない。米国への輸入を希望するならば、透明性を保ち、財務面での説明責任を果たし、米国法にのっとった健全な状態にある必要がある」とその趣旨を説明している(政治専門紙「ポリティコ」6月3日)。

複数の関税措置を実行しているトランプ政権は、関税の不当な回避に対する取り締まりなどを強化している。2025年8月には、省庁横断の貿易詐欺対策タスクフォースを立ち上げたほか、2027会計年度(2026年10月~2027年9月)の予算教書では、全体的に予算を削減する方針を掲げる中で、貿易上の不正行為に対処するため、商務省国際貿易局(ITA)へは予算増を要求している(2026年4月7日記事参照)。

(注1)輸入品が、通関および法的要件を順守していることに責任を負う当事者。物品の輸入者または通関業者がこれに当たる。

(注2)米国では、輸入者が何らかの事情で関税を支払えない場合、仲介する保証会社が支払う。輸入者はCBPが認定する保証会社と契約を結び、必要な保証金を預けておかなければならない(2025年9月3日記事参照)。

(注3)米国では2,500ドル未満の小口貨物は略式輸入(informal entry)として扱われ、通常の貨物よりも簡易な通関手続きが適用される(ジェトロの貿易・投資相談Q&A参照)。

(注4)CTPATは、2001年の同時多発テロを受けて導入された官民共同のプログラムで、米国向け貨物のサプライチェーンのセキュリティー強化と貿易円滑化の両立を目的とする。CTPATは「セキュリティー」と「貿易法令順守」の2つのプログラムで構成しており、貿易法令順守プログラムの認定事業者は、セキュリティープログラムに参加している場合の便益に加えて、CBPの事前教示制度の裁定迅速化などの便宜を享受できる(2022年11月25日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国)

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