米税関から輸入者へ保証金(ボンド)引き上げ要求が増加

(米国)

ニューヨーク発

2025年09月03日

米国税関・国境警備局(CBP)が輸入企業に対し、税関保証(Custom Bond)の金額引き上げを要求する事例が増加している。国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく相互関税や1962年通商拡大法232条に基づく関税などの発動による税率引き上げにより(2025年6月24日付地域・分析レポート参照)、輸入者の支払い関税額が急増していることで、既存の保証額ではリスクに見合わないとCBPが判断しているためだ。特に232条関税対象品目(鉄鋼・アルミ、同派生品、自動車部品など)の輸入企業や、中国をはじめとした適用関税率の高い相手国からの輸入に対し、積み増しを求めるケースが増加している。

税関保証とは、CBPに対する保証制度で、輸入者が何らかの事情で関税やペナルティーを支払えない事態に陥った場合、仲介する保証会社がこれを支払う仕組みだ。インボイス価格が2,500ドル以上の貨物を輸入する場合、輸入者はCBPが認定する保証会社と契約を結び、必要な保証金を預けておかなければならない(注1)。

税関保証には、(1)1回限りの輸入に適用するSingle Bondと、(2)1年間何度でも適用できるContinuous Bond(更新可)がある。CBPは後者の適正額に関し、当該企業の年間の関税や手数料支払い額の合計額に対する10%、もしくは5万ドルのいずれか大きい方を最低ラインとする基準外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを有する。

米国内で輸入通関業務を担う日系事業者によると、「追加関税の発動以降、一部の荷主でボンドの不足が生じ、追加が必要な事例が見受けられる。特に中国発の貨物が多い荷主が対象になっている印象だ」という。また、在ケンタッキー州の日系自動車部品会社も、一部の輸入品に50%の鉄鋼・アルミ関税が賦課されたことにより、「税関保証金を現状の5倍近くに引き上げるよう、CBPから通知が来ている」という(いずれも8月時点、ジェトロ聴取)。

業界団体や通関業者からも、ボンド不足による通関遅延や罰則リスクへの懸念が報告されている。全米通関業者・フォワーダー協会(NCBFAA)は2025年4月の年次会議で、この問題を議論し、輸入業者の関税債務が増加するにつれ、財務諸表の提出要求などが増えるとともに、より高額な保証金や担保を求められるリスクを指摘した(NCBFAA 4月8日)。また、同会議では、CBPから輸入者に対し「情報提供要請書(Form28)」や「措置通知書(Form29)」の発行が増加し、通関業務が滞る事態への懸念も示している(注2)。

なお、税関保証金の支払い義務を負うのは、通関手続き書類上の輸入者だ。また、実務ベースでは、保証金の支払いに関わる保証会社とのやり取りを通関業者が代行するケースも多い。そのため、在米日系輸送業者からは「輸入品のユーザー企業などが保証金の引き上げの必要性を認識していないケースも見られる」との声も聞かれる(8月にジェトロ聴取)。保証金不足による通関差し止めや、保証会社による引き受け拒否などの事態を避けるべく、現状の把握、通関業者や保証会社との協議、対策の検討、財務関連情報の準備などの対応が求められる。

(注1)保証契約は、輸入者とCBPが認定した保証会社の間で締結され、税関指定フォーム(Form301)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCBPに提出される。輸入者がCBPに対して直接保証金を預け入れる仕組みにはなっていない。

(注2)Form28は、CBPが輸入者に対し、追加情報や書類を求める通知。特に関税分類や評価、原産地に疑義がある場合などに発行する。Form29は、CBPが輸入申告の修正を行う場合、提案する場合などに発行する。詳細はCBPのガイダンスPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照。

(伊藤博敏)

(米国)

ビジネス短信 5da09f0237615c0a