米国とメキシコ、USMCA見直しで2回目の協議、分野横断で議論進展

(米国、メキシコ、カナダ)

ニューヨーク発

2026年06月22日

米国通商代表部(USTR)は6月18日、ジェミソン・グリア代表とメキシコのマルセロ・エブラル経済相の共同声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。両国は6月15~17日にかけて、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しに向けた2回目の公式協議を実施していた。また6月18日には両氏が会談し、USMCA見直しのほか2国間の貿易関係について協議した。

共同声明によれば、両国はUSMCA見直しに向け、特定の工業製品の原産地規則および経済安全保障に関する議論を進めるとともに、農業、労働、環境に関する議論を開始した。また、鉄鋼、アルミニウム、自動車の貿易についても協議した。さらに、両国での規制の整合性を高めるため、USMCA第12章の履行状況を検証する委員会の設置を進めることで合意した。USMCA第12章では、化学品や化粧品、情報通信技術(ICT)、医療機器・医薬品などの分野において、3カ国間の貿易円滑化のための共通ルールや規制の調整を規定している。

5月に実施された1回目の協議では、自動車の原産地規則、鉄鋼・アルミニウム、経済安全保障について議論したほか、医療機器、医薬品、化粧品分野における規制の整合性の向上に向けた協力を推進することで一致していた(2026年6月1日記事参照)。

USMCA見直しに向けた協議は7月以降も続く見通し

エブラル経済相は会談後、メキシコ、カナダ、米国の3カ国が、7月1日にオンラインで会合を開き、共同見直しを正式に開始する予定だと明らかにした(米通商専門誌「インサイドUSトレード」6月18日)。2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められているが、発効6年後に見直し会合を実施し、3カ国が延長に合意すれば、その時点からさらに16年間延長される(注1)。

一方、米国とメキシコの3回目の2国間協議は7月20日の週に予定されている。米国とカナダは非公式協議にとどまり、正式な2国間交渉はまだ開始されていない。このため、7月1日のUSMCA見直し会合で3カ国が延長に合意する可能性は低いとみられている(注2)。エブラル経済相も、7月中に結論が出る可能性は低いとの見通しを示している(2026年6月16日記事参照)。

北米に進出している多くの日系企業のサプライチェーンは、USMCAの特恵関税(無税)の利活用や米国の低い関税率を前提に構築されている。今回の見直しを通じてUSTRは、域内原産割合(RVC)の引き上げや中国製部品の利用制限など、原産地規則を厳格化する方針だと指摘されている(注3)。仮に厳格化された原産地規則を満たせず無税適用が受けられなくなれば、在北米日系企業のビジネスに影響する。米国による追加関税が常態化する中、その影響は一層大きくなり得る(注4)。USMCAの行方は引き続き注目する必要がある(注5)。

(注1)延長に合意できなかった場合、その後も毎年見直しが継続され、合意に至った時点から16年間延長される。最終的に合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。

(注2)メキシコ経済省の元通商担当次官であるフアン・カルロス・ベイカー氏は、2026年中に結論が出ることはないとの見通しを示している(2026年6月11日記事参照)。

(注3)1回目の米国とメキシコの協議では、USTRが完成車のRVCを75%から82%へ引き上げ、そのうち米国原産割合を50%とするよう提案したと報じられている(「ロイター」5月29日)。なお、この米国原産割合の引き上げは、労働付加価値割合(LVC)の引き上げを意味するとの指摘もある。現在のUSMCAの原産地規則の詳細については、2019年5月8日付地域・分析レポート参照

(注4)USMCAの原産地規則を満たす品目については、追加関税の対象外となる、または関税率が緩和される場合がある。

(注5)USMCA見直しの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照

(赤平大寿)

(米国、メキシコ、カナダ)

ビジネス短信 e37e70a087fb9bdd