米国とメキシコ、USMCA見直しで初協議、原産地規則の強化が提案か
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2026年06月01日
米国通商代表部(USTR)は5月29日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の共同見直しに向け、メキシコとの初の協議をメキシコ市で開催したと発表
した。USTRは完成車に対する原産地規則の強化を提案しており、北米自由貿易協定(NAFTA)から厳格化されたUSMCAの原産地規則が、見直しを機にさらに強化される可能性がある。
2020年7月1日に発効したUSMCAは、条文上、発効から16年後に失効すると定められている。ただし、発効6年後に見直し会合の実施が規定されており、この見直しで3カ国が延長に合意すれば、合意時点から16年間延長される。延長に合意できなかった場合、その後も毎年見直しが継続され、合意に至った時点でそこから16年間延長される。合意に至らない場合、USMCAは条文に従い2036年に失効する。
USTRの発表によると、今回の協議は、米国の対メキシコ貿易赤字の削減および米国のサプライチェーン強化を目標としていた。自動車の原産地規則、鉄鋼・アルミニウム、経済安全保障について議論が行われたほか、医療機器、医薬品、化粧品分野における規制の整合性向上に向けた協力の推進でも一致した。なお、今回の協議には、米国側からはジェフリー・ゲットマンUSTR副代表が出席した。ジェミソン・グリアUSTR代表はホワイトハウスでの閣僚会合に出席するため欠席したが、メキシコのマルセロ・エブラル経済相とオンラインで協議する予定だと伝えられている(米通商専門誌「インサイドUSトレード」5月27日)。
見直しにおいて企業への影響が最も大きいと見られるのは、原産地規則の強化だ。「ロイター」(5月29日)によると、今回の協議でUSTRは、完成車の域内原産割合(RVC)を82%へ引き上げ、そのうち米国原産割合を50%とするよう提案した(注1)。また、中国原産品の使用割合を制限する規則も提案される可能性が指摘されている。北米には、中国から部品を調達し、メキシコで加工して米国へ輸出するサプライチェーンを有する日系企業が複数存在する。自動車部品は、完成車となるまでに米国とメキシコの国境を平均で8回以上通過するとされており、仮に関税負担が生じた場合、厳格化された原産地規則を満たせずその影響は大きい(注2)。
協議日程については従来の発表
から変更はなく、第2回協議は6月16~17日に首都ワシントンで開催され、農業と公正な競争条件が新たな議題として加えられる。また第3回協議は、7月20日の週に再びメキシコ市で行う。一方、見直し会合自体は7月1日に予定されているが(注3)、USTRは事実上、見直し会合以降も協議を継続する意向を示している。見直しが毎年継続される場合、USMCAは不安定な状態に置かれ、企業の投資判断に影響を及ぼす可能性がある。
なお、メキシコとの協議が進んでいる一方で、カナダとの協議の日程は発表されていない。グリア氏は5月26日、首都ワシントンで開催されたセミナーで、カナダがトランプ政権の追加関税措置に対して、中国と並び報復措置を講じた国だと批判していた(注4)。
(注1)現在、USMCAの完成車に対するRVCは75%で、米国内の生産割合は規定されていない。なお、RVCに加え、「スーパーコア」と定義される重要な自動車部品が全て原産品であることなど、複数の要件が存在する。詳しくは、2019年5月8日付地域・分析レポート参照。
(注2)中国製部品の利用制限に関する規制案やUSMCA見直しの見通しについては、2026年2月20日付地域・分析レポート参照。
(注3)USMCAの条文には見直し会合の具体的な日付は明記されていないが、USTRは見直しに向けた手続きの中で、7月1日に実施予定だと官報で公示している(2025年9月18日記事参照)。
(注4)同セミナーでグリア氏はこのほか、対メキシコ貿易赤字が存在する限り関税賦課は避けられないことや、見直しでは米国産品の割合を高めるための原産地規則が議論されるとの趣旨の発言をした(2026年5月29日記事参照)。
(赤平大寿)
(米国、メキシコ、カナダ)
ビジネス短信 7d856e207a8b6edc





閉じる