欧州委、肥料行動計画を発表、バイオベース肥料の生産拡大など目指す

(EU、中東)

ブリュッセル発

2026年06月09日

欧州委員会は5月19日、EU域内の肥料の安定供給に向けた「肥料行動計画外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2022年に続き(2022年11月16日記事参照)、価格高騰や供給不足(添付資料図1、2参照)に直面する農業事業者への短期的支援に加え、域内生産の強化、輸入依存の低減やサプライチェーンの強化に向けた長期的な施策を示した。

共通農業政策(CAP)や中東情勢に対応するための国家補助規制の暫定緩和策(2026年5月7日記事参照)を活用した事業者支援、原料供給源の多角化や備蓄強化、供給の予見性を高めるため農業・肥料生産部門・加盟国の連携強化なども盛り込んだ。

行動計画の中で、域内生産の強化に向け重点を置かれているのが、域内資源を活用したバイオベース肥料や低炭素肥料の生産・利用の拡大だ。バイオベース製品のリード市場創出を目指すバイオエコノミー戦略(2025年12月8日記事参照)に沿い、規制や市場障壁の撤廃、製品の定義の明確化や関連法令の見直しを行うとした。しかし、欧州肥料工業会(ファーティライザー・ヨーロッパ)は同日付の声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、「有機肥料で代替可能なのは化学肥料使用量の約3%」で化学肥料の域内生産強化が不可欠と指摘。低炭素製品の生産拡大にはエネルギー価格の引き下げや企業の投資判断を後押しする技術中立の規制枠組みが必要と述べた。

肥料部門はCBAM歓迎も、農業部門はコスト増加に不満

肥料生産者と使う側の意見が割れたのはEU炭素国境調整メカニズム(CBAM)についてだ。欧州委はEU排出量取引制度(EU ETS)とあわせ、「CBAMは域内産業の競争力強化に必須」と述べ、迂回行為対策も含めて(2025年12月19日記事参照)強化する方針だ。欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体のCOPA-COGECAは、CBAMによる肥料価格の上昇と負担増加を懸念し、CBAMの一時停止や長期的な追加コストの相殺措置を要請してきた。今回の行動計画で欧州委は、2027年第1四半期(1~3月)に、CBAMおよびEU ETSの農業事業者への転嫁コスト評価を行うとした。しかし、COPA-COGECAは5月19日付の声明で、行動計画にはCBAMによる農業事業者への破壊的なコストの影響には触れられなかったと批判。また、EU ETSの収益による農業事業者への支援可能性に言及があるものの、具体策は低炭素肥料生産支援のみで、「主に恩恵を受けるのは肥料生産部門」と不満を示した。一方、欧州肥料工業会はCBAM強化の方針を歓迎し、EU ETSの包括的な見直し(2026年5月18日記事参照)では、他産業より緩やかな無償排出枠の廃止など、肥料バリューチェーン固有の状況に十分配慮するよう要請した。

(滝澤祥子)

(EU、中東)

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