欧州委、バイオ技術の実用化と投資拡大に向け新たなバイオエコノミー戦略を発表

(EU)

ブリュッセル発

2025年12月08日

欧州委員会は11月27日、「競争力があり持続可能なバイオエコノミーのための戦略的枠組み」と題する、EUの新たなバイオエコノミー戦略を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同戦略は、EU経済の競争力と強靭(きょうじん)性の強化に向け、バイオエコノミー分野の産業展開や市場拡大を目指すものだ。(1)イノベーションと投資の拡大、(2)新たなバイオベース市場の創出、(3)持続可能なバイオマス供給の確保、(4)世界的な機会の活用からなる。

バイオ技術の実用化を加速させるには、既存の障壁を解消するとともに、投資の拡大が必要となる。そこで、欧州委は、革新的なバイオ技術のリスク評価に関するベストプラクティスの交換や関連企業との早期対話を実施すべく、「欧州バイオエコノミー規制当局・革新企業フォーラム」を2026年第1四半期に設置する。その上で、バイオ技術に関連した規制を簡素化し、製品の承認を迅速化すべく、バイオ技術法案を2026年第3四半期に提案する。

また、バイオ技術の実用化までには多額の初期投資が必要であることから、民間投資を呼び込むべく、欧州委、欧州投資銀行グループ、加盟国の政策金融機関と、民間投資家からなる「バイオエコノミー投資展開グループ」を2026年以降に設置する。グループを通じ、リスクを効果的に分担し、銀行融資可能なプロジェクトのパイプラインの構築を図る。特に、バイオマスを原料に製品を製造するバイオリファイナリー、微生物や酵素を利用しバイオベースの製品を効率的に生産する高度発酵施設、バイオベース素材の製造の分野において前例のないプロジェクトを対象とする。次期中期予算計画(MFF)の欧州競争力基金(2025年7月22日記事参照)においても、バイオ技術向けの支援予算を増額する予定だ。

このほか、バイオベース素材は製造コストが高く、現状では需要が限定的であることから、リード市場の創出も欠かせない。そこで欧州委は、2026年中に提案予定の公共調達指令の改正案において需要喚起策を盛り込む。特に潜在性の高く、スケールアップが期待される分野として特定した、バイオベースのプラスチック、繊維、化学品、建設資材、肥料については、包装・包装廃棄物規則(注)、エコデザイン規則(注)、建設資材規則(2023年12月28日記事参照)などにおいて、認証制度、性能要件、標準化の策定なども進める。

(注)詳細は、調査レポート「EU循環型経済関連法の最新概要」(2024年11月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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