米国際貿易委、中国とのPNTR撤回による米国経済への影響を調査開始
(米国、中国)
ニューヨーク発
2026年03月02日
米国国際貿易委員会(USITC)は2月26日、1930年関税法332条に基づき、中国に対する恒久的正常貿易関係(PNTR)ステータスを撤回した場合の、米国経済への影響に関する調査を開始すると発表
した。
USITCには、関税法332条に基づき、米国と諸外国の産業間の競争条件を含め、関税や貿易に関するあらゆるテーマについて調査を行う権限が与えられている、ただし、USITCは調査結果に基づく勧告などは行わない(注1)。「2026年度商務・司法・科学・エネルギー・水資源開発・内務・環境歳出法」に付随する下院歳出委員会の報告書
は、USITCに対し、中国に対するPNTRステータス撤回が、6年間にわたって米国経済、産業、および製品調達に与える影響を調査するよう指示していた。
米国の関税体系は、PNTRステータスを与えた国などに対する特恵税率(コラム1)と、特定国向けの関税率(コラム2、注2)に分かれており、コラム2の関税率はコラム1よりも高い。このため、調査では特に、コラム2の関税率を中国製品に適用した場合に最も影響を受ける可能性のある産業と、それら産業における米国の貿易や生産、価格への影響を分析する。また、連邦議会が中国に対するPNTRステータスを撤回し、国家安全保障関連の特定品目に対して5年間の段階的な関税措置を設けるという代替シナリオの下での影響も検証する。USITCは電子文書情報システム(EDIS)を通じて、本調査に関するパブリックコメントを4月13日まで受け付ける。報告書は8月21日までに公表する予定だ。
ドナルド・トランプ大統領は2025年1月の大統領覚書の中で、米国通商代表部(USTR)に対し、中国へのPNTRステータス付与の見直し可否を検討するよう指示していた(2025年1月22日記事参照)。また、連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」の委員長を務めるジョン・ムーレナー下院議員(共和党、ミシガン州)は2025年4月、対中PNTR撤回を求める内容の論考を発表するなど(2025年5月2日記事参照、注3)、中国に対するPNTR撤回を巡る議論は継続的に顕在化している。
PNTRが撤回されれば、多くの品目で関税率が大幅に引き上げられ、物価や国内産業への影響は避けられない。連邦最高裁判所は2月20日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき課されていた関税を無効とする判決を下した(2026年2月24日記事参照)。トランプ政権は関税政策の再考を迫られているため、本調査結果の行方が注目される。
このほか、USITCは2月26日、中国のバイオテック分野における国家的な支援と価格設定の慣行、および米国産業の市場シェアや競争力に与える影響を調査開始すると発表
した。2025年12月に成立した2026年度国防授権法(NDAA)でもバイオテック企業への規制が拡大しており(2025年12月24日記事参照)、この分野での対中規制動向も注目される。
(注1)調査は大統領や連邦議会で通商を所管する上院財政委員会および下院歳入委員会、米国通商代表部(USTR)から要請があった場合に開始できるほか、USITCが独自に始めることもできる。調査期間はUSITCが独自に定められるが、法律の定めなどによって要請者から指定されることもある。調査結果は要請者に提出され、安全保障上の理由がない限り、通常は一般に公開される。
(注2)現在はキューバ、北朝鮮、ロシア、ベラルーシの4カ国がコラム2に含まれている。
(注3)ムーレナー議員は論考発表前の2025年1月にPNTRステータス撤回を含む法案を提出していたものの(2025年1月24日記事参照)、現在も未成立となっている。
(滝本慎一郎)
(米国、中国)
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