米調査会社、2026年10大リスク発表、USMCAの「ゾンビ化」指摘
(米国)
ニューヨーク発
2026年01月06日
米国の調査会社ユーラシア・グループは1月5日、2026年の「世界の10大リスク」
を発表した。1位は「米国の政治革命」、2位は「『電気国家』中国」、3位は「ドンロー主義(トランプ版モンロー主義、注1)」だった(添付資料表参照)。
同社が1位に挙げた「米国の政治革命」では、「ドナルド・トランプ大統領は、自らの権力に対する抑制を組織的に解体し、政府機構を掌握し、それを敵に対して武器化しようとしている」と指摘した。さらにトランプ氏の大統領としての任期が残り3年に限られていることに加え、11月に予定されている中間選挙では民主党が連邦下院で多数政党になる見込みだとして、「レガシーを定着させようと、リスク回避的になるどころか、よりリスクを取るようになるだろう」とも指摘した。関税については、2025年ほどではないにせよ、「貿易および非貿易上の譲歩を引き出すために引き続き利用されるだろう」との見通しを示した。
2位の「『電気国家』中国」では、「21世紀の経済を定義する技術は、電子で動いている」として、電気自動車(EV)、ドローン、蓄電池、人工知能(AI)などを例示し、これらに共通するシステムである「電気スタック(electric stack)」(注2)を中国が掌握していると指摘した。特に、中国が世界のリチウムイオン電池生産の約75%、モーターに使用されるネオジム磁石の90%を支配していると強調した。EVなどの過剰生産に対しては、西側諸国からの批判があっても「生産の手を緩めることはない」との考えを示している。米国では政府も議会も、中国の過剰生産をたびたび問題視している(注3)。
3位の「ドンロー主義」では、トランプ政権は西半球における中国、ロシア、イランの影響力を抑え込むだけでなく、軍事的圧力、経済的強要、選別的な同盟構築などを用いて「積極的に米国の優位性を主張しようとしている」と指摘した。ベネズエラでの軍事作戦(2026年1月5日記事参照)については、「トランプ氏にとって大きな勝利をもたらした」と評価した一方で、「困難なのはこの後だ」として、「民主的な政府への道は紛糾するだろう」との見通しを示した。
通商関係では、9位に「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)のゾンビ化」が入った。USMCAは協定本文において、発効6年目(2026年7月)に協定に参加する3カ国で共同見直しを行うことを定めている(注4)。同社は、USMCAに参加している3カ国での見直しはまとまらず、「延長も更新も破棄もされない」と予測し、「ゾンビのようによろよろと存続し、企業や政府は予測不可能な状況に陥るだろう」と指摘した。なお、首都ワシントンの有識者も、ジェトロのインタビューに対して、見直しにおいて3カ国での合意は難しいとの見通しを示している(2025年10月17日記事参照)。
ユーラシア・グループは、10大リスクが日本に与える影響も発表している。日本にとって最も重要なリスクは7位の「中国のデフレ」だとした。具体的には、中国国内の激しい競争が、現地でビジネスを行う日本企業や対中輸出を行う日本企業にとって過酷な環境を作り出すことや、中国は2025年よりもさらに大規模に安価な製品を輸出するとして、東南アジアなどでの日本製品との競合による収益の圧迫などを指摘した。
(注1)ジェームズ・モンロー第5代大統領が1823年に述べた「米国は欧州の国家間の争いに関与しない代わりに、欧州からの『西半球』(南北米州のこと)への影響力を排除する」に始まる、米国の外交政策に大きく影響を与えてきた概念。
(注2)「セル」を複数直列に接続して積み重ねた集合体のこと。
(注3)通商代表部(USTR)が毎年発表する外国貿易障壁報告書(NTE)(2025年4月2日記事参照)や、連邦議会の諮問委員会「米中経済・安全保障調査委員会(USCC)」の年次報告(2025年11月25日記事参照)などで、中国の過剰生産は問題視されている。
(注4)USMCAは、協定発効16年目(2036年7月)に失効すると定められているが、発効6年目の見直しで3カ国が延長に合意した場合、その16年後(2042年7月)まで延長される。3カ国が合意できなければ、以降2036年まで毎年見直しを実施し、延長を検討することになっている。
(赤平大寿)
(米国)
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