JCCHとホーチミン市が第24回ラウンドテーブル開催、ビジネス環境改善や行政手続きの合理化を焦点に

ベトナムのホーチミン日本商工会議所（JCCH）とホーチミン市人民委員会は2025年12月12日、24回目となるラウンドテーブル（注1）を開催した。ホーチミン市人民委員会側は、グエン・バン・ドゥオック委員長、グエン・ロック・ハー副委員長をはじめ、関係当局の幹部が出席した。日本側は、在ホーチミン日本総領事館の小野益央総領事、JCCHの久米邦英会頭、ジェトロ・ホーチミン事務所の岡部光利所長（JCCH副会頭）らが出席した。

ドゥオック委員長は、改正決議98号（注2）に基づき、ホーチミン市は（1）国際金融センター、（2）ハイテク産業、（3）港湾・物流インフラ、（4）観光・文化産業、（5）教育、医療、科学技術の5つを重点分野とするとしたうえで、「グリーントランスフォーメーション（GX）、デジタルトランスフォーメーション（DX）を推進し、これら2分野で強みをもつ日本企業に積極的な参加と投資を呼びかけたい」と述べた。

同ラウンドテーブルの開催に先立ち、JCCHは会員企業から寄せられた法務・労務、税務、通関、生活環境の4分野にわたる99件の意見や要望を23項目の新規要望として取りまとめた。その上で、2025年11月に実施されたプレラウンドテーブル（実務者会合）をはじめ、課題解決に向けた具体的な議論を重ねてきた。

同ラウンドテーブルでは、日本側から、ホーチミン市のリンチュン2輸出加工区、ヒエップフック工業団地における土地使用権証明書の発行、VAT（付加価値税）還付手続きの改善、タンソンニャット国際空港の出入国手続きの自動化ゲートの運用改善、ホーチミン市のガソリン車規制の方向性などに関する議題が挙げられた。このうち土地使用権証明書の発行については、ドゥオック委員長から関係部局に対し、2025年内に解決するよう強い指導が行われた。そのほか、ホーチミン市人民委員会は、投資環境の改善と手続きの合理化を継続し、2025年末時点で行政手続きを100％デジタル化する目標を設定しており、行政手続きのコストと時間を30％削減し、手続き全体の98％を所定期間内に完了させることを目標とすると述べた。

JCCHの久米会頭は「省市再編後（注3）、JCCHの会員企業（注4）の約8割の900社がホーチミン市に所在する。JCCHとしてもホーチミン市人民委員会との関係の深化やコミュニケーションを大切にすべく、Relationship2.0を築いていきたい」と述べた。また、要望事項の1つのガソリン車規制に関し、首都ハノイ市では2026年7月からガソリンバイクの通行制限が導入予定だが（2025年12月3日記事参照）、ホーチミン市人民委員会は、「現時点でガソリン車からEV（電気自動車）への転換計画はないが、2030年までにバス車両のEV化100％を目指し、段階的な計画を策定している」と話した。日本側からは、「ガソリン車からEVへの急速な転換は企業、市民への影響が大きく、公共交通機関の整備とともに段階的な導入検討を期待する」と述べた。

（注1）ラウンドテーブルについては1998年から原則、年1回開催されている（未開催の年あり）。JCCHが会員企業を対象にアンケートを実施して、事業環境や生活環境上の問題点を洗い出し、ホーチミン市人民委員会に改善要望書を提出。これを受け、同委員会の各担当部局の幹部とJCCHのメンバーが一堂に会して、討議するもの。

（注2）ホーチミン市発展のために戦略的に投資家を誘致するための特例制度を定めたもので、2025年12月11日に改正案が承認された。官民連携（PPP）方式の拡大や、都市鉄道建設などTOD（公共交通指向型開発）モデルの導入、自由貿易区（FTZ）の整備などを進める。

（注3）ベトナムは政治・行政の効率化や経済発展の促進を目的として、7月1日から、これまでの63省・市（6つの中央直轄市と57省）から、新たに34省・市（6つの中央直轄市と28省）に再編（2025年7月1日記事参照）。ホーチミン市は原油などの天然資源や港湾、観光地をもつバリア・ブンタウ省、工業団地が集積するビンズオン省と合併し、地域総生産（GRDP）がGDPの約24％を占め、省市では最大。

（注4）2025年12月19日現在、JCCHの会員数は1,073社で、海外に約100カ所ある在外日本商工会議所の中で上海、バンコクに次ぐ3番目の会員数。

（新田和葉）