米国、ニカラグアに2027年1月から10%の301条関税の発動を決定
(米国、ニカラグア)
ニューヨーク発
2025年12月12日
米国通商代表部(USTR)は12月10日、1974年通商法301条に基づくニカラグア産品への輸入制限措置を発表
した。ドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(CAFTA-DR)の原産地規則を満たさないニカラグア産品の輸入に対しては、2027年1月から10%、2028年1月から15%の追加関税が段階的に賦課される。
301条は、外国の不公正な政策や慣行が米国の商業に損害や制限を与えていると調査で判断された場合に、USTRが大統領の指示に従い、追加関税などの輸入制限措置を講じることを認めている。米国が2018年7月以降に中国製品に課した7.5~100%の追加関税(2025年9月18日記事参照)も同条に基づく(注)。
USTRは、2024年12月にニカラグアに関する301条調査を開始した(2024年12月11日記事参照)。USTRは2025年10月に調査結果をとりまとめ、同国のオルテガ・ムリージョ政権の人権、労働権、法の支配に関連する不合理な政策や慣行が同国で事業を行う米国企業に悪影響を与えているなどと結論付け、最大100%の追加関税を賦課するなどの対抗措置案を発表するとともに、措置の内容の最終化に向けたパブリックコメントを募集していた(2025年10月22日記事参照)。
今回、USTRが発表した官報案
によれば、米国はCAFTA-DRの原産地規則を満たさない全てのニカラグア産品の輸入に対し、301条に基づく追加関税を賦課する。追加関税率は2026年1月1日に0%、2027年1月1日に10%、2028年1月1日に15%に段階的に引き上げる。なお、301条関税は、ニカラグアに対する相互関税(18%)など既存の関税に上乗せされる。さらにUSTRは、ニカラグアの政策や慣行の改善に進展が見られない場合、これらの税率や時期を変更する可能性があるとしている。
米国国際貿易委員会(USITC)の輸入統計によると、2024年の米国の対ニカラグア輸入額は約46億ドルで、このうち71%にあたる33億ドルはCAFTA-DRを利用していた一方、29%にあたる13億ドルはCAFTA-DRを利用せず米国に輸入していた。
(注)このほか米国政府は、中国の半導体産業政策(2024年12月24日記事参照)、ブラジルの不公正貿易慣行(2025年7月17日記事参照)、中国の2020年の米中合意の履行状況(2025年10月27日記事参照)に関する301条調査を実施している。これらの調査結果は現時点で未発表。また、301条に基づく外国船舶への入港料金は2026年11月まで適用が停止されている(2025年11月11日記事参照)。
(葛西泰介)
(米国、ニカラグア)
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