米国、ニカラグアへの301条調査を完了、最大100%の追加関税を検討
(米国、ニカラグア)
ニューヨーク発
2025年10月22日
米国通商代表部(USTR)は10月20日、ニカラグアに対して2024年12月から実施していた1974年通商法第301条に基づく調査を完了したと発表した(2024年12月11日記事参照)。調査の結果、ニカラグアに対して追加関税などの輸入制限措置を講じることが妥当(actionable)と判断した。
301条は、外国の不公正な政策や慣行が米国の商業に損害や制限を与えていると調査を通じて判断された場合に、USTRが大統領の指示に従って追加関税などの輸入制限措置を講じることを認めている。米国が2018年7月以降に中国製品に課した7.5~100%の追加関税(2025年9月18日記事参照)、2025年10月に導入した外国船舶への入港料金(2025年10月14日記事参照)などの措置も同条に基づく(注1)。
USTRは同日公表した調査報告書で、ニカラグアのオルテガ・ムリージョ政権が労働権、人権および基本的自由、法の支配に関連する不合理な政策や慣行を実施しており、これが同国の労働者を搾取して不公正な競争条件を生み出していると指摘した。さらに、こうした状況が、同国で事業を行う米国企業にとって「ハイリスクな環境」を作り出していると結論付けた。
今回、USTRが公表した措置案は次のとおり。
- ニカラグア産品に対して、「ドミニカ共和国・中米・米国自由貿易協定(CAFTA-DR)」に基づく、関税減免を含めた優遇措置の全部または一部を、即時または段階的に停止する。
- ニカラグア産品の全部または一部に対して、12カ月以内に最大100%の追加関税を即時または段階的に賦課する。
USTRはこれらの措置案について、2025年10月20日から11月19日までウェブサイトでパブリックコメントを募集する。今後、パブリックコメントなどを踏まえて、2025年12月中に措置内容を最終決定し、2026年1月中に措置を発動する見込みだ(注2)。
なお、米国国際貿易委員会(USITC)の輸入統計によると、2024年の米国の対ニカラグア輸入額は約46億ドルで、同年の米国の輸入総額の0.6%を占めた。主な輸入品は、輸入額上位順に、点火用配線(7億ドル)、綿製Tシャツ(6億ドル)、金地金(6億ドル)、葉巻たばこ(4億ドル)、綿製セーター・プルオーバー(2億ドル)、コーヒー(2億ドル)などだ(添付資料表参照)。USTRが最終的に追加関税を発動した場合、これらの品目の米国での調達価格が上昇する可能性がある。
(注1)このほか米国政府は、中国製の半導体(2024年12月24日記事参照)や、ブラジル(2025年7月17日記事参照)に関する301条調査を実施している。これらの調査結果は現時点で未発表。
(注2)具体的な手続きは、同法302~309条で規定される。301条に基づく調査や発動の手続きの詳細は、2024年12月10日付地域・分析レポート参照。
(葛西泰介)
(米国、ニカラグア)
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